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キンキンのルンペン大将

伝説の映画というものがある。

自分の場合は石井輝男監督、愛川欽也主演作品『キンキンのルンペン大将』がそれにあたる。

自分は石井輝男監督のもっのすごいファンである。

しかしこの『キンキンのルンペン大将』に関しては、石井監督の特集上映でもついぞ上映することがなく、月日は過ぎてゆき、幻の映画と化していた。

だが事前に得ていた情報もあった。なぜか弟がこの作品を見たことがあり、

「どんな感じだった?」

と聞くと、

「うん。キンキンがひたすら残飯あさってたよ」

と答えたので、より一層興味を持った。さらに石井監督のインタビュー集『石井輝男 映画魂』には、このように記されていたと記憶している。

「最初、キンキンが企画持ってきてね。でもだめだよ。キンキン。これじゃ映画にならないよって言ったの」

と。

果たしてこの作品は世紀の傑作なのか?それともとんでもない駄作なのか?俺の頭の中には、この作品のスチール写真を一枚持っているということもあり、いろいろな考えが浮かんでは、また消えた。

そして某日、突然に東映チャンネルにて、思いつきなのか英断なのか知らないが、『キンキンのルンペン大将』はついに放送された。

当然、録画したこの作品を見た。そして俺は笑いに笑いに笑った。本当に久しぶりに映画を見て、死ぬんじゃないかっていうくらい笑った。

あまりに笑い過ぎて、ストーリーとかあんま覚えていないんだけど、やっぱこれ、書かずにいられるかっていうくらい面白い作品なので、とりあえずどんな作品なのか書く。

とにかくオープニングのタイトルバックからして、石井監督の映像魔術が炸裂し、わずか三分間ぐらいのなかでキンキンが、いかにダメ人間であるのかがテンポよく綴られてゆく。

料理店でコロッケを揚げれば、たわしを揚げ、鉄道の線路工夫になれば汽車に轢かれそうになり、女湯で三助をすれば手から石鹸がすべり、その石鹸を追って女の股の下に手を突っ込み、女湯をパニックに陥れ、床屋にては客の髭をスパッと剃ってしまうというドジぶり。

そんなキンキンは女房に愛想をつかされ、集団就職で東京に向かう女学生と一諸に山形から涙ながらに、汽車に乗った。

上野駅に到着し食堂で飯を食ったキンキンであるが、ズボン、上着、鞄のなか、どこを探しても財布がない。慌てまくるキンキン。

「おっさん。そんなことして、常習犯じゃねえの?」

と従業員。

「い、いや本当にさっきまではあったんだ。いや。すられたんだ。東京はやっぱおっかねえとごろだな」

「そんなこと言って通用すると思ってるのかよ」

「いや。ここはわしに任せとけ」

そう言って現れたのが、店主の南利明。

「なんだ。おみゃー。金もっとらんのか?」

展開される名古屋弁と山形弁の応酬。もうこのへんで爆笑していた。

「おっ。おまえラクダのパンツなんかもっとるじゃねーの。わしも若い頃、これよく履いたんだぎゃー。暖かくてよ。タマタマにもよくてよ。わしも鬼じゃねーからなー。まあ。今回は許してやるわ。温情でなー」

なんかそんな感じでキンキンは許してもらった。

夜の上野公園。桜咲くその茂みのなかでキンキンの涙ながらの話に耳を傾けているのは、誰あろう田中邦衛であった。

で、この邦衛がまた最高。ピースマークがプリントされているTシャツの上に、オーバーオールを履き、長めのコートを羽織っている。

その出で立ちから最初はラブ&ピースの人かと思っていたら、とんでもないくせ者であるということが分る。

キンキンが田舎で起こったこと、そして東京に出てきてからのことを涙ながらに話し、それを聞いてはいる。

「あんた役立たず役立たず言うけど、どれくらいなんや?」

そう言って邦衛は指を四本突き出す。それを一本一本折ってゆくキンキン。最後に残ったのは指一本。

「えっ!一本!なんやあんた豪傑やないかーっ!毎晩、毎晩やってるなんてすごいわーっ!こりゃかなわんわーっ!」

なんか知らないが、話を夜の営みに誘導していく邦衛。そしてキンキンに上野の名門料理店、東陽軒からあさってきた残飯を喰え喰えと勧め、やはり残飯からあさってきた酒をガンガンに飲ませ、いいこんころもちにさせたところで、その皮のベルトを外し、時計も外し、キンキンの荷物一式をガメて、豚づらかました。

