【キー19】2023ベスト
2023年に出会ったあれこれから、特に印象深かったものや輝いているものなど、さまざまなベストを集めました。
※各ジャンルごとに3つずつ挙げましたが、いずれも魅力を順位づけしたものではありません。原則、出会った順に並んでいます。
映画
①『コンパーメント No.6』 / 監督:ユホ・クオスマネン
モスクワからムルマンスクへ向かう寝台列車での旅を描くロードムービー。ぶっきらぼうな会話。美しい極北の風景。寒色の中にある偶の暖色のぬくもり。見惚れる画面構成の連続。
作られすぎていない美しい映像美を求めている方におすすめしたい冬の一本。
②『リトル・マーメイド』 / 監督:ロブ・マーシャル
誰もが知るリトルマーメイドの実写版。あらゆる的外れな批判をかきけすようなハリー・ベイリーの圧巻の歌声。さすがディズニー映画と唸らせるCG映像美。ブラックカルチャーに敬意をはらっての採用かスカットルのラップ調の新曲。
クラシック映画を現代に実写としてリメイクする意義を世に示した傑作。
③『怪物』 / 監督:是枝祐和
2023年の邦画ナンバーワンは間違いなくこれ。
坂本裕二の脚本や、まさに「怪演」と呼ぶにふさわしい役者陣の演技はもちろん、坂本龍一の劇伴が素晴らしい。特に終盤のクライマックスからエンドロールへ続く場面は、合う音楽は『Aqua』以外にあり得ないと思わせる構成。
個人的にはロケ地が故郷・長野県の諏訪市であったことも印象深い。
経験
①財布拾得
年明けすぐの1月6日、歯医者帰りに道端で財布を拾った。すぐに交番へ持っていき、「拾得物件預り書」の公布を受けた。財布を拾うのも交番に届けるのも人生で初めてだったからやけに興奮した。
警察官が「実際にお礼を受け取ると答える方はほとんどいないですね」という話をしてきたので、僕もお礼は結構ですと格好つけた回答をしてしまった。
②全身麻酔
8月に人生で初めての全身麻酔の手術とそれに伴う入院を経験した。
全身麻酔は人生で一回は経験したいものの一つだったから楽しみでしかなかった。経験してみると、噂通り5秒もしないで意識が飛び、気がつくと全て終わって病室に戻されている状況だった。
そういう訳で手術自体は全く痛くなかったが、目が覚めた後に尿道カテーテルを抜かれる瞬間は本当にきもちわるい感覚がして最悪だった。
③海ほたる
どういう訳だったか僕が急に「海の日の出が見たい!」と思い立ち、夜20時ころに車を借りて彼女と海ほたるへ出掛けてそこで車中泊をした。
初めての車中泊はとても寝られたものではなく、デッキにすこしいるだけで潮風が顔をベタつかせてくるのは最悪だった。
こういうことをやるのは免許取り立ての大学生が相場だが、なんでもかんでも年相応を気にしてお行儀良くしていてはつまらない。やってよかった。
本
①『彗星交叉点』 / 穂村弘(筑摩書房)
僕に短歌にハマるきっかけを与えてくれた穂村さんだが、短歌だけでなく彼の書く文章、特にエッセイはすべて面白くて大好きだ。
今年の3月に発売された本作は、大学生活のおわりの数日から入社して最初の数日間にかけて読んだ思い出の一冊。おもしろいから読もうと思えば一時間で読み終わってしまうのだが、勿体無いからわざと数日かけて読み分けた。
②『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』 / 小野寺拓也、田野大輔
(岩波書店)
発売直後から話題になっていたので、入院期間に読もうと買った一冊。インターネットの人たちが大好きな歴史修正主義にはうんざりしていたので、こういう本に出会えると安心する。この本を読みながら、もっと大学で勉強しておけばよかった、みたいなことを卒業して4ヶ月目に思って、それを思う自分にウンザリもした。
③『新敬語「マジヤバイっす」 社会言語学の視点から』 / 中村桃子
(白澤社)
おばあちゃんおじいちゃんの家に帰省するたびに、最近は若い人たちの間で何が流行っているの?ということを訊かれる。この前も、オンライン会議のやり方とかBe Realとかの話をした。(僕はBe Realをやっていないのに。)
その一環で「若者言葉」にテーマが移ったがあんまり良い話が思い浮かばなかったので購入。こういうことを研究している人たちが日本にいること自体が有難い。マジであざす。
プロダクト
①Calvi Card Holder / Hermes
シンプルなデザインに惹かれて名刺入れとして購入。名刺入れは薄ければ薄いほど格好いいと思っている。他の名刺入れを使ったことはないので比較はできないが使い勝手もよく重宝している。
②CAP TOE OXFORD / RENDO
前から気になっていた浅草の靴工房で購入。すこしでも遊び心を採り入れようと、つま先に装飾を付したタイプを選んだ。
本当はビスポークでつくりたかったが、入社直前で時間とお金が無く当時は断念。二足目こそ。
③Play Station 5/ SONY
発売から3年近く経ってようやく購入。
