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【手塚治虫漫画全集】全巻紹介 第7弾!179巻~199巻編

手塚治虫と言えば
ギネスブックにも載るほど膨大な数の作品を残している作家であります。
だから「名前は知っているけど何を読んでいいのか分からない」と言う方も多いと思いますし、ファンの方でも全部読んでいる方は少ないと思います。
そこでこの【note】では講談社発行の手塚治虫漫画全集をベースに
手塚作品をガイド的に紹介しています。

手塚治虫漫画全集は全400巻あり、今回はその第7弾!

179巻~199巻までのご紹介となります。
それでは本編をお楽しみください。


「ミクロイドS」

1973年作
こちらは人間対昆虫のSFパニックとなっております。

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あらすじは
昆虫から進化した高等生物ギドロンなる生物がいまして
彼らは砂漠の地下深くに巨大帝国を築いているんですね
そして地球を汚す人間を駆逐して
自然のままの地球を奪い返す侵略計画を立てていたんです。

ギドロンにミクロ化された人間、ミクロイドの3人
ギドロンの野望を防ぐために戦うというストーリーです


虫好きの手塚先生らしい作品ですが
当時人気だった仮面ライダーとの共通点も多いことから、嫉妬でおなじみの手塚先生が仮面ライダーに対抗した作品ともいわれています(笑)

しかし仮面ライダーのようなヒーローものでなく
自然破壊ばかりする人間は、地球の統率者としてふさわしいのか?
という壮大なテーマで少年誌用のタッチで描かれていますが
内容は相当グロさを感じます。

虫が苦手な方は見ない方がいいですね。

人類がなす術も無く殺戮されていく様をさらっと描いています。
ほんとゾンビ映画とか自然災害、のパニック映画の昆虫版です。
手塚先生が描くとそうでもないけど
違う作家さんが書いたら世界観が相当面白いことになると思います。
寄生獣の作者岩明均先生が書いたら面白いんじゃないかなぁ

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人類対異星人の構図だけど根底は自然と昆虫の逆襲劇なんです。

ストーリーには重厚なドラマ性が盛り込まれており
虫の大群によってある種の自然災害のように都市が崩壊していく様は
なかなかの破壊力です。

作中でノーベル賞をとった科学者がこう漏らします。

「虫の大襲来に政治家たちは責任のなすりつけあいをし、
なんの対策もしない学者たちは虫の復讐だなんて誰も信じない
よもや虫の影響で地獄絵図になるとは…」

まさに警鐘ともいえるセリフですね

自然のバランスを保つためにムダな虫の排除をしない
まぁ虫に限らず自然に逆らうなっていう痛烈なメーセージと取れます。

その証拠にラストシーンでは
このような悲劇的な状況について
「この地球の自然を人間が荒らすかどうかにかかっている」
と締めくくられています。


「マグマ大使」

1965年作
地球征服を狙う宇宙の帝王ゴア
地球の創造主アースが作り出したロケット人間「マグマ大使」
ゴアと戦う完全娯楽作品です。

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マグマ大使といえば特撮です
テレビ史に輝く 日本初の特撮・カラーフィルム作品『マグマ大使』
1965年に漫画がスタートし、
1966年7月4日に日本初カラー特撮番組として実写化されました。

特撮といえばウルトラマンでありますが
実はウルトラマンは1966年スタートなのでこっちの方が早いんですね。

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この日本初の実写化という背景にはクリエイターとしての
意地の戦いがあったんです。
この番組の前番組では手塚先生の「W3」が放映されていました。
すこぶる好評ではあったんですが
時代の波なのか
「ウルトラQ」の登場によりこれが見事に粉砕されることになります。

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これを受けて
打倒ウルトラQとして制作されたのがこの「マグマ大使」なんです。
…で『ウルトラマン』も放映開始日が決まっていたんですが
それよりも早く放送する!日本初になる!
という意地でそれよりも13日早く放送されたそうです

ですからこのマグマ大使が正式な「日本初カラー特撮番組」として歴史に名を刻むことになっているんですね。

この製作者の意地の張り合いというか作品の熱意、執念のぶつけ合いにより
日本特撮史に残る傑作同士となり、第一次怪獣ブームが巻き起こり、
特撮ブームにとっても一つの転換期となっていくわけであります。

後年、手塚先生はこの作品に関して、
「当時の予算と技術力としては最高水準の出来栄えであり、
本当に素晴らしい作品だった」

と語っていますが
その後は言うに及ばずウルトラマンの圧勝になってしまいます…。

ボクもはっきり言って
やっぱウルトラマンは素直にめちゃくちゃ面白かったですもん。

今でも続いてますからねシリーズとして
ウルトラマンは偉大だということでしょう。



「海のトリトン」

1972年作
トリトンと言えばアニメのイメージが強いんじゃないでしょうか。

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日本のアニメ史に残る名作とされ、今なお根強い人気を誇っています。
今でもトリトンのアニソンの人気があるように
マンガよりアニメの方が世間の認識は強いように思いますね。

