【ウルトラマンアーク】最終回まで感想/想像が生み出すヒーロー
ウルトラマンアーク、最後まで面白かったなぁ~!!
最終回放送から一週間ほど経ちましたが、ここで感想をまとめていきます。
1~3話時点での感想は↓
イ゛ヨ゛ワ゛!!!!
なにを差し置いてもまず語りたいのがこれ。
ウルトラマンアークがピンチの折に漏らす声、「イヨワ」!
これがすっごく好きでした。
毎週毎週、アークが「イヨワ」するたびに「今週のイヨワだ!」と嬉しくなるくらいに……!
単に音の響きとして面白い、愉快というのもあるんですが。
私はウルトラマンアークが(素のスペックでは)ちょっと弱くて怪獣に負けてる部分が特に好きなんですよね。立ちはだかる怪獣はみんな強くて、だからこそ想像力を発揮して打ち勝たねばならない。そんなアークのピンチを演出するのが「イヨワ」なわけです。
アークでの「イヨワ」は苦し気な呻き声でしかないんですが、一方でそれは辛い状況でもなんとか頑張ろうとしているから出てくる声なわけです。諦めていたら「イヨワ」さえ出てこない。
苦しみながらも、それでも頑張るウルトラマン。
本来であればそれは、カラータイマーの点滅によって示される要素です。
実際にアークも苦しい時にはタイマーが点滅しますが、しかし今作ではなんというか、アーマー使用可能状態への移行という側面も大きかった。
ですが「イ゛ヨ゛ワ゛ァ……!!」はそれを十二分に補ってくれた。アークの置かれた苦境をこれでもかと示し、続く想像力による逆転を鮮やかに彩ってくれる。そんな「イ゛ヨ゛ワ゛ァ……!!」が大好きでした!!
想像力を解き放て
「イヨワ」とも通ずる話ですが、アークは全体を通して特撮シーンが本当に面白かったです。毎週様々な怪獣が登場する中、SKIPはどう動きアークはどう戦うのか。前作『ウルトラマンブレーザー』のスパイラルバレードもそうですが、「どのように決着をつけるのか?」に興味を持って観ていくことが出来る。
去年のブレーザーさんの様子を観ていて、「ウルトラマンってもっとめちゃくちゃでもいいんだろうなぁ」と思っていたんですよね。単に光線を放つ超能力戦士というわけじゃなくて、見る者の夢そのもののようなヒーローなのが「ウルトラマン」なのではないか。もちろん、今までのウルトラマンたちだってそうではありましたが、今はもっとやれるんじゃないかと。
ウルトラマンアークは、そんな思いに応えてくれるヒーローでした。
そしてアークは、ただめちゃくちゃなだけでもない。
アークの根柢にあるのは、主人公・ユウマの想像力であり、私たち人間が持ちうる力である。超越した力を持つルティオンと、その力を自由に発揮させられるユウマ。二人が揃ってこそのウルトラマンである、というのが私好みでした。
最終回、ルティオンと共に旅立ったユウマが、恒星ソニアの問題にどう力を貸したのか……それは語られませんでした。もちろん「想像力による現実の改編」という要素の示唆はありつつも、実際にどうしたのかは描かれない。
それは毎週想像力の具現を見せてくれた「ウルトラマンアーク」が、私たち人間に想像を託す瞬間であったかと思います。
観る者の空想を刺激し、想像というものに前向きな希望を与えてくれる。
「ウルトラマンアーク」はそんなヒーローであり作品であったな、と感じました。
ルティオンという個人
ルティオンの存在も大好きでした。
常にユウマを見守り、共に戦ってくれた宇宙人。
ユウマにとっては彼は「ウルトラマンアーク」そのものだったわけですが、実際のところはそうでもない。地球を救う為に単身やってきて、モノゲロスを止めることには成功すれど、ユウマの両親は助けられなかった存在。
彼のキャラクター性がハッキリと描かれたのは、本編第14・15話。
初めて個人としてユウマと語り合ったルティオンの中には、ユウマへの愛と過去への深い後悔が刻まれていました。そしてユウマを失うことへの恐怖さえ吐露するルティオン。それまでユウマの目線では超越的な存在に見えていたルティオンが、その実、悩める一個人でもあるのだということを示してくれましたね。私はここでルティオンが一気に好きになりました。
ルティオンは、彼単独では「為すべきことをやりきれず、愛する故に悩む」当たり前の生命体でしかない。だけどユウマが彼を「ウルトラマンアーク」であると認識し、想像力を与えて共に戦ってくれているからこそ、ルティオンはウルトラなヒーローになれた。この関係性にグッと来るわけです。
だからこそ……24話、ユウマを止めようと叫ぶSKIPの面々を前に、変身する前に静かに振り返るルティオンの姿も刺さりましたね。あの時のルティオンが胸に抱いていた気持ちはなんだったか。ユウマを大事に想う心は、ルティオンもSKIPのみんなも変わらない。だけどルティオンはユウマと共にアークとして走って行ってしまう。あの時のルティオンは、ユウマとSKIPの両方の気持ちを味わいながらも、それでもと決意を固めたように思います。
そして最終回。
抱き合うユウマとシュウさん、そしてSKIPの面々の全てを包み込むように現れるウルトラマンアークの姿は、24話で抱いたであろうルティオンの気持ちが改めて救われたのだろうと想像させてくれました。よかったねぇ、ルティオン……!!
