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銭函天狗山の登りかた -4つのルート解説-

銭函天狗山とは

銭函天狗山、通称「銭天」とは、小樽市の東の端の方にある537mの低山で、登山スポットとしても人気が高い山です。札幌に近いためアクセスしやすく、山頂からは星置や手稲の街を一望することができるため、休日にはたくさんの登山客が訪れます。

銭函天狗山

4つの登山ルート

銭函天狗山登山道ルート概略図

銭天はほとんどの人が銭天山荘から登りますが、実は大きく分けて4つの登山道があります。ただし、他三本はあまり整備されていないためそれぞれ通行に際する注意点があり、それらを紹介していきたいと思います。

1. 銭天山荘ルート

定番ルート。ただ想像以上に急勾配

登山者のおよそ9割はこのルートを行くという、定番のコースです。距離が最も短く、また登山道も整備されているため、迷うことなく登ることができます。
ただ、短いということはそれだけ勾配がきついということでもあり、中盤以降の登りは斜度がかなり高く、体力は使います。

銭天山荘ルート地図

1-1. 銭天登山道入口

国道5号線から銭函インター線に入り、「大倉山学園・松泉学園」の看板がある斜めの道路を登っていきます。高速の下をくぐり、さらに登っていくと松泉学園の校舎があります。

松泉学園校舎のさらに上に銭天登山口を示す看板があり、その上の広場に5台程度が駐車できます。そこが登山口です。道路沿いを含めれば夏期は8台くらいは停められるかもしれませんが、晴れた休日は一杯になります。冬は3台程度です。松泉学園の駐車場は利用できません。

銭天登山道入口

1-2. 銭天山荘

山岳会所有で、一般は中に入ることができません。トイレが併設されているので、緊急時にはお借りすることはできるかもしれません。

銭天山荘

1-3. 石山分岐

一の坂に差し掛かる少し前に、右側に折れるわかりにくい分岐があります。そこを右に行くと石山山道ルートに合流できますが、道は荒れていて草が生い茂り、ほとんど通行する人はいません。

石山分岐

1-4. 一の坂(土の坂)

最初の急坂で、左が新ルート、右が旧ルートになっています。旧ルートのほうはぬかるみやすく、また坂も急なので、基本的には新ルートがおすすめです。旧ルートもまだまだ通る人は多いので、ちょっとしたヴァリエーションとして使ってみるのも面白いところです。

一の坂分岐

1-5. 二の坂(木の坂)

ゴルフ場のインパクト音が時折響いてくる、長い尾根筋の坂です。3つの坂のうち一番長く、登るのがきつく感じるところでもあります。途中ロープを使うところもあり、滑りやすくなっている箇所もあります。

二の坂

1-6. 三の坂(石の坂)

二の坂を登ると岩場の少し開けた広場に出て、ゴルフ場が一望できるようになります。ここで少し休憩するのもいいでしょう。その広場から頂上まで登る最後の坂がこの三の坂。
勾配は二の坂以上にきつい場所もありますが、距離は短いので最後の気力でえいやっと登ってしまえる感覚があります。

三の坂前の広場

1-7. 山頂

山頂からは石狩湾や星置の街並みが一望できます。
岩場のなかなかスリルのある場所ですが、山頂標識付近は15人くらいがゆっくり座れる空間があるため、落ち着いて休むことができます。

山頂付近からの展望

2. 石山山道ルート

採石場跡を通るルート。変化に富むコース。

かつての採石場を経由します。この採石場からの眺めがなかなか良く、銭天山荘ルートでは見られない西側の山地の景色も見ることができます。

この山道は戦前『新普陀落山観世音御霊場』と呼ばれていたこともあり、修行場でもありました。その名残として、山中にぽつりと石碑が立っています。

道は全体的に荒れがちで、草が生い茂っています。小川を登っていく場所があるので、靴の防水対策が必要です。道がだいぶわかりにくい場所もあります。

石山山道ルート地図

2-1. 石山登山口

銭函小学校グラウンド脇の大きな鉄塔がある道路を登っていき、高速の高架橋を越え、舗装がボロボロになった狭い道を進みます。その先に砂防ダム広場があるので、そこに数台駐車することができます。

登山口に繋がる市道・銭函石山線

銭函学校沢砂防ダムの左手に小さな道があるので、そこから左に入って入林します。まっすぐ行くダムの道はすぐに行き止まりになります。このダム、ペイントスプレーでいくつか落書きグラフティがあるのですが、意外とセンスがある絵なので見ていくのも面白いところです。ダムの沢は涸れ沢で水はほどんど流れていません。

銭函学校沢砂防ダム

2-2. 谷地沢

道の初めの方は、沢と並行、むしろ沢そのものを登っていく場所もあるので、かなりぬかるみます。沢と言ってもあまり水は流れていないのですが、雨上がりの翌日などはかなり泥々になって気持ちが沈みます。
なおこの沢は正確には学校沢ではなく、谷地沢右の沢川と呼ぶようですね。

