ロールプレイ・ライフ
大昔の創作物には、やたらと「限りある命を美しく思う」という価値観が描かれている。不老技術の進歩していなかった頃だ。
命には限りがあるが、だからこそ人は懸命に生き、輝く。
そして子や生きた証を残すことで、その命は永遠と等しくなる……など。
今や、その価値観を理解出来る人間は殆どいない。
人間は死なないからだ。魂はデータ化され、肉体は復元可能なただの乗り物と化した。不慮の事故に遭ったとしても、保存された最新のデータを基に復元される。
だからこそ、だろう。
RINNEと呼ばれる記憶の改造装置が、巷に流行しだしたのは。
社会的地位。性別。家族構成。記憶。人間の意志を形作るあらゆるものを自由に書き換えられるその装置は、人間社会の在り方を変容させた。
人間は、各々に役割を持つようになった。
演劇の舞台に立つように。ゲームのキャラを操るように。
だが俺のデータは違う。改竄させられたのだ。
脱獄した死刑囚、という肩書に。
【続く】
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