酔いから醒めてきたキンキンは、自分のケツの穴に違和感を覚えた。

そこには金髪のカツラを被り、ピンクのシャツにネックレスをして、化粧を施している石井組常連の砂塚秀夫が、一生懸命キンキンの体に自らを密着させ腰をグラインドさせていた。

「ギャーッ!」

「あらなによ。ギャーッじゃないのよ。アタイはあの男からアンタを買ったのよ。逃げられちゃこまるのよーん」

邦衛はキンキンの金品を奪った上に、キンキンをオカマの砂塚秀夫に売り飛ばすという人身売買をしていたのだ。。

とにかくたまらないと言った感じで逃げるキンキン。追う砂塚秀夫。そのうちふたりは青姦をしているカップルのところに乱入し、騒ぎはでかくなり、砂塚秀夫は愛想つかして、夜の闇のなかに消えていった。

という序盤なのであるが、ここまででもう腹ちぎれるんじゃないかと思うくらい笑った。

邦衛はキンキンの金品を暗がりのなかで、これまた誰あろう傷痍軍人みたいな格好した伴淳三郎に、

「会長。これあんじょうさばいてや」

と言って渡したあと、公衆便所に入って行った。そこへ邦衛から差し出された東陽軒の残飯で腹を下したキンキンが、これまた便所に駆け込んでくる。

ふたりは隣り合った爆弾を投下された、もしくは台風が過ぎ去ったあとのようにめっちゃ汚れている大便所でクソを垂れている。

だがキンキンはケツを拭く紙を持っていない。

壁一枚隔ててクソ垂れているふたりを、俯瞰のアングルで捉えるカメラ。

「あのー。すいません。隣の方。紙持ってませんかねー」

「紙?そんなもんタバコの箱でなんとかなるやろ」

そういって邦衛はなぜか、自分が持っているタバコの箱をちぎって、その切れ端を鼻の穴のなかに詰めている。

その声色、その関西弁にピンと来たキンキン。

「おめー!まさかーっ!」

ヤバいと思った邦衛はケツもろくに拭かず、オーバーオールもちゃんと着ないまま便所から飛び出してきた。同じくそれを追うキンキン。

しかし邦衛はそのまま、夜の深い闇のなかへと遁走して行った。

朝。

伴淳は他のルンペン仲間から便所で寝ているヤツがいて困っていると言われ、見に行くとそこにはキンキンが寝ていた。

伴淳は上野公園界隈のルンペンからは〝会長〟と呼ばれ、一目置かれているルンペンだった。

この出会い以降、伴淳はキンキンにルンペン道を教え、キンキンは伴淳ことを先輩と呼び慕ってゆくこととなったのである。

その手始めが下を向いて歩け、ということで落ちている金目のものは残さず拾うように指導する。

落ちている札を見つけたふたりだったが、サツが現れると伴淳はバッくれた。その巡査役がThis is Geinoukai湯原昌幸。

この作品。こういった端役に結構いい人が登場してくるのが効いている。オープニングの線路工夫の現場監督役には、小林亜星が出演していた。

風で舞い上がった札を、なおも追っていくキンキン。

その札はある女の靴底に張り付き、その女を追って行くキンキン。その女は上野公園のベンチに座り、キンキンもその隣に座る。

キンキンがしゃべりかけてみると、その娘も山形出身ということが分り、話が弾むふたり。

だがその娘、坂口良子は集団就職で東京に出てきたものの、務めていた会社は倒産し行き場所をなくしていた。

こっそり坂口良子の靴底から札をパクったキンキンは、

「まあ。ジュースでも飲もうか?おじさんおごってやるから」