そのアニメ版ですが機動戦士ガンダムの監督で知られる富野由悠季さんがつとめており、この作品が富野さんの出世作にもなりました。

ストーリーは
トリトン族、最後の生き残りであるトリトンと、
海を荒らし回るポセイドン族と闘う海洋冒険SFマンガであります。

この作品が語られるとき、決まって出てくるワードが
「最終回のどんでん返し」ですね。
まぁ出てきます。検索してみてください(笑)

富野さんが原作を無視して最終回でひっくり返してしまう、
テレビアニメ史に残る衝撃のラストをかましてくるんですね
原作とアニメが違うというのは良くありますが
ここまで伝説級な作品はほかにはないでしょう。

まぁ色々ありますがこの辺にしておきましょう。

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マンガの方はというと
鉄板の海洋ロマン傑作ファンタジー巨編です
原作のみに登場する重要キャラクターは多数います。
そして
人間が海洋汚染などにもう少し気を使うことができれば
起こらなかっただろう悲劇も描かれたりもしています。
人類の愚かさや身勝手さ、環境破壊など
少年漫画にこれだけのメッセージを込めすぎじゃない?
っていうくらい手塚先生らしいメッセージの折り込まれた少年マンガになっております。


「奇子」


1972年作
出た!この作品はスゴイですよ。
いわゆる黒手塚と呼ばれる作品の代表作なので
知る人ぞ知る暗黒手塚の傑作とも言われています。

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(この本屋さんスゴすぎ…)

この作品については話たいことが山のようにあるので
一言で言うなら「狂気とエロス」のマンガです。

暴力、財産争い、知的障害、近親相姦、監禁、屈折した愛など
人間のドス黒い面を赤裸々に描きだした傑作中の傑作
今では目を疑うようなシーンが連発しますので
初見の方はちょっと引いちゃうかもしれませんね。

そして戦後最大のミステリーと呼ばれる
あの下山事件を絡めミステリー要素満載のストーリー展開

登場人物も全員欲望丸出し
何が正義かもわからない人間関係の中にあって
タイトルの奇子が翻弄されていくんです。

作中ではこの奇子だけが純真無垢で何の穢れもない幼子なんですが
一家の秘密保持のため死んだことにさせられ
数十年監禁され生活することになるんです。

時が経つにつれ
外見は美しい女性に成長するんですが
この異常ともいえる環境化で育ったため愛を知らないまま育ち非常に
アンバランスな精神構造を持つ女性になっていきます。

外の世界を知らず育った奇子には
実の兄弟としかセックスをしたことがなく
“セックスの事しか知らない美少女”として
他の愛情表現を持たない異常な女性像としてそこに存在して居るんです

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弟とセフレのような関係になるし、兄をも誘惑するし
お父さんは息子の嫁を寝取るし
ドロドロの近親相姦が描かれていきます。

ちなみにこれは日本初の近親相姦マンガらしいですね。


この作品に描かれているのはまさに狂気の世界
妖艶なエロスと純粋がゆえのエロスが共存しているんです。

ここらへんは「ばるぼら」もそうですね

目に見えるエロさというより
無垢なエロさ
成熟していないエロさに
血みどろの人間関係が交錯していくという超絶な物語

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理解不能で制御できない不条理な行動のオンパレード
欲望、本能、の程度が最も甚だしいのが人間ということを
突き付けてくる名作ですね。

手塚先生は
「ドストエフスキーの『罪と罰』と並ぶ最高傑作のひとつ「カラマーゾフの兄弟」のような一家系の様々な人間模様を描きたかった」と語っているようにこの作品でも天外一族という屈折した一家を描いています。


「カラマーゾフの兄弟」における有名な一節
「神がいなければ、全てが許される」
これを
日本人の戦後の混乱期を舞台に描いた手塚流のアレンジはまさに秀逸。


この奇子は
やむを得ぬ事情で3巻で終わるんですが
これはまだほんのプロローグと手塚先生は語っています。
「描きたい意欲があり改めてどこかで発表したい」と言っておりましたが
残念ながらこの続きを見ることができませんでした。


手塚先生が見ていた長編構想
一体このあと奇子がどのような数奇な運命になっていくのか
めっちゃ残念です。ボクが続きが見たい手塚作品のうちのひとつです。

とにかく妖しい魅力に包まれたこの「奇子」ぜひ一読ください。


面白そうだなと思える作品がありましたでしょうか。

少しでも参考になれば幸いでございます。

今回はここまで。

次回第8弾はこちら


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