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第8章. ポスト資本主義と『Society5.0』

前章では、「AI時代」の到来が、必然的に国際通貨市場の変質を生起する事を通じて、結果的に資本主義体制の終焉に至る理由について説明しました
これは、中国の「人民元」がデジタル通貨へと移行する事で、ほぼ確実に予測可能な変化の典型的な事例と云えるでしょう。

この章では、「AI時代」の到来によって予測される、その他の変化につい
て、現時点で考えられる事柄を考察してみましょう。

■ ポスト資本主義の時代

この節では、まず最初に、「AI時代」の到来が与える社会へのインパクト
について考えてみましょう。
「予想される出来事」が生起する順序は、各国の事情によって異なるでしょ
うから、ここでは日本について考えてみる事にします。

まず現在進行中の出来事から始めると、第一に「生産技術のAI化」です。
企業では、これが生産性改善に有効だと判断できると、可能な限りこの方向
を推し進める事でしょう。
この動きは、資金的に有利な立場の上場企業が中心になります。

さらに、生産性改善に成功した企業では「働き方改革」を進める事でしょう
ここで少し注意しておきたい事なのですが、現在の日本では「働き方改革」
がちょっとしたブームになっていますから、これは「生産技術のAI化」と
は本来は無関係に現在進行中である出来事です。

次に、「働き方改革」で余暇が増えた労働者は、副業によって、収入の増大
を考える事でしょう。
勿論、余暇の活用法には個人差がありますから、一概には言えないのですが
「働き方改革」が減収に繋がる人々では、減収が問題ですから、総体的には
副業は必ず増えます。

また、人によっては、将来のために、余暇を自己投資の機会と捉える方も多
いだろうと考えます。
英会話やプログラミング、その他のセミナーなどに参加したり、株式やFX
などの個人投資に向かう人々も多い事だと思います。

勿論、子育てや介護など、家族のコミュニケーション充実に時間を使う人々
は多いはずで、その他にも旅行やスポーツ等のレクリエーション、ゲーム等
の趣味に熱中する人もいるはずです。

では「働き方改革」の結果、世の中は何が大きく変わるのでしょうか?
この「問い」に答える事は「AI時代」を考える上でとても重要な事なので
また後の節で、振り返る事にしましょう。

さて、この節のテーマである、「AI時代」の到来が与える社会へのインパ
クトについてですが、「生産技術のAI化」に続いて「消費スタイルのAI
化」について考えてみましょう。

既に明らかになっている消費者行動の変化を見てみると、ECの利用が広く
定着しつつある事実が顕著です。

Amazon や楽天市場に始まって、ZOZO、メルカリなど、あらゆる商品が、
ECで手に入るだけでなく、メルカリの様に消費者が即販売者になるなどの
新たなサービス市場がどんどん生まれています。
シェアリングサービス市場など、従来の消費者行動が大きく変化しつつある
事が、今日の大規模な変化の核心であると言えるでしょう。
この傾向は、今後もどんどん進展して行くと予想されます。

次に金融市場を見てみましょう。
ご存じのとおり、日本では昨年から、ようやく『キャッシュレス時代』が、
本格化しました。
もっとも、クレジットカード決済や電子マネーの利用など、ライフスタイル
の面で、既に「キャッシュレス」な生活をしている人は多くいたのです。

昨年の「キャッシュレス還元ポイント」騒動で、日本の保守的なマスコミの
論調を見ていて感じたのですが、超高齢社会を迎えている日本の現状に対し
マスコミの過度の配慮の喧伝が、日本の進歩の足枷になっている事実に世論はもっと注意を向けた方が良いのでしょう。

世界最初の産業革命時代のイギリスの様子を見ても分かるのですが、時代の変化にどんなに抵抗してみても、時代の大きな流れは変わらないのです。
万一それが成功する事があったとしても、時代の大きな流れの中では一時的な反動現象として、むしろ嫌悪すべき事柄と理解される事でしょう。
社会の進歩に反対するのではなく、むしろ積極的にサービス改善の意見を述
べる事の方が、よっぽど有意義な行為だと感じます。