ぬかるむ谷地沢の道

沢区間を500mほど進むと、ようやく沢を抜けて乾いた道を歩くことができます。なおここで左に曲がるのですが、春先に気づかずに直進して道を見失ったことがあります。

2-3. 石山山道

つづら折りになった廃林道で、かろうじて道は残っているものの、次第に自然に還りつつあります。かつては道も明るく開けていて、小学校の遠足で来るような場所だったのですが、今は鬱蒼とした暗い林といった感じです。

途中、銭天山荘から分岐してくる小道があるのですが、こちら側から見つけるのは困難でしょう。地図にも載っていません。(昭和53年の地理院地図にはあります)

つづら折りを登っていくと、「南無観世音菩薩」という石碑がひっそりと佇んでいます。かつてこの山道に三十三観音像が置かれていたそうですが、その名残でしょうか。そこを過ぎると、急坂を登って石山採石場跡に出ます。

南無観世音菩薩碑

2-4. 石山採石場跡

さっきまでの鬱蒼とした林とは対照的に、よく開けていて、とても景色がよく気持ちのいい場所です。
段々になった採石跡は、まるで城跡のような雰囲気もあります。

採石場跡

ここを右に下っていくと桂岡の渓流ルートと合流しますが、私有地のため立入禁止の看板があります。
天狗山に登るには、左に進んで一番高いところを目指します。やや白みがかった斜面があり、その上が石山の山頂になります。山頂標識などはありません。

石山山頂の白い斜面。ここに取り付く

2-5. 石山と天狗山を繋ぐ尾根

石山山頂からさらに奥に進むと、小さな踏み分け道がついています。そこから200mほどはやや不明瞭な林の中を進みますが、まっすぐなので迷うことはないでしょう。途中、王子木材緑化の錆びた看板があり、それが中間地点です。
尾根筋を登っていくと開けた廃林道跡に出ます。

2-6. 蕗の道

冬期は廃林道に出てすぐの斜面にとりついて山頂まで行くことができるのですが、夏は廃林道を南に進んでいきます。この道は大量の蕗が道路を覆い尽くしているので、「蕗の道」と呼んでいます。地理院の地図には載っていない道です。

蕗の道

廃林道を進んでいくとやがて少し広場になっているところに出、そこで左後ろにわかりにくい道があります。ピンクテープがついているかもしれません。それが山頂への道です。

2-7. 山頂裏の岩道

山頂南側の尾根を進んでいくと、やがていくつもの岩の間に出ます。ここまでくれば山頂まであと少し。一歩足を滑らせると滑落する危険なところなので、注意深く進みましょう。最後の大岩を越えると、山頂に出ます。

山頂裏の岩道。岩の左側を登っていく

3. 桂岡渓流ルート

銭函川沿いを登っていくルート。

川沿いを進むためぬかるむ場所が多く、小さな沢を越える場所もあります。そのため靴の防水対策は必須です。距離がかなり大回りになりますが、頂上近くまでずっと林道を歩くため、勾配のきついところはありません。

桂岡渓流ルート地図

3-1. 銭函鉱山登山口

国道5号線からラルズマートで山側に入り、十万坪線をずっと登っていくと銭函浄水場があります。正式な駐車スペースは無いのですが、かつら公園の上で斜め右の住宅地の方に入っていき、住宅の空き地あたりに数台止めることができます。駐車禁止ではないので住民の方の迷惑にならないように停めましょう。

かつら公園から上に行く道は、令和4年現在、新幹線トンネル工事のため一般車両は封鎖されています。警備の方に尋ねてみたところ、登山目的なら大丈夫とのことなので、一声かけて通らせてもらうといいでしょう。

あるいは少し遠回りにはなりますが、春香山登山口からまわりこんで行くこともできます。(なおこちらの登山口にも私有地のため立入禁止の看板があります)

左側が銭函鉱山道路(トンネル工事中)、右側に春香山登山口がある

3-2. 銭函川2号砂防ダム

貯水池上のゲートを越えると、かつて銭函鉱山のために開かれた道路に出ます。途中、銭函川2号砂防ダムがあり、そのあたりで左に曲がると石山ルート、右に曲がると春香山登山道に合流することができます。
天狗山に行く場合は川沿いを直進します。

銭函川二号砂防ダム

3-2. 銭函渓流

銭函川と並行しているので、全体的にぬかるみが多くなっており、かなり歩きにくい道です。ひとつ沢を越えるところがあり、増水しているときは飛び越えることができません。右に少し巻いて土管の上から藪に入るといいでしょう。

