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カフェで妄想


 今、カフェにいる。勉強してみたり、本に集中したり、ぼけーっとしてみたり。コーヒー高い。けどそれ以上にカフェという空間が好きだ。だって人間観察もできる。似たように過ごす人がいるとやっぱり安心する。その中でも特に騒音があることがなによりよい。自分では選べない音が入ってくる。そっと耳に入れるのが好きだ。いわば盗み聞き。会話が耳に入ってくる。少し妄想してみよう。


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 今日は休日。仕事して直帰、寝る起きるを繰り返す毎日。そんな習慣に早く起きなくてもいい休日に無駄に早く起きる習慣が追加されて嫌になっている。特に趣味もない私はニート生活だけは避けたいというしょうもないプライドだけで朝早くから外に出てみることにした。今日は雲もない空が広がる。のんびりしながらの朝支度は何ともすがすがしい。ジャズでも流そうかしら。家に出てすぐ近くにモーニングをやっている老舗の喫茶店がある。今日何するかもここでサンドウィッチ食べながら考えよう。そんな感じでふらりと入った。モーニングセットは頼んで2分で出てきた。はやくない?!モーニングスピード?作り置きが頭によぎる。早ければ早いほどいいでしょ。いろんな葛藤が頭を埋めながらも朝ご飯をいただけるのはやはりありがたい。
 店内は常連っぽいおじさま、CIA並みの情報を毎日のようにぶつけあっているであろうやや声がでかいおばさま3人衆。おそらくこの町の諜報部員。そして私の隣の席に深刻そうな顔した男二人。アイスコーヒーと紅茶?よくわからないがどちらも半分まで減っていて氷がカランと音を立てていた。そんな音よりも気になる二人の会話。ここはもう特等席。知らない二人の会話を聞くにはちょうどいい。でも聞いている感じ前面に出ているのもやっぱり恥ずかしい。普段の二人が聞けない。イヤホンをつける。本当はつけたくない。こんな時だけはノイズキャンセリングを恨む。

男A:あのー君ってさ友達多い?

男B:まあこう見えて割と友達多い方だと思うよ

A:やっぱパーマってそーなんだ

B:まぁたぶん角刈りでもできる人はできると思うけど

A:じゃあさ、やっぱり友達って柔らかいの?

B:あんまり友達を硬さで見たことはないけど、、なんで?

A:俺、こう見えて友達が1人もいないんだよね

B:あー確信したよ今ので。なるほどね。でも友達が1人もいないなんてことある?

A:さっき君友達多いって言ってたよね?もしよかったらでいいだけどさ、君の友達1人くれないかな?

B:えっ?

A:もちろんあれだよ、君の中で1番いらない奴でいいからさ

B:お前ってさ、道徳の授業受けたことある?

A:あるけど、難しくてついていけなかった

B:こーわっ!

A:5段階評価で0だった

B:6段階じゃん

A:ありがとね

B:なんだありがとねって。
友達なんてもらうものじゃないから。
自分で作るものだから

A:自分で作るのは無理だよ

B:なんで?

A:だって類は友を呼ぶって言葉があるように、俺が自分で探す友達は俺みたいな奴が集まってくるってことでしょ?

B:いいじゃないか気の合う仲間で

A:俺、友達頂戴とか言う頭おかしい奴絶対嫌だよ

B:どーゆー気持ちで言ってんの?え?

A:頭のおかしい奴と頭のおかしい奴が出会うと一体何が起きるでしょう?そう、事件だね

B:こえーよ!
何が怖いってずっとお前の喜怒哀楽が分からないんだよ

A:だから、君のまとな友達を1人頂戴って言ってるの

B:いやだから頂戴って何なのさっきから。俺の友達を紹介してあげるのと何が違うの?

A:いや、それは君の友達と出会った、ってだけなの。俺は俺だけの友達が欲しいの

B:いやだからお前だけの友達にはならないじゃん。どっちみち俺の友達をお前にあげたところで、そいつは俺の友達でもあるわけだろ?

A:うんもちろん、縁は切ってもらうよ

B:それはかなりなんでやんねんだよ

A:かなりなんでやねんなの?

B:お前千葉出身の奴からなんでやんねん引き出すのやばいからな

A:あぁ?!

B:どれに?
どれにキレられてるか分からないんだけどさ

A:とにかく友達を頂戴よ

B:いやあげれないって言ってんの
お前に俺の友達をあげたってな、そいつは俺の友達なんだから俺のことは忘れられないだろ?

A:ラモス瑠偉は母国ブラジルのことを完全に忘れたから

B:・・・続けて

A:ラモスは日本に帰化して誰よりも大きな声で君が代を歌ってたから

B:浅草で腰砕けるくらいサンバ踊ってたから!

A:今ラモスの話は関係ないでしょ

B:やんちゃだなお前はほんとに、
俺の友達はあげられないって言ってるの

A:頼むって、なんなら苗字田中とかでいいから頂戴!

B:いや、田中は余ってるとかないから。確かに死ぬほど多い苗字だけど。俺の友達には陽気な田中もいれば内気な田中もいるわけよ

A:なら内気な方の田中でいいから頂戴よ

B:いや内気な田中がこんな話受け入れらんない。内気がゆえに!

A:でもそれは田中が決めることだけどな

B:ねぇどっからその自信がくんの?田中に会ったこともないんだよ?

A:じゃあ君は田中のために一体何ができる?

B:いや何ができるってそんな急に言われて、、

A:俺は田中のために死ねる!

B:そんなバカな!なんで?

A:俺は田中のためならなんだってできる!
田中が飼ってる犬のお世話もする!

B:いや田中が犬飼ってるか分からないだろ?

A:飼ってなかったら買ってくる!

B:余計なことすんなよ!
まず道徳0のやつは、犬に触るな

A:大丈夫か?!

B:俺今気失ってた?
犬に触るなまで覚えてるけど、、
とにかく俺の友達は1人もあげれないから!

A:じゃあ諦めて田中の友達紹介してもらうから

B:いやそういう問題じゃない


 決めた。コーヒーお替り。なんならパフェも追加で。勝手に一人で”笑ってはいけないモーニング”やってた。耐えたかどうかはわからないがだいぶ気持ち悪い中途半端な顔をしていた気がする。友達の概念ってなんだろうね。変な疑問を自分の中に持ち込んで咀嚼している間に隣の男二人は喫茶店を後にしていた。
 あれ、そういえば自分に友達っていたっけ?

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 皆さんお察しの通り自分で考えた会話ではない。私はお笑い芸人を尊敬している。憧れでもある。好きな芸人さんの漫才を横で聞き耳を立てて聞いてみる、という自分の理想的な妄想をした。あえて言わないが、この漫才を聞いたことがある人は少なくないだろう。
 とにかく、カフェという空間は妄想が膨らむ、気がする。カフェインの摂りすぎには注意しましょう。

おやすみなさい。

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