石堂シュウという視点
そして「ウルトラマンアーク」の話をする上で絶対に欠かせないのが、本作のキーパーソンである石堂シュウさん!
シュウさんって、本作ではユウマの相棒のようでありながらヒロインでもあり、また視聴者の視点ともなるようなキャラクターだったなと思います。
第一話、宇宙科学局からの出向という形でSKIPに合流した石堂さん。
序盤においての彼は、SKIPという組織やそのメンバーを紹介する為の視点の役割を果たしていたと思います。そしてその過程で、自身とは違う輝きや懸命さを放つ同世代の青年・ユウマに関心を持ち、影響を受け始める。
一方で、物語前半では「防衛隊とSKIPの情報格差」からストーリーの縦軸への導入役を果たしていく。宇宙人案件やモノホーン、オニキスと呼称された何か。そうした情報を地球人レベルの視点から視聴者に渡しつつ、ルティオンたちが抱える本当の問題へと物語を誘導していく。
「ウルトラマンアーク」は、こうした情報の出し方の塩梅がとても上手いなと感じました。直接的に縦軸の話をしている回はごく僅かながら、それらをすんなりと呑み込ませるような下準備はきちんと熟している。そうしてそれを主導するのが石堂さん、という印象でした。
情報を出し終えた後半では、物語の根柢はゼ・ズー関連の謎よりもユウマという個人の苦しみに寄っていたと思います。誰にも明かせない情報を抱え、苦しみながらも走り続けるユウマ。ただユウマはその苦しみ自体を自ら明かす事が出来ないし、ヒーロー番組で主人公が苦しむのは(ある意味では)当然のことでもある。その当然を特別で、重大なこととして視聴者に認識させてくれたのが……やはり石堂さん!!
ユウマが苦しんでいるから……というよりも、ユウマが苦しむことが結果として石堂さんを悲しませることになるんじゃないか、と予感させてくれていたのが、後半における石堂さんの大事な役割だったように思います。そしてユウマを大切に想う石堂さんという友人がいるからこそ、最終回でのユウマの選択もまた光る。
情報によって視聴者を導く前半と、情緒によって視聴者を導く後半。
石堂シュウというキャラクターがいたからこそ、「ウルトラマンアーク」の物語は輝いたのだと思います。
そして単純に……
エリートスーツメガネ青年がタイプの違う別の青年と出会って感化される流れ、やっぱ楽しいですよ!!!
序盤感想の時点で私は石堂さんを「あざといキャラ」だと評していますが、全体を通してもやっぱりど真ん中直球で貫いていったなぁという感想は変わりません。石堂さん、強い。
全体を通して
そんなわけで、私は「ウルトラマンアーク」かなり好きです!
単独回が多かった分、「この回はちょっと楽しめなかった」みたいな部分もあり、全体の話数から縦軸・前後編回を抜くと、そうした回の印象もちょっと強めにはなってしまうんですが。バラエティ豊かな作品作りをしていくと、その分だけ刺さらない回が出てくるのも当然といえば当然です。
ただちょっと気になるのは、総集編の多さ。
例年通りの数と言えばそうですし、今までは制作スケジュール的にも仕方ないのかな~と思っていたんですが……「ウルトラマンアーク」は(海外展開を見据えた前年ブレーザーからの流れもあり)放送開始時には全話撮影が終わっているということでした。ならもうちょっとなんとかなるのでは?という欲目が出てきてしまう。実際にはもっといろいろな事情が絡んでいるのでしょうし、本当にいちファンとしての欲なんですが。全30話くらいになってほしい。
ヘルナラク編が四話にも渡ったのもあり、後半は物語のバリエーションがちょっと乏しくなったように感じてしまいました。個々の回がどうこうというのでなく、前半の好きな部分が薄れてしまったかなぁという感覚ですね。
それでも縦軸回は全てわくわくするような面白さでしたし、番組全体への満足度は本当に高いです。今年も楽しませていただきました。ありがとう、ウルトラマンアーク!!
2月にはユウマとシュウさんの出演するTHELIVEの公演があり、また劇場版アークの公開も迫っています。最終回を終えたアークですが、まだまだ楽しみは残っている。次のウルトラマンも楽しみですが、まずはアークを最後の最後まで堪能していきたいと思います!