その他にも、健康・医療面でのAI化や軍事面でのAI化、組織面でのAI
化、政治面でのAI化など、社会のあらゆる面でAI化の波が押し寄せます

さらにまた、学問、科学技術、倫理面でのAI化など、人間文化のあらゆる
側面の隅々までAIの影響は及ぶため、結局のところ法律や、各種規制まで
がAI化を考慮したルールに書き換えられなければなりません。
これからの人々が一番知恵を働かせる必要があるのは、こうした人間とAIが共存していくルール作りなのです。

結局、『ポスト資本主義の社会』とは、『データ資本主義の社会』である事
が分ります。
人類の文化は、物質系から情報系へと、その比重が移って行くのでしょう。
それは、いよいよ人間性の本質である、精神性の価値がクローズアップされ
る時代でもありましょう。

■ 生きる意味を感じる

ここでは、前節で保留しておいた「問い」に答える事にしましょう。
「働き方改革」の結果、世の中は何が大きく変わるのでしょうか?
-この「問い」に答える事にします。

筆者が、現在進行中の「働き方改革」において注目している事は、「労働」
に対する人々の意識の変化です。

「終身雇用制」が当たり前だった、かつての日本人の「労働観」は、男性な
らば「人生観」とも云えるほど重い比重を持った「価値観」の一部でした。

この意味において、戦後の高度成長期の日本人は「労働価値説」に生きる、
社会主義思想の人々であったと言えるのかも知れません。
「24時間働けますか」を合言葉に、仕事に全精力を注いで人生を全うする
事が男性の美徳であり、女性は「内助の功」を発揮して夫を支える事が美徳
と確信していた時代だったのです。

変化の兆しは、変動為替相場制に移行後の、筆者自身の時代に始まっていた
と感じます。
筆者達の世代は「モラトリアム世代」と呼ばれて、社会人となる事をできる
限り先延ばしして、自分の理想の生き方を追い求める傾向がありました。

その後のバブル期の到来は、日本人から「労働価値説」を完全に否定しました。
「財テク」がブームになった事で、人々は「投資」に目覚めたのです。
しかし、バブル後の資産デフレ期の到来によって、「投資」熱は一機に冷め
ました。

21世紀に入って、ホリエモンが一躍時代の寵児として脚光を浴びた頃から
日本は本格的な資本主義社会に変化したと、筆者は考えています。
この頃から、株式時価総額が重要視される様になり、従来の日本式経営が
完全に否定される様になりました。
非正規雇用の労働者が急速に増えていった事で、日本人の「労働観」は二分
されます。
非正規雇用の職員を「派遣」と蔑視する声もあった一方で、正職員は自分自
身の事を「社畜」と呼んで、自虐的な態度を見せる事が多いのも事実です。

そして、現在の「働き方改革」と「AI時代」の到来です。
これからの時代において、「労働」が「人間からAIへ」と、どんどん置き
換わるのだとすると、私達の「労働観」そして「人生観」はどう変化するの
でしょうか?

「ワーク・ライフ・バランス」は、2018年頃から、政府が中心となって検討
を重ね、2019年 3月にレポートを公表した「仕事と生活の調和」を推進する
政府主導の考え方と施策です。

「仕事と生活の調和」推進サイト

政府自らが主導して、日本人の仕事中心の「労働観」と「労働環境」の変革
を意図した施策ですが、これは広く受け入れられて、現在の「働き方改革」のブームを到来しました。

これはまた一面で「仕事を楽しむ」、「趣味を仕事にする」といった考え方でも、受け入れられている昨今です。

人間は元来動物ですから、「食うために仕事をする」生き物です。
それが自然の節理ですが、人間文明の発展は、とうとう楽しみながら仕事を
する時代にまで進化しました。

では、「生きる意味」とは何でしょう?

「生きる意味」とは「生きる目的」の事です。
元来、人間は何か目的を持って生まれてきた訳ではありません。
「生きる目的」は、生まれてから後に、創り出すものなのです。

・人生を思いきりエンジョイしたい
・有名人になりたい
・家族を幸せにしたい
・子供の成長を見届けたい
・人を笑わせて、元気にしたい
・芸術作品を作って、人々を感動させたい
・好きな仕事を極めたい
・社会の役に立つ仕事がしたい
・後世の役に立つ仕事を残したい
などなど。。。

■ 価値を創造する

ここで、人それぞれの多様な「人生観」を例示してみましたが、こうした、
実に多彩な「人生観」を許容できるのは、それは日本が「自由主義」の国家
であるからです。
「他国もそうである」訳では、けっしてありません。

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