と言って、そのパクった札にて売店でジュースを買おうとしたが、よく見るとそれはサラ金の広告用紙で、東映作品によく出てくる婆さんに、

「なんだよ!こりゃ!ジュース買いたいならほんもんの札持ってくるんだよ!てめえみてえな田舎もんに騙されるほど、こっちは落ちぶれちゃいないんだよ!」

と、どやしつけられた。

やっぱり石井監督作品。

だれないと言うか、テンポが良い。そのままキンキンと坂口良子は職安に向かった。そこで待っていたのは、職安職員の和田アキ子。

せんだみつおはアッコを前にして、この仕事は俺には向いてないとか、プライドがどうのとか四の五の言っていたので、その仕事俺がやると、キンキンが横から入ってきた。

その求人票の争奪戦になるふたり、もめるふたり、乱闘になるふたり。最後はそうくるんだろなとは思ったが、アッコが、

「やめろよっ!」

と言って、ふたりの頭をはたいて、その場は収まった。

だが第二ラウンドが待っていた。

アッコ、キンキン、せんだみつおの三人は求人票の会社である靴問屋に行った。そこの社長こそ誰あろう殿山泰司であった。殿山のおやっさんの前で、自らを売り込むキンキンとせんだ。

しかしキンキンはとりあえず、住み込みで雨風しのげる場所があればいいと、自らの給料を恐ろしいほどダンピングしてゆく。

殿山のおやっさんにしてみれば、払う給料は安ければ安いほどいいんだし、これにはせんだも着いていけなくなり、

「おめえ!頭おかしいんじゃねえの!そんな給料じゃ生きていけねえわっ!」

と吐き捨て、その場を去った。

もう従業員のつもりになったキンキンは、アッコにサイズ小さいっていうのに、無理矢理そのでかい足に靴をねじ込み、とうとうその靴を破壊してしまい、安い給料からさらに靴代を天引きされることとあいなった。

キンキンは、その殿山のおやっさんの会社の寮なのか豚小屋なのか分らないようなところに坂口良子を連れてきて、共同生活を送るようになり、坂口良子はキンキンが毎日のようにビフテキのような御馳走を持って帰ってくるので、恐縮していたが、それは伴淳の指導によって、東陽軒のゴミ捨て場から集めてきた残飯だった。

「おじさん。わたし、こんな御馳走毎日食べさせてもらって、悪いわー」

「気にしないで食べなさい。遠慮しなくていいんだから。おじさん、金ならいくらで持っているんだから」

そう言ってキンキンは、何も知らない坂口良子に残飯を食べさせる。

ちなみにキンキンが一人でおどおどしながら、東陽軒の残飯をあさっていた時、そこの従業員である鰐淵晴子が突然現れ、

「あなた。ルンペンの道に入って間もないでしょ?見ていれば分るのよ。でもこれあげるから、毎日来てもいいのよ」

と言って袋に入った、残った料理だというものをキンキンに手渡す。さらに濃厚なキスをキンキンの頬にする鰐淵晴子。

膝から崩れ落ちるキンキン。そこに伴淳が現れ、

「あの女には気をつけろ。亭主五人も取っ替え引っ替えしてるんだから。ルンペンの頭の弱いのと、あっちのほうが強いの知っていて狙っているんだぞ」

と忠告する。

さらに付け加えれば、この作品のテーマソング「したを向いて歩こう」は名曲で、さらに挿入歌である「ルンペン・ブルース」は必聴、特にソウルとかファンクとか好きな人間は必聴の曲で、妖しくクラビネットの音色が蠢くなか、キンキンがルンペンの生態を歌い上げるもので、YouTubeにもアップされているのでぜひ聴いてみてほしい。