道が"く"の字になったところに小さな滝があり、これを「シコロタイの滝」と呼んでいます。そのあたりは雪解けシーズン、たくさんの小さな沢が斜面から流れ落ちてきて、なかなか美しいところです。泥だらけになって気持ちが沈みがちなところなので、少し風景を見て癒やされましょう。
滝の上にはサイコロ石と呼んでいるちょっと大きな岩石があります。

上流には何基かの治水ダムがあります。

シコロタイの滝

3-4. 天狗山裏林道

ひときわ大きな治山ダムを越えたあたりで、道が二つに分岐しています。真っ直ぐ行くと銭函鉱山、左に曲がると天狗山。銭函鉱山跡は行き止まりになっているので、左に行きましょう。

星置・金山方面から伸びる林道になっていて、とても歩きやすくなっています。植林地帯はかなり開けていて明るい道です。途中、右手に奥手稲山方面への道が分岐していますが、まっすぐ天狗山の方へ向かいましょう。

山頂に近づくと再び林道の分岐があり、そこを左に曲がります。やがて石山山道コースの蕗の道にぶつかります。

天狗山裏の植林地帯

3-5. 山頂裏の岩道

小さな広場で右に入り、山頂を目指します。石山山道コースと同じルートです。

4. 金山林道ルート

星置側からのルート。登山口には注意

距離が長く、ずっと林道歩きが続きます。途中、奥手稲山方面へ行く林道と分かれますが、それ以外は迷うことはないでしょう。

林道入り口は稼働中の採石場となっており、営業時間中の通行はできません。ここを黙って通過しようとした登山者が何度かトラブルになっているので避けましょう。迂回ルートがあるので、そちらを使うのが推奨です。

金山林道ルート地図
金山付近拡大地図

4-1. 乙女橋

前述の通り、銭函天狗山へ繋がる林道入り口は採石場稼働中は通行できません。
代わりに、手稲山登山口の方から回り込んで行きます。手稲鉱山通を登っていき、突き当りの宮町浄水場の手前で右の小道に入ります。このあたりに数台車を停めることができます。

手稲山に登るときは、乙女橋を渡らずに川沿いを遡上していくのですが、銭函天狗山や奥手稲山に行くときは乙女橋を渡ります。

案内板と乙女橋

4-2. 白金町住宅跡

乙女橋を渡り右手に曲がると、踏み分け道があります。整備されていないルートのため、藪が茂っているところもあります。途中、左手にピンテがあったりしますが惑わされず、星置川に近いところを進んでいくのが正解ルートです。

白金町住宅跡

川渡ポイントを探すのが難しいのですが、星置川の砂防ダム上流200mくらいの地点に小さな土管があり、その傍のところで渡るのが一番安全のように感じます。よく見ると川の中の石に赤いペンキで目印がつけられているので、そこがベストポイントです。

星置川渡河ポイント

4-3. 星置川林道・天狗山裏林道

そこからは長い林道歩きになりますが、最初の分岐で右に折れます。少し奥の分岐は奥手稲山に繋がる林道です。よく整備された林道で迷うことはありません。ゴルフ場の山側を通っていきます。

やがて桂岡渓流ルートや石山山道ルートと合流し、その先は上記と同様です。

星置川林道の分岐点

ルートの組み合わせ例

行きと帰りで別の登山ルートを使う場合、駐車場所までたどり着くまでの戻りのルートも大切になってきます。
そのためのルート例を考えます。

銭天山荘登山口から石山経由

銭天山荘-石山ルート

山荘コースと石山コースを繋ぐ連絡路は、銭天山荘側からは見つけやすいものの、石山側からは見つけにくいため、この方向で歩くのがおすすめです。

銭天山荘から石山下山。送電線利用

銭天山荘-石山ルート2

送電線巡視路を使って帰ってくるパターンです。きちんと藪狩りされて整備されているため、上のルートより通行しやすくなっています。
送電線巡視路に立ち入ることは自己責任で。

渓流-石山ルート

渓流石山ルート

桂岡の方から入った場合に、帰りは採石場跡を経由してくるパターンです。桂岡渓流ルートはかなり距離が長いので、実用的なルートと言えるでしょう。
ただし採石場は原則として立入禁止区間になっています。石山の採石場は平成20年に採掘を終了してから、令和4年現在に至るまで稼働しておらず無人です。通行は自己責任で。

金山緊急下山ルート(非推奨)

緊急下山ルート

※このルートは非推奨です。
ゴルフ場のエリアを通行することはプレイの邪魔になりますし、ボールが飛んでくる危険があるので推奨できません。あくまでも緊急時の選択肢の一つとして、頭に入れておくくらいにしておいてください。

冬の銭天

銭函天狗山は昔から山スキーが盛んな山で、降雪期にも登る人が多い山です。とくに石山ルートは夏期より冬期の登山者のほうが多い印象があります。冬はまた違う魅力があるので、ぜひ登ってみてください。

冬も銭天山荘ルートはトレースがある
冬の景色もまた魅力的

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