20200120 無題
一昨日に新年会があった。焼き鳥と少々のお酒を慈しんだ。そこで色々の経緯を経て、僕は「文化消耗者」という栄誉ある称号を得た。紫綬勲章やオスカー像を送られた有象無象とは段違いだ。唯一無二の称号を恣にして、消費社会の中での優位から人々を見上げていこうと思う。これからは僕のスーツの左胸に誇らしく勲章を飾り着けておこう。そして、今も文化の消耗をしながらこれを認めている。
粗雑な街にいる客はどれも粗雑だった。入店と同時に、「ここは焼き鳥か? 焼き鳥?」と尋ね続けた客がいて、後に酩酊し、厠に立つ際にすっ転んでいた。見慣れた光景だった。
そんなことなど悲しいくらいに瑣末な話。僕にとって重要なのはその後の退店時に起こった。
仲間内で和気藹々のファニートークが絢爛な花を咲かせていたために、退店まで気づかなかった事実があった。僕らがぐだぐだな会計を済ませて店を出ると、鼻や耳が千切れる程寒い店外にまで見送りがあった。「ありがとうございました!」と、元気溌剌天真爛漫な声に振り向けば、そこにあるのは愛嬌。そう、それは僕の弁慶の向こう脛である。ああ、愛嬌。僕の心は漫ろなのだ。あれ程に僕の心に刺さる笑顔を見たのはいつぶりだろうか。気を抜けば、僕の心臓は、「トゥンク……」と大きく拍動しそうになるし、ややもすれば、「ちゅき……」と化物のような声を媒体にして、この世で一等おぞましいことを囁く恐れがあった。
その愛嬌を眺めるためだけに、週に二、三度は通いたい。いやいや、今はちょっとまずい。左頬の痤瘡が根強く残っている。まずはしっかりとビタミンを鱈腹になるまで摂取して、お肌の調子を整えなければ。きっとあの子は動物園とか好きなんじゃないだろうか。偏見だけど。一緒にプレーリードッグとか見たい。
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