『仮面ライダーアギト』人間の可能性、G3
先日『仮面ライダーアギト』を全話観ました。
Amazonプライムビデオって便利ですね。
いやぁ、面白かったです。
前に観たのは放送当時、小学一年生の頃。内容については殆ど覚えていなくって、とはいえ「この画には見覚えがあるぞ!」というシーンも散見されたました。記憶を取り戻していく感覚、とはだいぶ違うけれど。
というわけで、アギトの感想を書いていこうと思います。
あらすじ
突如として人々を襲い始めた謎の存在、アンノウン。
それに対抗できる未知の戦士アギトに変身する能力を得た、記憶喪失の青年津上翔一。
警視庁未確認生命体対策班の氷川誠は、G3ユニットの装着員として彼らの謎を追う。
同じ頃、大学生葦原涼はギルスと呼ばれる存在に変身する力を得、それによって多くのものを失い始める……
アンノウンの目的は?
アギト、ギルスとは何者で、何故変身が可能になったのか?
津上翔一の失われた記憶。亡くなった葦原涼の父が残したメモの意味は?
ヒロイン、風谷真魚の父は何故命を落としたのか……?
全体を通して
全体的に満足度が高かったんですが、一番好きなのは、前半部(翔一君が最初に記憶を取り戻す辺りまで)でした。謎が謎を呼ぶ展開に視聴を止められない。
登場人物たちが、それぞれ自らの立場で謎を追求していくフェイズ。
情報の共有が行われないから、点と点が視聴者の中でしか繋がっていかない。全体像がなんとなく見えてくるようになっても、肝心の情報は明らかにならず……気になる!!
全てのカギを握り、3人のライダーに関連するのは『あかつき号事件』なるフェリーの遭難事故。果たしてあかつき号で何が起こったのか。なぜあかつき号に乗った人間たちは超能力者となる傾向を示し、アンノウンに狙われるのか……?
それらの情報は後半部で一気に明らかになっていく。
アギトとは何か。戦いはどこへ向かっていくのか……
アナザーアギトの登場から、物語の方向性は人間の在り方へと徐々に変化していく。
話の壮大さが明らかになりつつも、その主題は人間である、ということが示されて行くここら辺の話。推進力という点では前半ほどではないけれど、ライダーとアンノウンの戦いが激化していく中、キャラクターの内面をガンガン掘っていく感じが面白い。
そしてラスト5話。
全ての答えを得、各々が未来へと歩み始める回。
人間にとってアギトの力はどういう意味を示すのか。
ライダーたちの歩むべき未来は何か。
エピローグめいた穏やかな日常の中で、3人が自分たちなりの答えをハッキリと示す物語を象徴するエピソード。
殴られたショックでさそり座の人間が全滅の危機!
いや、分かる。愛すべき存在が必要以上の力を得て反抗してきたのだから、そりゃあショックも受ける。理不尽な展開ではない。でもちょっと……ちょっとだけ変な面白みがだな……!! あと、聖地が道路に近すぎる!!
ラスト5話、完全にエピローグなんだけど5話もあるんだよね……
もちろん、そこが良い所です。アギトの主題が人間であるのなら、人間としての彼らのその後をじっくりと描き未来を示す事が何より大事で、物語的な盛り上がりは薄くとも、その5話が無ければストーリーとしては欠けてしまっていたと思う。でも世界が葦原さんに厳しすぎる。
仮面ライダーG3
G3ですよG3。
アギトの3ライダーの中で誰が一番好きかって、G3=氷川誠なんです。
アギトを見直す前、G3=弱いってイメージがあったんですね。
当時小1君だった頃からそんな風に思っていた気がします。見た目はめちゃくちゃカッコいいけど、弱い。
実際、G3の強さはアギトやギルスと比べると一段劣る所にあるかな、と思います。ぼこぼこにやられるシーンの印象が強い。でも、弱くはないよね?と見直した今では思います。むしろ強い。
G3の強さって、純粋な人間としての強さなんですよね。道具を作り、機械技術を進歩させてきた人間の知恵の結晶。
そしてその知恵の結晶を活かし得る存在こそが、氷川誠という男。
氷川さん、めちゃくちゃ良い人なんですよ。真面目で、市民の安全を第一に考えて、努力を怠らない。
でもビックリするほど不器用。ノコギリは折るし草むしりは下手だし豆腐もロクにつかめない。そしてそれを指摘されるとムキになる。
その欠点の描写は全て、アギトである翔一君との対比になっているんですよね。アギトである翔一君は色んなことをなんとなく熟せる面があるけど、ただの人間である氷川さんは欠点だらけ。そんな氷川さんでも、アンノウンとの戦いにおいては一歩も引く事が無い。たとえ勝てるかどうか危うい格上相手でも、諦めずに食らいつく。
氷川さんがそうして立ち向かい続けた結果、アギトは黒い人をぶん殴ることが出来た。アギトVSアンノウンの戦いでは無く、人間VSアンノウンの戦いであると、その身を持って証明する事が出来た。
与えられた力や可能性が無くとも、人類は人類自身の手でアギトたちの領域に迫ることが出来る。それを象徴する存在がG3なんだよな、と思います。
G3-X開発時のストーリーも好きです。
氷川さんは当初G3-Xに内蔵されるアシストAIを使いこなせず、暴走してしまう。アギトである翔一君なら簡単に使いこなせるそれを、氷川さんは結局最後まで使いこなせるようにならず、G3-Xは結局AIをダウングレードする形で実装される結果となる。
この話。普通なら氷川さんが頑張ってアシストAIを使いこなせるようになる、とかの流れでいきそうじゃないですか。実際ちょっとそう思いながら観てたし。でも、そうはならないんですよね。
完璧を追い求め、使う人間の事を考えられなかった開発者小沢さんが、ただの人間のレベルまで機能を落とす事を受け入れる。結果としてG3-Xは『天才が生み出した特殊例』からほんの少し脱却し、『ただの人間の力』としての側面を強く示せるようになる。同時に、小沢さんの誰にも理解されない能力を示す事で、アギトの力を持たずともそれに匹敵する人類は現れるという事を示してもいる、と思う。
いずれ正規のAIを搭載したG3-Xを使いこなせる人間が現れるかもしれない。AIの機能を改善し、能力はそのままに負担を軽減することも出来るかもしれない。可能性を想起させつつ、それでも今の人類の限界はここなのだ、と線を引かれたG3-Xは、けれども最後までアギトとアンノウンの戦いに割って入る。既に人類は、庇護されるべき対象ではないと明らかにする。
この開発エピソードがあるから、『ただの人間』という氷川さんや小沢さんの言葉が強く強く刺さるようになる。
物語の最後には、G5システムという新たなシステムの登場が示唆されている。人類の進歩は止まらない(ジオウでは止まってた)。
……G4システムには、そういった人類の可能性としての側面は無い、と思う。使い熟す人間という前提が無く、そのアシストも超能力に頼る。そんなものが人類の可能性であるハズもなく。ただ見た目がめちゃくちゃカッコいい。
終わりに
本当は各ライダーや北条透についても書こうと思ったんですが、長くなるので割愛することにしました。
書きたい気持ちもありましたけどね!
特に北条透について。あのキャラクターが悪役でなく思い込みの激しいヤツとして最後まで描きとおされたその素晴らしさについて。
でも、今回はG3についてのみ書きました。
それは、アギトという物語を一番強く象徴しているのがG3である、と感じたから。
いやほんと、G3カッコよかったなー。