「聖女懐妊」手塚治虫衝撃のSF短編
今回はダークでエロくてヤバい手塚治虫の短篇から
「聖女懐妊」と「帰還者」をお届けいたします。
手塚治虫と言えば数々の傑作短編を残してきておりますが
今回はその中でも手塚治虫お得意のSF作品から
ダークでエロい2作をピックアップしました。
愛と暴力と復讐
どちらも感情を揺さぶるテーマとなっておりますので
ぜひ容赦ない手塚ワールドに触れてみて欲しいと思います。
この動画の最後に
関連のおすすめ動画、映画のご紹介もしておりますので
最後までご覧くださると幸いです。
それでは本編行ってみましょう。
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早速1本目行きましょう。
「聖女懐妊」
これは簡潔に言うと
美少女ロボットと人間の結婚、そして妊娠というストーリーです。
1970年 「プレイコミック」に掲載された作品です
あらすじは
地球から離れて暮らす男は
アンドロイドの部下マリヤと幸せに暮らしていました。
7年の月日が流れやがて2人は結婚。
しかし人間とアンドロイドの2人には
どんなに愛し合っても子供を作ることができません。
それでも2人は幸せな日々を過ごしていました。
しかしそんなある日、
特殊刑務所から脱走してきた囚人たちに襲われます。
妻マリヤをアンドロイドとはいえダッチワイフ的に扱われたことに男は抵抗するとあえなく殺されてしまいます。
残されたマリヤは脱走してきた男たちの召使として
過酷労働させられることになるのですが
ロボットには人間に反抗する機能がついていないので
夫を殺された男たちに尽くす日々が続きます。
ある日、マリヤの体に異変が起きます。
在ろうことか妊娠したようなんです。
ロボットなのであり得ない話なんですが
マリヤのお腹はどんどん大きくなっていきます。
男たちは破壊して調べろと言い出しますが
マリヤは
「何でもするからお腹の赤ちゃんだけは生ませてください」と抵抗します。
さぁ果たしてロボットの妊娠は本当なのか
そしてこの後マリヤがとった行動とは…?
というのが本編のあらすじです。
これね、単なるSFファンタジーでなく
「差別」「暴力」「人権」「愛」など様々なテーマが入り組んだ
社会派ドラマなんですよね。
ロボット、AIと人間との立ち位置、共存
そこに愛情、人権はあるのか、
そして生命の根幹である子孫繁栄を織り交ぜた
生命の神秘をも考えさせられる傑作です。
はたしてAIは人類を超えるのか?
はたまたAIが人類を滅ぼすのか?
手塚治虫が描くSFダークエロファンタジー
ぜひご覧になってみてください。
続いて1973年「プレイコミック」に連載された
「帰還者」
ある若者グループが、宇宙の旅から地球へ帰る途中、
異星人の宇宙船から水を分けて欲しいとの救援を求められます。
水を与えようと異星人の宇宙船に移ると…
そこには大量の金がありました。
そこで
水を与えて助けようとする者と金を奪おうとする者とが仲間割れを起こし
水を与えようとした男が殺されてしまいます。
同乗していた殺された男の妻は発狂
助けを求めた異星人も皆殺しにし金を奪い船員たちは地球へ帰還します。
そして18年後…
水分が抜け干からびた変死体事件が次々と起こります。
共通点は「性行為姿のまま」と「宇宙からの性病」であること
地球上にない性病によって変死体があがっているというのです。
謎が謎を呼び恐怖する男たち
そしてもう一つの共通点が発覚するんです。
それは
18年前の異星人を殺したメンバーが狙われているということ
残されたメンバーは次は自分が狙われているという恐怖と
もしかしたらこれはあの時殺された男の気絶した妻が
宇宙からの性病に感染しているのでは?という疑問を抱き
女の元を訪れるとそこには衝撃の事実が…?
