建設業のニューストピックス(2023年12月)
1日 時間外規制の対応策周知/国交、総務両省、自治体に要請
政府の2023年度補正予算が11月29日の参院本会議で成立したことを受け、国土交通省は総務省と連名で地方自治体に今後の公共工事の適正な入札・契約と円滑な事業執行を呼び掛ける文書を発出した。
猛暑日なども考慮した適正な工期設定や入札契約手続きや工事関係書類の簡素化・電子化など、24年4月に適用する時間外労働の罰則付き上限規制に対する発注側の対応として有効な取り組みを要請した。
1日 新制度「育成就労」創設へ/政府有識者会議、外国人材活用で
政府の外国人の受け入れに関する有識者会議は、技能実習に代わる新たな制度「育成就労」の創設を柱とする最終報告書を固めた。
11月末に小泉龍司法相に報告書を提出した。
同一機関での就労が1年超の外国人材を対象に、基本的な育成期間(3年)の終了を待たず本人意向での転籍を容認。
制度移行に伴う急激な変化を緩和するため、受け入れ分野ごとに転籍を制限する期間を延長できる経過措置の検討を求めた。
来年の通常国会で関連法案の提出を目指す。
5日 施策をパッケージ展開/国交省、工事書類削減へ
国土交通省は2024年4月に適用される時間外労働の罰則付き上限規制に対応し、工事関係書類の作成業務削減に向けた五つの支援メニューをパッケージ展開する。
支援メニューの一つでは工事実施に必要な書類作成の外注経費などの現状を確認し、必要に応じ同省直轄工事の積算に盛り込むことを検討する。
直轄工事では▽「工事書類スリム化のポイント」の水平展開▽「検査書類限定型工事」の実施拡大▽「ウイークリースタンス」の徹底▽適切な費用計上― の四つ。
自治体工事との連携では九州・沖縄ブロックで先行している工事関係書類の標準化に向けた取り組み事例を水平展開。
各地方ブロックの連絡会議などの場を通じて地域の実情に配慮し、統一できる内容から具体化を促していく。
5日 スモールコンセッション普及へ/国交省、24年度に推進会議設置
国土交通省は地方自治体が所有する遊休不動産の運営を民間に委託し、有効活用につなげる「スモールコンセッション」の全国普及を目指し、官民で構成する推進会議を2024年度に設置する。
取り組みに意欲的な自治体や民間事業者のほか、金融機関や有識者らが参画。手法の普及啓発や事例収集に取り組む。
7日 全資材単価を毎月更新44団体/国交省、物価高騰で都道府県調査
国土交通省の調査によると、公共工事の予定価格の積算時に使用する資材単価を最新の物価資料に基づき毎月更新している都道府県が44団体となった。建設資材の価格高騰が顕在化し始めた1年半前から29団体増加。
国交省の働き掛けや地元業界の要望も受ける形で、実勢価格を踏まえた単価更新への意識が自治体レベルで広く浸透したと言えそうだ。
8日 建設発生土の最終搬出先確認/国交省、24年6月から義務化
国土交通省は2024年6月1日から建設発生土の処理経路の確認を元請業者に義務付けるのを前に、仮置き場となるストックヤードの運営事業者の国への登録を一層促進する。
同省は全国に1000カ所以上のストックヤードが存在すると見込んでいるが、12月1日時点の登録数は218事業者の計322カ所に過ぎない。
元請には登録ストックヤードの利用で最終搬出先までの確認を不要とするインセンティブを用意。
業務負担が軽減するとして、建設会社を通じた登録制度の周知を呼び
掛ける。
12日 取引慣行見直しへ本腰/日機協、ダンプの運転手不足で
日本機械土工協会は主に会員企業の下請として建設発生土の運搬作業に従事するダンプトラック企業との取引慣行の見直しに本腰を入れる。
需給相場に左右される従来の取引関係から脱却し、公共工事の積算体系に基づく適正な運搬価格の支払い推進を会員企業間でおおむね合意。
こうした動きを元請団体や発注機関に説明し、適正価格での発注を呼び掛けていく。
専門性が求められるダンプ企業と運転技能者の社会的地位向上にも併せて取り組む。
15日 印紙税軽減3年延長/与党、24年度税制改正大綱決定
自民、公明両党が2024年度の税制改正大綱を決定し、工事請負契約書や不動産譲渡契約書にかかる印紙税を軽減する特例措置の3年延長が盛り込まれた。
国土交通省は8月時点で2年延長を要望していたが、期間がさらに1年延長される。
建設業団体からは印紙税の廃止を求める声も上がっているが、現行の枠組みで特例措置を継続する形に収まった。
これ以外に建設業関係の税制として、建設機械や作業船に用いる燃料にかかる軽油引取税の課税免除の特例措置も3年延長する。
18日 24年1月改定へ手続き完了/国交省、設計・監理の業務報酬基準
建築設計・工事監理の契約時に報酬を算定するための指標となる「業務報酬基準」の改定案が、国土交通省が開いた中央建築士審査会で同意を得た。
これで改定に先立つ事前手続きをすべて終え、2024年1月の新基準の公布・施行がほぼ確実となった。
同時に運用のガイドラインも公表する。
報酬算定に用いる略算表の業務量を全部で21の建物類型のうち14類型で見直す。
複雑な難易度を持つ建築物に対応するため難易度係数の掛け合わせを可能にするなど新たな仕組みも導入する。
19日 局長級の上下水道審議官新設/国交省、24年度組織概要
国土交通省の2024年度組織・定員概要のうち、同省に移管する厚生労働省が所管してきた水道整備・管理行政の受け入れ体制が明らかになった。
組織体制を再編し国交省が所管している下水道行政と一体的に運営する。
再編する組織のトップには官房に新設する局長級の「上下水道審議官」を
置く。
上下水道一体の行政運営によって、各地で管路をはじめ施設全般の老朽化対策や耐震化など効率良く進められるようにする。
21 日 スライド条項運用、発注者責務に/自民品確議連、品確法改正骨子案
自民党の「公共工事品質確保に関する議員連盟」が設置した公共工事品質確保促進法改正プロジェクトチームの初会合が開かれ、法改正の政策骨子案が示された。
▽公共工事従事者の労働条件改善▽持続可能な地域建設業▽技術開発の推進・新技術の活用― の三つの柱に大別し方策を整理。
品確法で規定する「発注者の責務」としてスライド条項の運用による適切な価格転嫁や生産性向上などに有効な技術の活用と必要経費の予定価格への反映といった対応を新たに盛り込む。
25 日 公共事業費6.1兆円/政府、24年度予算案を決定
政府は2024年度予算案を決定した。
一般会計の総額は112兆0717億円で、うち公共事業関係費は前年度を26億円上回る6兆0828億円を確保した。
国土強靱化に重点を置き、関連予算として4兆円超を配分。
建設資材の価格高騰などを背景に23年度補正予算で別枠計上された「国土強靱化緊急対応枠」は設定されなかったものの「(資材高騰を踏まえ必要な事業経費を)23年度補正と24年度当初の一体で確保できた」(国土交通省官房会計課)。
一方、防衛省予算案は過去最大となる総額7 兆9496 億円を計上。
「防衛力整備計画」(23~27年度)の2年目分の予算として7兆7249億円を配分する。
[全建ジャーナル2024.1月号掲載]