で、このキンキンと坂口良子との関係が、石井監督作品としては珍しく、ペーソスを描き出している。

しかしそこは邦画界の裏天皇•石井輝男。ペーソスがきたかと思うと、狂気が展開され、狂気できたかと思うとペーソスを描き出すという波状攻撃を仕掛けてくる。

すでに異常性愛路線の時代は過ぎていたが、それでも随所に石井節が炸裂している。

例えばキンキンが内心、ゾーッとするというか、ヒヤッとするカットではいきなりキンキンの顔に真っ青なライトが当たり、安心するとまたもとに戻るという、それどう考えてもやり過ぎでしょっていう演出を平気で行っている。

また坂口良子がタコ部屋みたいなところに、携帯用コンロを持ってきてお湯を沸かし、

「それ便利だなあ」

なんていうちょっとホロリとさせるシーンがあるのだが、そこから坂口良子とキンキンのケンカが始まり、キンキンは机の上のやかんに思いっきり腰掛けてしまい、ケツをヤケドするのだが、次に坂口良子が悲鳴を上げると、部屋は炎に包まれ、ふたりとも完全にパニックってしまうという、かなりなことが次々に起こるので見ていて目が離せない。次に何が起こるのか予測できない。

キンキンは最初、坂口良子のことを娘のように思っていたが、やはり共同生活をしているうちに下心も芽生えてきた。

一方、坂口良子のほうもいつまでもこんな生活をしていてはいけないと、別れ話を切り出した。坂口良子には隅田川の船着き場で出会った青年、星正人(当時、東映が売り出そうとしていた俳優だが真田広之の偽者みたいで、ぜんぜんだめだった)がいて、彼はボーイフレンドのような存在であり、仕事口も世話してくれるということだったのだ。

だがそれにキンキンは猛反対。

「こんなボロ靴屋、いつだってやめてやるんだべ!」

「ボロ靴屋で悪かったな」

そういって現れたのが殿山のおやっさん。

「ぼや騒動を起こしたんで見に来れば、なんだ自分の娘みたいな女連れ込みやがって!おまえなんか首だ!」

「待ってください!おじさんはなにも悪くないんです!全部わたしのせいなんです!おじさんは許してあげて下さい!」

殿山のおやっさんの前で土下座して、号泣する坂口良子とキンキンの姿になぜか爆笑してしまった。

本当はホロリとくるいいシーンだと思うのだが、見ているうちにもうなにがなんだか、悲しいんだか、狂っているんだか分らなくなっている自分がいた。

それが証拠にキンキンは、坂口良子のおかげで首にならずに済んだのだが、在庫置き場で梯子に乗り、殿山のおやっさんの指示で言われた品番の箱を取っているという作業中、高さにビビったキンキンはズボンが脱げ、パンツの間から滝のようなションベンを漏らし、そのションベンが殿山のおやっさんのはげ頭に降り注ぎ、梯子は倒れ、在庫の山は雪崩を打って崩落するという夢のようなシーンを見た時に、俺は座っていたソファーを叩きまくって爆笑し、石井ワールドの尋常じゃなさを再確認したのだった。

