二十歳のころ 第五十三章

僕はまたドミトリーに戻り、ベッドの上に横たわり、物思いにふけった。今日は外に出て食べに行くのもスーパーマーケットに食料を手に入れるのも面倒だなぁと。
しかしベッドでしばらく休むと英気が戻ってくる。何も食べないのは体に良くない。ふと僕はバックパッカーズに併設されているレストランの存在を思い出し、ドミトリーを離れた。
レストランは上の階にある。僕はエレベーターを利用しようとすると張り紙が張ってある。
OUT OF ORDER
なんだ。これは。オーダーが外。よくわからないな。僕は誰かに尋ねてみようと考え、周りを見回すが誰もいない。ま、いいか。ボタンを押すとちゃんと扉が開く。エレベーターの中に僕は入り、レストランのある階にボタンを押す。エレベーターは上へ昇っていきレストランのある階に停まった。
ところが開くことになっているはずの扉が開かない。おいおい。どうしたのだ。僕は疲れていたせいかなんとかしようとかそういう類の不安な気持ちはあまり湧いてこない。ま、なんとかなるだろう。この階は単に駄目で下の階の扉は開くかもしれない。下の階のボタンを押してみるがエレベーターは一向に動かない。幸いエレベーターの扉には若干の隙間が開いている。この状況なら誰か来るのを待つしかないか。誰か来たら声をかけよう。
しばらく扉の隙間から外を覗き待っていると欧米の旅行者がエレベーターの前を通り過ぎる。僕は声をかける。
「Excuse me。」
彼らは声に反応し周りを見回す。僕はもう一回声をかける。
「Excuse me。」
彼らはまた周りを見回す。しかし彼らは僕の声を空耳だったと解釈したのかそのままレストランに向かって立ち去っていく。僕はだんだんと不安になってきた。
今度は日本人の女性の旅行者二人組が僕の視界に入ってきた。これを逃したらいつ出ることができるかわからない。
「すみません。」
大きな声で呼びかける。彼女らは先ほどの旅行者と同様に周りをきょろきょろする。僕はもう一度声をあげた。
「すみません。エレベーターの中です。助けてください。」
彼女らはエレベーターの方向に向かってきた。助かった。僕は扉越しに話しかけた。
「ありがとう。エレベーターに乗ったらエレベーターが故障していたみたいで閉じ込められちゃって・・・エレベーターから外に出ることができないのです。」
「大丈夫?今スタッフ呼んでくるから。ちょっと待っていて。」
「ありがとうございます。」
何分か待つと彼女らはバールを持ったスタッフを連れてきた。スタッフは僕を扉から離れるように指示をし、バールで扉をこじ開けた。
「ありがとうございます。」
「あなた。エレベーターの注意書き読まなかったの?」
「読みました。OUT OF ORDER.と書いていました。」
「それ故障中っていう意味よ。」

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