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多くの著名人たちが「最も影響を受けた作品」と語る「手塚初期SF3部作」とはどんな作品なのか?

今回は日本漫画史に特大の影響を与えた「手塚初期SF3部作」をお届けいたします。

この作品はすごいですよ。
これらが日本で誕生した功績はハンパじゃありません。
この作品がなければ今の「日本エンタメ」の発展は無かったといっても
決して大袈裟ではない伝説の三部作です。

手塚治虫を語る上でも非常に重要な作品でもあり
日本のエンタメにどのような影響を与えてきたのかをご紹介いたしますので
ぜひ最後までお付き合いください


それでは本編行ってみましょう。

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まず3部作というわけですから
3本の作品を総称して3部作と呼ばれております。

その3本とは
マンガでも小説でもない新しい表現
「ストーリーマンガ」の確立をめざした長編『ロストワールド』

科学が生んだ「人造人間」『鉄腕アトム』の原型ともされる
『メトロポリス』

手塚マンガのすべての要素をぶち込んで壮大な物語を紡いだ
『来たるべき世界』

これら手塚治虫の初期の初期に発表された3本を総称して
「手塚初期SF3部作」と呼ばれております。

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内容はまさに
王道の少年SF漫画といった感じ

キャラクターも展開も感情も、とにかくシンプル
今読むと子供向けな印象が受けますし、物足りなさも感じますが
漫画がまだ子供のためのものという時代
1950年代初期という
戦後間もない、娯楽も乏しい時代に
これだけのクオリティを持ったモノが登場したわけですから
これはもう発狂レベルだと思います。

マンガという文化がまだまだ黎明期なだけに
成熟していない初々しさと
若き手塚治虫の才能と熱気が迸っている粗削りさを感じさせますが
後にこれが日本に本格的なストーリー漫画を根付かせるキッカケとなってゆく先駆けの作品でありこれらの漫画の登場はまさに日本漫画史のターニングポイントとなりました。
そして今や国民的な娯楽となった漫画のプラットフォームがこの時点ですでに完成されているのは本当に驚きです。

事実この「手塚初期SF3部作」直撃世代から育った多くのマンガ家や
SF作家、映画監督たちが、「最も影響を受けた作品」としてこの三部作の名を挙げる人も少なくありません。
この作品群が生まれなかったら日本が世界に誇る「漫画」や「アニメ」と
いった文化は20~30年、いや40~50年遅れていたことでしょう。
マジで現代のマンガ文化、日本のエンタメ業界に特大という言葉では足りない程の信じられないインパクトを与えます。

そんな日本漫画の歴史を語る上で欠かせない作品がどのような作品だったのか見ていきましょう。


「ロストワールド」


1948年12月20日に、[地球編]と[宇宙編]の2冊が同時に発売されました。

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ストーリーは
太古の時代に地球から分かれたママンゴ星という惑星が500万年ぶりに地球に大接近。地球と同様の大気や人類が存在する可能性すらあるというこの星の調査にママンゴ星へ降り立ったヒゲオヤジが見たものは太古の世界
すなわち前世紀(ロストワールド)だった……。 

というSF冒険活劇であります。

手塚マンガの本格的な登場を知らしめる作品であり
若き天才の片鱗が垣間見れる傑作。

技術はまだ粗削りですけど
手塚先生が掲げる「マンガとは?」という娯楽性が全面に出て
先生自身が楽しみながら描いている疾走感が味わえます。

手塚先生の初期のタッチが存分に楽しめる作品でもあり
ディズニーの影響を色濃く受けていますが
それを自身のオリジナリティとして昇華させているのは流石の一言。

特にキャラクターの愛くるしさが秀逸で、
円運動を中心とした表現力の美しい動きが本当に素晴らしい
息を呑むほどに見とれてしまう筆圧
漫画における表現、マンガをマンガたらしめた表現方法、
これは本当にすごい。

その技法は今日では常識化しているほど無意識になっている技法なので
多くの人は今見てもさほど驚きは感じないでしょうけど
それが逆に現代マンガの基礎になっている所以でもあるんですよね。

これはどういうことかと言いますと
この作品の冒頭には
「これは漫画に非(あら)ず、小説にも非(あら)ず」
いうことわり書きが書かれています。

これは、手塚先生が
「これまでの常識を覆す作品を世に送り出したい」
という思いがすでにあったことが伺えます。

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漫画でもない小説でもない
ではいったい何のことを指しているのか…?

