呪い
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wiki読みながら確認してただけです、でも色々学べる。(^_^;)
呪いは、人または霊が、物理的手段によらず精神的あるいは霊的な手段で、悪意をもって他の人や社会全般に対し災厄や不幸をもたらそうとする行為をいう。
特に人が人を呪い殺すために行うものは、古来日本では呪詛、あるいは対象を「悪」とみなして滅するという建前の上で調伏と言われることもあった。
概要
「呪う」という言葉は「祝詞(のりと)」と語源的には同じで、「宣(の)る」に反復・継続の助動詞「ふ(う)」が接続したものであり、古代の言霊信仰に由来するものと思われる。
日本では既に死んだ人・動物や神霊がなす呪いを特に「祟り」と呼び分けることが多い。呪術(まじない)とも関係が深いが、呪術という言葉は意図および結果の善悪にかかわらず用いられるのに対し、呪いという言葉はもっぱら悪い意味で用いられる。
呪いは生きた人間による場合には、呪文、祈祷、その他の言語的、呪術的または宗教的な行為によって行われるとされることが多い。具体的には宗教・文化的背景によって様々な違いがあり、神・悪魔その他の強力な霊の力を借りてなされると考えられたり、あるいは自己の霊能力によると考えられたりする。日本では、丑の刻参りが呪術的な行為によるものの代表的なものである。
日本における呪詛と法律・国家
現代日本の法体系は超常現象を前提としていないため、呪詛それ自体は不能犯であり、処罰できない。ただし、上記の丑の刻参りにも使われてきた藁人形を見せつけるなどして、相手に呪っていることを知らせて、脅迫罪やストーカー行為等の規制等に関する法律違反の容疑で摘発された事例がある。呪詛の効果を肯定する立場では逆に、「他人に知られると効果がない」と信じられてきた。
古代では、呪詛に該当する「蠱毒厭魅」「巫蟲」は、『養老律令』賊盗律(盗賊に関する法律)などに処罰対象と規定された禁止・違法行為であった。井上内親王(光仁天皇の皇后)のように、他人や国家を呪ったとして罰せられたり、失脚させられたりした貴人や僧侶、呪術者もいる。一方で朝廷は、承平天慶の乱、元寇といった反乱や侵略に対しては、鎮定のための調伏を有力社寺に命じている。
よく知られた例
多くの人に呪いとして理解されていたり語られたりしている例をいくつか挙げる。史実ではないと思われる神話や伝説、物語、都市伝説等における呪いを含む。
そうした伝承や古典文学を含めて、呪いは現代に至るまで、怪談や怪奇・ホラー系創作のテーマや、超常現象に見せかけたミステリのトリックの材料などとして、繰り返し登場し続けている。
その他 1900年代頃からのもの
近代のスポーツにまつわるジンクス
「呪い」の文字を含む学術用語
呪いに関することわざ
なかば揶揄めいて呪いとされるフレーズ
(搾取する朝廷の民からの恨み)呪い返し
日本では、古来から「呪い」に対処する「呪い返し」の手法が多数編み出されてきた。魔除け、縁起担ぎ、厄除け、などの様々な手法がある。さらに、下記の処方もある。
盛り塩 - 玄関先や門前、もしくは家の中に、塩を円錐形に固めて皿の上に置く。
いぶき - さぎり、人間の「息」「呼気」を吹きかけ、その対象物などを浄化する。
陰陽師 - 古代日本の律令制下において中務省の陰陽寮に属した官職の1つであったが、中・近世において民間で私的祈祷や占術、呪い返しを行う者。
蠱毒
蠱毒(こどく)は、古代中国において用いられた呪術を言う。動物を使うもので、中国華南の少数民族の間で受け継がれている。蠱道(こどう)、蠱術(こじゅつ)、巫蠱(ふこ)などともいう。
概要
犬を使用した呪術である犬神、猫を使用した呪術である猫鬼などと並ぶ、動物を使った呪術の一種である。代表的な術式として『医学綱目』巻25の記載では「ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る。この毒を採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする。人がこの毒に当たると、症状はさまざまであるが「一定期間のうちにその人は大抵死ぬ」と記載されている。
歴史
古代中国において、広く用いられていたとされる。どのくらい昔から用いられていたかは定かではないが、白川静など、古代における呪術の重要性を主張する漢字学者は、殷・周時代の甲骨文字から蠱毒の痕跡を読み取っている。
「畜蠱」(蠱の作り方)についての最も早い記録は、『隋書』地理志にある「五月五日に百種の虫を集め、大きなものは蛇、小さなものは虱と、併せて器の中に置き、互いに喰らわせ、最後の一種に残ったものを留める。蛇であれば蛇蠱、虱であれば虱蠱である。これを行って人を殺す」といったものである。