これまで前身モデルのPS4を約10年間使い続けてきたが、近年はゲームのロードも遅くなりモーター音もかなり大きくなっていた。最近は突然処理落ちすることも増えたため資格試験終わりを機に買替えを遂に実施。
結果、超快適。Fortniteのロードって本来こんなに早いものだったんだと衝撃を受けた。
ライブ・お芝居・舞台
①『The Sofaking... Damn!!! Tour』 / Punpee
新年早々に景気良くいきましょうということでPunpeeのライブに参加。
もともとは2020年に開催予定だったがコロナで延期になってしまい、開催を大変待ち遠しく思っていた。
2000席以上の収容数を誇る中野サンプラザでの開催だったが奇跡的に最前列席が当たり、至近距離で生歌を聴ける最高のイベントとなった。特に田島貴男とPSG全員揃っての「I wish / 愛してます」は圧巻だった。
②『綿子はもつれる 』 / 劇団た組
落語もミュージカルもオーケストラも観たことはあったが、歌もダンスも一切登場しない舞台を観る機会は初めてみた。田村健太郎の演技が本当に中学生のようで、緊張感に満ちたストーリーの中で一際目立っていて魅力的だった。
③『ハリー・ポッターと呪いの子』 / 原作:J.K.ローリング
向井理がハリー役を降りる直前に駆け込みで鑑賞。
同舞台はロンドンで観たことがあったが、当然全てが英語であったため細かなやりとりまでは理解できておらず、復習の意味もあって観に行った。舞台装置による魔法の演出はキャッチーで視覚的に面白いし、駅から劇場までの世界観造りも凝っていてるので、全身で楽しめる時間を過ごすことができた。
音楽
①『お隣さんより凡人REMIX』 / Punpee
9月23日に開催されたThe HopeにてPunpeeが披露した、日本語ラップクラシックへのオマージュを散りばめたRemix。権利関係的に難しいだろうが、それでも音源化を切に願う。
こういうことをThe Hopeのステージで言ってくれるP氏。
ヘッズは現在の日本語ラップシーンをP氏が牽引してくれていることに感謝しなくてはならない。
②『花小金井』 / taste a back
僕の好きな日本語ラップのジャンルに「ポエトリーリーディング」というのがあって、そこからの一曲。
売れる日本語ラップに共通する固い韻や流れるようなフロー、オートチューンも無し。小節もはみ出てガタガタなんだけど、唾を飛ばしてRECしている様子がヘッドフォン越しに浮かんできてアツい。
このラインが僕は好き。
③『Trade Mark』 / KREVA
2023年のKREVAといえば、OZROSAURUSとの『Players’ Player』 の衝撃はすさまじいものであったが、11月23日の「Shibuya StreetDance Week 2023」に提供されたこの楽曲もKREVAらしさ全開の一曲であった。
THE D SoraKiが出演するこのMVもクオリティが高く、渋谷駅前の再開発が破壊し追いやり続けている「渋谷ism」とも呼ぶべきアングラなDNAがよく表現されている。
イベント当日のライブ映像ではKREVAの神がかったライブパフォーマンスが観られるので是非チェックしてほしい。
その他
①雑学
入院中、相部屋にいたのだけれど各部屋はすべてカーテンで仕切られていて天井には隙間があいていた。音漏れも激しくなってしまうのにどうして隙間があるのだろうと思って調べたら、消防法対策だった。
つまり、天井まで仕切ってしまうと個室とみなされ、スプリンクラーや非常用スピーカーの設置がそれぞれに求められてしまうため、それを回避する工夫のようだ。思いがけずおもしろい雑学を得られた。
②展示
JR東海のキャンペーン「そうだ京都、行こう。」の一環で、大量の空也上人が集結する展示がJR東京駅で行われていた。
「大量発生」はおもしろい、を実感できた。
③旅行・キャンプ・登山
国外だとエジプト・トルコ、ペルー・ボリビア。国内だと弘前・青森市(青森県)、清津峡(新潟県)、瑞牆山(山梨県)、みなかみ温泉(群馬県)、四万温泉(群馬県)、軽井沢(長野県)、あきる野市(東京都)などを訪れた。
「経験」にいれるのはズルいと思い別立てにしたが、いずれも素晴らしい時間を過ごすことができた。来年もいろいろなところに行きたいと思う。
④お笑い芸人
僕は普段からYouTubeでいろいろなお笑い芸人のライブ映像などを観るが、今年新たにハマったお笑い芸人は、「街裏ぴんく」である。
この人の漫談をきくと、知らない町を訪れたらさっきまで人がいたのに気づいたら自分だけしかいない。みたいな感覚を毎回味合わされる。
僕の一番のお気に入り演目は「ホイップクリーム」。
⑤建物
家族で夏に行った「光の館」(新潟県)は衝撃的だった。
なんと一室の天井が空くのだ。その和室に僕たちは寝転びながら、正方形に切りとられた空を眺めることができる。
今回は見学だけで宿泊はしなかったが、一泊3万円程度で宿泊も可能なようなので機会があれば再訪したい。
以上です。2023年もありがとうございました。
しかしまぁ大事なのは常に今後である。