これまでの「漫画」というのは「4コマ漫画」とか
文章に挿絵がついているようなイメージ、
紙芝居のようなイラストに文章がついている絵物語がブームで
それらを「漫画」と総称していました。

ですからそういうものとは違うよ。
…ってことの宣言でありその宣言から生まれた作品が
ストーリーを展開して読ませる読み物、
いわゆる「ストーリーマンガ」と呼ばれるものであり
現代でいうところの「マンガ」のプラットフォームが生まれるわけです

こうして手塚治虫登場以降、絵物語中心だったものが
ストーリーマンガがマンガの中心になっていき
赤本→貸本と市場が成長し今日の漫画文化の発展に繋がっていくのです。
まさに日本マンガ史に残る記念碑的作品であるのは間違いありません。



続いて1949年作 

「メトロポリス」


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3作品の中では最もSF色の強い作品で
近代的な都市が描かれているということで見た事もない世界に驚いたとの反響がありこれを読んで漫画家を志した学生が増殖したようです。
戦後まもなく発売されたとは思えないほど先進的であり
おそらくこの時代にこれだけの想像力、発想力を持った日本人はいなかったのではないでしょうか。

なんせ本作のテーマは
進みすぎた科学の抱える問題点、科学の暴走、文明社会への警鐘ですから
まだ高度経済成長も始まっていない戦後すぐの日本人には想像だにしない世界観だったことと思います。
科学力の向上がいずれ人類を滅ぼすなんていう事を想像した
手塚治虫の才能はまさに異端の規格外、ズバ抜けていたのだと思います。

そして限られたページ数の中でこれほどまでの情報が詰め込んであるのかと思うほど濃密な内容。
それもそのはず、実は手塚先生は本作をダラダラと書きすぎて後に大幅なカットを施しております。
本筋と関係ないところやクライマックスのところなど
かなりの部分をカットしたそうですので、非常に展開がスピーディー、
よくぞまぁこんなに詰め込んだなぁと思えるくらいパンパンに圧縮された本作の凝縮感はハンパありません。
ちょっと前まで4コママンガを読んでいた読者からすればとんでもない情報量に圧倒されたことでしょう。
質、量、共に圧倒的な存在感を放ちまくっていました。


ストーリーは
近未来の大都市メトロポリスが舞台です
ごく普通の人間として育てられていた人造人間「ミッチイ」がある日、
自分が人造人間だという事実を知ります。
ミッチィは怒りのあまり人類に対しロボット達を率いて反乱を起こします。
そして大都市メトロポリスに進攻し人間を追い詰めるが…
親友だったケンイチと対決することに
さぁ人類の行方はいかに…

というあらすじであります。

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ちなみに
こちらは2001年にアニメーション映画『メトロポリス』として公開されており脚本はあのAKIRAの大友克洋先生です。

本作の作画では初期の手塚タッチで描かれていて背景ではCGを多用するなど革新的な映像美は間違いなく手塚ファン大友ファン両者楽しめます。
興行収入的には成功を収めたわけではありませんが
作品のクオリティは非常に高く近未来のメトロポリスといった作画は
もう20年も前の作品になっていますが今見ても恐ろしいくらい美しく刺激的です。
20年以上も前にこれほどまでに表現力の優れた作品を生み出していたのかと
きっと驚くと思いますのでほんと見て!


