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ルイ・マル監督『さよなら子供たち』ナチ占領下のフランス、子どもたち


<作品情報>

ナチス占領下のフランスのカトリック寄宿舎で生活する少年たちの心の交流を、製作・監督・脚本を担当した「アラモ・ベイ」のルイ・マルの強い自伝的要素のもとで描いてゆく。撮影は「デジャヴュ」のレナート・ベルタが担当。音楽はシューベルトとカミーユ・サン・サーンスのクラシックを使用。出演はガスパール・マネッス、ラファエル・フェジト、フランシーヌ・ラセットほか。

1988年製作/103分/フランス・西ドイツ合作
原題:Au Revoir Les Enfants
配給:シネセゾン
劇場公開日:1988年12月17日

https://eiga.com/movie/44926/

<作品評価>

85点(100点満点)
オススメ度 ★★★★☆

<短評>

北林
戦時中のフランスの寄宿学校を舞台に、『さよなら子供たち』は見事なスライス・オブ・ライフで日常を捉え、繊細な人間ドラマを描いています!朗読の上手いジュリアンを見ているボネ。ピアノの上手いボネを見るジュリアン。マリア像の前で立ち尽くすボネ。物語の大部分では、日常の一コマを穏やかながらも見落とすことのない確かな視線で紡ぎます。
映画はある一瞬を永遠にする力があります。『さよなら子供たち』の最後のカットは、私にとって、そして多くの人にとって、永遠となった一瞬を捉えています。その強烈な表情は、まるで永遠に続くかのように私たちの心に刻まれます。
私は最後の表情が永遠に来ない世界を望みます。

上村
ルイ・マルの半自伝的作品である今作は第44回ヴェネツィア映画祭金獅子賞、アカデミー賞でも外国語映画賞だけでなく脚本賞ノミネートを受けました。
いわゆるホロコーストものになるのですが、学園ものとのバランスが上手くとれていて絶妙な作品になっています。
あんな体験あったらそりゃ心に傷が残るのは必至だわな…
登場人物が基本的には善意の人々だからこそ不穏な展開が起こると変な胸騒ぎがする作品でした。

吉原
基本はナチス占領下のフランスにおける子供たちの学校での日常ストーリーで、終盤まで特に派手な出来事が起きるわけではありません。
戦争映画でありながら、戦闘シーンなどの描写があるわけではなく、あくまでも疎開先での「日常」を描いているところが特徴的な作品です。
しかし、そんな日常のシーンの中にも寄宿学校やレストランでユダヤ人が差別を受ける描写が挿入されており、大人だけでなく子供も戦争の被害者であるというメッセージを孕んだ紛れもない反戦映画です。
同監督の「死刑台のエレベーター」は撮影が非常に凝っていた印象でしたが、本作はそのような技術的な側面を感じることはありませんでした。しかし、それによって子供たちの目線から見た「戦争」がより鮮明に生々しく見えたので、ルイ・マルはそのような意図で本作を撮影したのではないかと思いました。
本作はフランス版「窓ぎわのトットちゃん」と言っても過言ではないと思います。戦争が子供たちから何を奪い、苦しめたのか非常に考えさせられる作品です。

<おわりに>

 戦争は何をもたらすのでしょうか。そして一番の犠牲者は誰でしょうか。今こそ観るべき傑作です。

<私たちについて>

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