中国の法令では、蠱毒を作って人を殺した場合、あるいは殺そうとした場合、これらを教唆した場合には死刑にあたる旨の規定があり、『唐律疏議』巻18では絞首刑、『大明律』巻19、『大清律例』巻30では斬首刑となっている。
日本では、厭魅(えんみ)と並んで「蠱毒厭魅」として恐れられ、養老律令の中の「賊盗律」に記載があるように、厳しく禁止されていた。実際に処罰された例としては、769年に県犬養姉女らが不破内親王の命で蠱毒を行った罪によって流罪となったこと(神護景雲2年条)、772年に井上内親王が蠱毒の罪によって廃されたこと(宝亀3年条)などが『続日本紀』に記されている。平安時代以降も、たびたび詔を出して禁止されている。
丑の刻参り
丑の刻参り(うしのこくまいり)、丑の時参り(うしのときまいり)とは、丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御神木に憎い相手に見立てた藁人形を釘で打ちつけるという、日本に古来伝わる呪いの一種。典型では、嫉妬心にさいなむ女性が、白衣に扮し、灯したロウソクを突き立てた鉄輪を頭にかぶった姿で行うものである。連夜この詣でをおこない、七日目で満願となって呪う相手が死ぬが、行為を他人に見られると効力が失せると信じられた。ゆかりの場所としては京都市の貴船神社が有名。ただ、貴船神社は24時間開門していないため実際には着手不可能である。
丑の時詣で(うしのときもうで)、丑参り(うしまいり)、丑三参り(うしみつまいり)とも。
概要
丑の刻参りの基本的な方法は、江戸時代に完成している。
一般的な描写としては、白装束を身にまとい、髪を振り乱し、顔に白粉を塗り、頭に五徳(鉄輪)をかぶってそこに三本のロウソクを立て、あるいは一本歯の下駄(あるいは高下駄)を履き、胸には鏡をつるし、神社の御神木に憎い相手に見立てた藁人形を毎夜、五寸釘で打ち込むというものが用いられる。五徳は三脚になっているので、これを逆さにかぶり、三本のロウソクを立てるのである。
呪われた相手は、藁人形に釘を打ちつけた部分から発病するとも解説される。ただし藁人形など人形〔ひとかた〕の使用は江戸期までに必ずしも確立しておらず、例えば鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』(1779年、右上図参照)の添え書きにも言及されていないし、画にも見えない。
小道具については解説によって小差があり、釘は五寸釘であるとか、口に櫛をくわえる、などがある。参詣の刻限も、厳密には「丑のみつどき」(午前2:00-2:30)であるとされる。
石燕や北斎の版画を見ても、呪術する女性のかたわらに黒牛が描かれるが、七日目の参詣が終わると、黒牛が寝そべっているのに遭遇するはずなので、それをまたぐと呪いが成就するという説明がある。この黒牛に恐れをなしたりすると、呪詛の効力が失われるとされる。
丑の刻
「丑の刻」も、昼とは同じ場所でありながら「草木も眠る」と形容されるように、その様相の違いから常世へ繋がる時刻と考えられ、平安時代には呪術としての「丑の刻参り」が行われる時間でもあった。また「うしとら」の方角は鬼門をさすが、時刻でいえば「うしとら」は「丑の刻」に該当する。
丑の刻参り
詳細は「丑の刻参り」を参照
五寸釘を使い、丑三つ時に相手と同調関係を得ているもの(髪の毛など)を埋め込み、藁人形に釘を打ち込む。
丑の刻参りについては、学問上は、少なくとも殺人罪や殺人予備罪については、刑法学における不能犯(迷信犯)であり不可罰である。ただし、多くの寺社は私有地であるため丑の刻参りは建造物侵入罪(不法侵入)に問われたり、樹木に打ち付ける行為が器物損壊罪に問われる可能性がある。また、藁人形を使った呪術行為が、相手方に不安を与えるものだったため脅迫罪に問われた事例があるほか、公然と行われたため侮辱罪や名誉毀損罪が問題になった事例がある。
2022年5月の連休明けから、千葉県松戸市内の約10か所の神社の御神木などにロシアのプーチン大統領の顔写真を付けた藁人形が打ち付けられる事態が発生し、6月15日、松戸東署は、同市に在住する男を建造物侵入と器物損壊の疑いで逮捕した。動機はロシアのウクライナ侵攻への抗議と推測される。神社の関係者は、「ご神木には大きな穴が二つ残っている」と話した。同年6月27日、検察庁は男を不起訴処分としたことを発表した。処分保留で釈放し、任意で捜査を続けていたが、器物損壊について神社側が告訴を取り下げたという。
参考
現在でも神社仏閣での祈祷や祈願などの儀式は、呪いが基盤になっているのです。