というのが本編のあらすじであります。
これラストのどんでん返しが秀逸ですので
ぜひ読んでみて欲しいと思います。
そしてちょっとネタばらしになりますが
気絶した彼女が宇宙人の触手に犯されるという設定なんですけど
これ一説によると触手に犯されて痙攣して昇天というのは
日本漫画初の描写なのではと言われております。
さすが変態手塚治虫ですよね(笑)
ボクはその手には全く興味ないんですけど「触手」という異次元の性癖を
呼び起こしてしまった罪は大きいですね。
触手に種付けされると言う発想が常人の理解を超えています。
こちらも単なるエロに留まらず
人間の欲望、凶暴性がゴリゴリに描かれたSFサスペンスとなっており
人間の理性というものを痛烈に皮肉っています
じわっと冒頭の「平和コンベンション」の帰り道だったという伏線が
ラストシーンに人間の救いのない欲望が浮き彫りになっていくという
超絶なブラック作品になっていますのでぜひ読んでみてください。
さて…2作品見て参りましたが
この両作品は「時計仕掛けのりんご」という短編集に収録されております。
この短編集はブラックでダークな作品が多いので
今回ご紹介した短編が好みの方であれば
おすすめの一冊になると思いますのでぜひご覧になってみてください。
そして今回はこの二作品と手塚作品をより楽しむうえで
関連のおすすめ動画と映画をご紹介したいと思います。
関連のおすすめ動画と映画
まず映画なんですけどまずは「プリデスティネーション」です。
2014年作イーサンホーク主演の猛烈なタイムパラドックスものなんですけど
登場人物が全員自分みたいな
もはやパラドックスすぎて理解不能な映画です(笑)
これ「SF界の長老」とも呼ばれた、ロバート・A・ハインラインによる
究極のタイムパラドックス小説「輪廻の蛇」が原作となっております
このハインラインとは
アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラークと並んで、世界SF界のビッグスリーとも呼ばれていて
近年のSFの大衆化を推し進めた功績ある人物とされています。
手塚先生も多くのタイムパラドックス作品を描いているので間違いなくその影響を感じていたことでしょう。
特に人間たちの過酷な運命、救いのなさ加減は
手塚作品に影響を感じさせてくれる内容になっております。
両性具有的なところも手塚先生の好きそうなネタですね
この映画の公式サイトのリンク貼っておきますが見ても良く分からないので
解説動画のリンクも貼っておきますのでそちらをご覧になってみてください
続いて
『her/世界でひとつの彼女』
こちらも2014年の作品なんですがAIに恋をしてしまうお話です。
ひとりのおっさんがAIにガチで恋をしてしまうので
変態、気持ち悪いという声もあるんですが
これはそんなペラペラなラブストーリーじゃないんです。
恋をしていきつく先と言えば性行為ですよね。
でも本作では恋をした相手がAIなんでそこに到達できないわけですよ。
そんなリアルな性の問題にゴリゴリにアプローチしてくる描写がエグイです(笑)
そしてAIとの恋という火の鳥の復活編にも通ずる禁断のラブストーリー
自分の思い通りになるロボットって一緒にいると楽しいし
励ましてもくれるし自分好みの女性にもなるし間違いなく
最高の異性になりえます。
当然抱きしめたくなるし結婚もしたくなってもきます
だけどその先には絶対に進めないんですよ。
つまりAI、ロボットと恋に落ちても悲劇しか生まないというね。
肉体を持つ者と持たざる者の肉体関係に対しての答え
これは手塚作品に影響を与えたとかそういうのではないんですが
現代人っぽい感覚で手塚治虫のSF的世界観が堪能できる作品だと思ったのでご紹介してみました。
賛否分かれる作品ですが興味があればご覧になってみてください。
最後に映画ではなく動画なのですが
これは視聴者さんからオススメされたものでありまして
「日本人と西洋人のロボットへの考えに違いがあった!!【海外の反応】」という動画です。
これ教えて頂いて非常に興味深い内容でしたので共有させて頂きました。
端的に日本人と海外ではロボットの考え方に違いがあるというもので
その理由のひとつに「日本には手塚治虫がいたから」「鉄腕アトム」があったからのようなものから
「日本に万物に宿る神がいる」からとか言われてみれば的な意見が面白かったです。
ロボットをどのような視点で捉えるか海外の文化、宗教における違いから
その性質が異なっていくというのは見ておいて損はないと思います。
それを踏まえて先ほどご紹介した
『her/世界でひとつの彼女』を見ると余計にこんがらがってきそうですけど
とにかく色んな考えがあると言うのは参考になります。
以上参考の映画と動画をご紹介いたしました、
本編の「聖女懐妊」と「帰還者」もぜひご覧くださいね。
美少女ロボ妊娠に触手孕ませのWパンチという
えげつない手塚治虫の変態性を垣間見れる収録作品「時計仕掛けのりんご」
ブラックでキレキレのSF・サスペンス盛りだくさんの短編です。
ぜひチェックしてみてください、
最後までご覧くださりありがとうございました。
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