結局、殿山のおやっさんのところも首になったキンキン。

上野公園にて坂口良子と分かれるというその朝、一人の男が猛ダッシュしてふたりの前を横切っていく。

それはキンキンの人生の歯車を狂わせた張本人である田中邦衛であり、キンキンは当然邦衛を捕まえ、自分の荷物を返せと迫った。

「待て!待ってくれー!それどころやないんやーっ!会長が危篤なんやーっ!危ないんやーっ!」

「会長って、先輩が?」

急いで駆け付けてみると、臨終間近、それゆえに顔を白く塗り過ぎちゃっているという石井演出を施された伴淳が、仲間に囲まれて、公園の薮のなかにいた。

「会長!会長がいなくなったらワテ、どないして生きていったらええんやーっ!」

涙を流す邦衛。

「わしの夢はルンペン社会主義共和国を作ることじゃったー。税金も払わなかったしな」

そう言うと伴淳はこと切れた。桜の花散る空のもと。

坂口良子、そして伴淳の存在をなくしたキンキンは、さらにルンペン道を転がり落ちていった。

まるでボブ・ディランが歌った「Like a Rolling Stone」のように。

キンキンがトルコのゴミ置き場でゴミをあさっている時、一人の女がトルコから出てきた。その姿には見覚えがあった。

「あっ。おめ。あの時の集団就職の列車の中の娘っこでねえかい?」

「おじさん!」

「おめ。なんでこったらトルコなんかに?」

「最初に務めた会社が潰れちゃったのよ。田舎には兄弟が八人もいるし、わたしそれで・・・」

どんな気分だい どんな気分だい 転がる石のように

一方その頃、坂口良子は星正人と一諸に青果市場で元気よく働いていたが、キンキンのことが気になり、星正人がデートに誘ってもキンキンの所在が分るまでは、と断り続けていた。

坂道に停めてあるリヤカー。

そのリヤカーは伴淳の形見で、今ではそのなかがキンキンの住処になっていて、あさってきた酒をあおって寝ていた。

一方片側に連結しているリヤカーには、夫婦のルンペンが住んでいて、昼間からことに及んでいた。夫婦がやる度にぎしぎしいう連結部分。

激しいグラインド運動によって、連結部が外れ、キンキンを乗せたリヤカーは急速度で坂道を下っていった。

そこから再び石井輝男の映像魔術が繰り広げられる。

細かいカット割り。坂道を急スピードで疾走してゆくリヤカーの全景。血相をなくし叫び声を上げるキンキンの横顔のアップ。キンキン目線で迫り来る子どもやカップル、電柱などの映像。

それらがコラージュのように組み合わされ、臨場感を掻き立てる。でかいダンプが迫ってきたあと、キンキンの体は宙に舞った。

万事休すかと思ったキンキンであったが、次のシーンでは遊園地の事務所でまたもやクビを言い渡されていた。

しかし蝋人形館のナポレオンが壊れてしまったため、微動だにしないことを約束にキンキンはナポレオンの格好をして、世界の偉人たちが居並ぶなか、そのなかに紛れ込む。

そこにキンキンの所在を聞くために、坂口良子が現れる。しかしキンキンは遊園地が閉園するのを待って、坂口良子に話しかける。

この作品で唯一難癖をつけるとすれば、このシーンだった。キンキンが現れた坂口良子に辛抱たまらず、大声出して呼びかけ走りより、動き出した蝋人形にみんなが仰天するくらいのことは、せっかくだからやってもよかったのではと思う。

夜のとばりが降りた遊園地で、キンキンと坂口良子は再会を果たす。

そして坂口良子は結婚することを告げるが、その相手を自分だとキンキンは勘違い。しかし話が進んでいくと、それは自分とではなく、星正人との話だということに気づき傷心。

しかし、なぜかウエディングドレス姿の坂口良子と、遊園地の噴水が虹色に輝くなか、メルメンチックにワルツを踊る。

そして坂口良子はキンキンにウエディングドレスを返すと、泣きながら走って姿を消していった。

ピタリと止まるメリーゴーランド。照明が落ちる遊園地。その全景のなかをとぼとぼと歩くキンキンの後ろ姿。

そこへ浮かぶ〝完〟の文字。

最後は少し尻つぼみかなとも思ったが、とにかく爆笑につぐ爆笑であった。

しかもその笑いのなかには、確かに狂気が含まれており、キンキンがオカマ掘られそうにもなり、残飯もあさりつつ、プラトニックラブもあり、ションベンを滝のように漏らし、伴淳のルンペン社会主義共和国の夢破れるという石井輝男監督でしか描けない世界が確かにそこにはあった。

やはり断言しよう。石井輝男は天才だと。

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