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中国が一線を越える軍事行動に出た〜ついに日本領空を侵犯

はじめに

 中国軍機が日本の領空を初めて侵犯し、約2分間にわたり飛行した問題について、自衛隊がスクランブル発進し対処し、日本政府はすぐさま「遺憾砲」で応戦した。防衛省は、今回の領空侵犯を「主権の重大な侵害」として非難し、中国に抗議した。中国のY9情報収集機が8月26日に長崎県付近の領空を侵犯し、同省は意図的な行為と見ている。中国は「サラミ戦術」を用いて東シナ海での活動を強化しており、今回の領空侵犯もその一環とみられる。防衛相は再発防止を求め、空自トップは国際法上の主権尊重を強調した。今回はこの問題について考える。

領海・領空

領土・領海・領空

 領海は国連海洋法条約第19条第1項で、「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない」航行と定義され、全ての国の船舶は、領海において無害通航権を有しているが、領空はそのようなことは認められておらず、航空機が他国の領空を通過する際は、基本的に当該国の許可が必要で、これは国際航空法の基本原則である「領空主権の原則」に基づいている。

 日本と周辺国の防空識別圏(ADIZ)は、領空侵犯に対する措置を効果的に行うため、飛行する航空機を識別しやすくする目的で設定されている。日本、韓国、台湾の防空識別圏は、1950年代にアメリカがソ連や中国を監視するために設定したもので、日本の防空識別圏は1950年に設定され、1969年に防衛庁(現防衛省)に引き継がれた。防空識別圏は国際法上の確立された概念ではなく、各国が自国の安全を守るための国内措置として設定しているものである。

 2013年11月、中国が東シナ海上空に設定した新たな防空識別圏(ADIZ)は、日本の防空識別圏と尖閣諸島周辺で重複している。日本政府はこの一方的な措置を認めず、航空会社に中国への飛行計画提出をしないよう指示。アメリカや韓国なども反対を表明し、中国への通報を行わない方針を示している。防空識別圏の重複は、日中間の緊張を高め、偶発的な衝突リスクや国際航空の安全性に影響を与える懸念がある。

今回起こった中国による領空侵犯

 8月26日に防衛省からの発表によると、中国軍のY-9情報収集機が、11時29分頃から11時31分頃にかけて、長崎県男女群島沖の領海上空を侵犯したことを確認し、これに対し、自衛隊は、航空自衛隊西部航空方面隊のF-15やF-2戦闘機を緊急発進させ、通告及び警告を実施する等の対応を実施したとのこと。
 なお、自衛隊はADIZ侵入時から追尾して警告などを行っていたと思われる。
Y-9には輸送、対潜、情報収集などさまざまな用途の派生型があるが、今回のY-9はY-9DZと言う中国最先端の情報収集機と思われ、機体の性質的にも情報収集の一環で飛行しており、行動概要を見ると日中のADIZが重なっていない日本のADIZ空域にまず侵入して、自衛隊機からの警告を受ける中、故意に領空に侵入して日本の出方を確認したものと思われる。
 これは中国が得意とする「サラミ戦術」であり、日本政府お得意の「遺憾砲」だけでは弱腰と見られ、エスカレートしていくと考えられる。
 2023年1月1日、2日に中国軍WZ7無人機が沖縄・宮古島海上を飛行、2024年6月25日には同無人機が奄美大島北西沖の海上まで飛行しており、どんどんエスカレートしていることがわかる。

自民党総裁戦立候補予定者のコメント

 筆者がこれを書いているまでの自民党総裁候補予定者のこの事件についてのコメントは下表の通りである。最も強いコメントは高市氏であるが、現職大臣のため遠慮している面もある。コパホーク氏は一見すると強く見えるが、旧二階派所属で二階氏が訪中中でそれに配慮した感もあり、保守と言えない感じであった。
 その他も弱腰と言っていいようなコメントで、事態の深刻さを感じない。これが次期総理候補と思うと情けない限りである。
 これらは8月27日の「ニュース生放送 あさ8」や飯山あかり氏のYouTubeチャンネルでも深掘りされているので参照してほしい。

サラミ戦術を受け続ける台湾の状況

 中国軍のサラミ戦術は台湾を見れば明らかである。2022年のペロシ米下院議長訪台以降中国軍は空・海で日中中間線を越える事が増えてきており、2024年1月の賴総統就任後、常態化している。台湾国防部がX上で発表した8月に入ってからの台湾ADIZ侵犯、そのうち日中中間線を越えた事象をグラフにまとめたが、本当に常態化している事がわかる。8月3日は台風であるため飛来していないが、それ以外の日は毎日起こっている。そしてAIDZだけでなく中間線を越えて来る事例が増え、中間線を無視し、現状変更を試みていることが明白である。現在、台湾軍は中間線を越えるような事がある場合にはスクランブルで対応しているようである。日本との違いは中国軍機が境界線(この境界線が実際どこなのかは不明)を越えるだけで「第1撃」と見なし、自衛権を行使できるとし、無人機に関しても侵入時の対応規定を明確化し、必要に応じて撃墜を認めている。

 台湾外交部は今回の事象を厳しく非難し、中国の行為が地域の平和と安定を脅かしていると指摘した。中国が軍事拡張を続け、インド太平洋地域の安全保障に脅威を与えているとし、理性的な自制を求めている。台湾は自己防衛力を強化し、日本と協力して権威主義の拡張を阻止すると述べた。
 弱腰の日本に対してしっかりしろよと叱咤激励している面や、安全保障に関して連携を深めたいと考えられる。
 韓国からこのような声明が出ないと言うことは、日本が仮想敵国であると言う認識なんでしょうね。

中国軍機の日台中間線を越える事例
台湾国防部による
中国軍機のAIDZ並びに日中中間線侵犯機数

 余談ではあるが、国共内戦はまだ終わっていない。1949年に中共が中華人民共和国設立を宣言し、国民党は台湾に臨時政府を樹立したが終結を正式に宣言する和平条約は締結されていない。従って領土・領海・領空は正式には確定していない。これが現状変更につながっている理由でもある。1992年に台湾の馬英九政権が中国と合意した「92コンセンサス(九二共識)」では「一つの中国」の原則を認めるとお互いがしているが、中国はご存知のように台湾は中国の一部という解釈であるが、台湾側は国共内戦はまだ終結しておらず、将来的には大陸を台湾(中華民国)が取り戻して統一するという解釈で、同じ解釈ではないのだ。このような状況もあり曖昧な状態が続いている。

まとめ

 日本政府はもっと強行姿勢を取るべきで、サラミ戦術により現状変更を認めないように外交も防衛も強い姿勢を示すべきである。二階氏など日中友好議連が訪中中で、「訪中短期ビザ免除」を要望しにいくなど全くもっておかしなメッセージであり、中国人向け訪日ビザ停止くらい言うべきである。
 防衛省も領空侵犯による対処のガイドラインを明確にし、撃墜も視野に入れ、日常化するなら、敵基地攻撃能力での敵戦闘機基地へのミサイル攻撃もちらつかせるくらい強く望むべきと考える。また、日本国民も重大事態であり戦争一歩手前の状況であると言う危機感を持つべきである。
 自公連立政権では、中国だけではなく韓国、北朝鮮、ロシアに対しても弱腰であり、これらの事態に対処できるとは思えない。
 日本保守党が国政で躍進し、各党の保守勢力が団結して政権に加わり、日本を豊かに強くしてもらいたいものだ。


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