最後は1951年作

「来るべき世界」


タイトルなし


あらすじは
度重なる核実験の影響で、
密かに謎の生物フウムーンなるものが誕生していた事を発見
その危険性を山田野博士は国際原子力会議で世界中に警告するも、
誰も耳をかしません。
人類が愚かな戦争を繰り返すその裏で
新人類フウムーンによる脅威が迫り地球最後の日を迎えようとしていた…。
さぁはたして人類はこの脅威にどう立ち向かうのか…
というあらすじであります


注目は
特に主人公のいない複数のキャラクターたちが
運命の結びつきによって複雑に絡み合うストーリー。
この群集劇こそが、当時の漫画では非常に画期的な試みでありました。

物語の構成はまさに秀逸、不思議な運命の糸を紡いでいく様は
この頃にしてすでに手塚節が確立されております
日本漫画におけるストーリーマンガを確立させた天才手塚治虫の才能が爆裂したまさに歴史的傑作!

この「来るべき世界」は三部作の中でも最も長編なのですがそれでも元々は1000ページ近くあったにも関わらず長すぎるという理由で600ページ近くもカットした伝説のエピソードが残っています。
このエピソードは藤子不二雄A先生の「まんが道」でも掲載されており
藤子不二雄両先生は自分たちの無力さと
神様と言えどハンパじゃない努力をしている事に驚愕したというシーンが描かれておりまんが道の中でも屈指の名シーンになっております。
読んだことがない方はぜひ読んでみてください。(…ってか読め)

そして「来るべき世界」が発表された1951年と言えば
終戦からわずか6年後

終戦したはずの世界大戦でありましたが
1951年は朝鮮戦争真っただ中であり米ソも「冷戦」という核兵器開発競争で世界は何も変わっていませんでした。

この辺りの社会的背景の風刺がモロに作風に反映されております。
作中で戦争を起こすスター国はアメリカのことだしウラン連邦はソ連のことですからね。

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愚かな戦争を起こし「世界崩壊」を臭わせる作風を叩き込み
核実験による脅威の生命体が誕生するって、
これ「初代ゴジラ」の三年前ですからね…
何でも先にやっちゃうんですからほんと…。


そしてこれらの作品群を
1950年頃に子供向けに書いているってこと自体がすでに奇跡。
これらは戦争体験をしてきた手塚先生ならではメッセージであり
この一連のテーマというのは生涯に渡って手塚治虫が晩年まで描き続けた一貫したテーマでもあります

ちなみに後に
「来るべき世界」で1000ページをカットされた鬱憤を晴らすように
「0マン」では日本初の週刊連載漫画作品として「来るべき世界」で描けなかった壮大なスペクタクル作を描いております。


本編追記としまして
手塚先生の死後、構想用ノート75冊が発見され、そのうちの10冊に
本作に関する内容が記されていることが判明しております
そしてのちに『「来るべき世界」構想ノート』として手塚プロダクションから刊行されております。

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ここら辺の未使用原稿とか未発表原稿については
ちょっとカオスな状況になっておりますのでまた別の機会にでも
ご紹介できればと思っております


はい、というわけで
以上3作をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか
いづれの作品も現代の目で見てしまうと
どうしても古典的な立ち位置になってしまいます。
そして読みづらさもあろうかと思います。
しかしあえて当時の心奮わせた少年少女たちと同じ目線に立って
時代の転換期である作品を味わってみてはいかがでしょうか。
きっと現代とは違う新たな発見があろうことかと思います。


そしてこちらのSF三部作漫画全集もご多分に漏れず一般に入手できるものはオリジナル単行本とは異なるものであり
「メトロポリス」に至ってはほぼ全面的なトレスと思われ主要キャラの顔などは描き直されておりだいぶ違うものになっています。
全体的にセリフの言い回しなどもかなり異なっておりもはやオリジナルではない(笑)…という手塚あるあるが炸裂しています。

リアルタイム世代を発狂させたオリジナル版を読もうと思ったら
高値にはなってしまいますが復刻版を読むしかありません。
お高いですがどうぞ。


それでは今回はここまで。


それでは最後までご覧下さりありがとうございました。





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