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第1章.『錬金学』とは何か?

■ 錬金術のイメージ

「錬金術(Alchemy)」という言葉から、皆さんは何をイメージしますか?

おそらく、中世のヨーロッパで、卑金属から貴金属(特に金)を精錬しよう
とする試みに熱中していた、怪しげな人々、妖術師、といったところでしょ
うか。

その様なイメージも、けっして過ちではありません。

それでは、皆さんもよく知っている物理学者、アイザック・ニュートン(1642年 - 1727年)が、大変熱心に錬金術に取り組んでいた事実を知れば、皆さんのイメージは、どう変化するのでしょうか?

実際、錬金術のノウハウは、近代化学が誕生する前駆的技術として一般的に
認識されていますし、歴史学者フランシス・イェイツ(1899年 - 1981年)は、16世紀の錬金術が17世紀の自然科学を生み出した、と指摘しました。

■ 錬金術とプロジェクトの起源

また、東京大学でイングランド経済史・経営史を研究する山本浩司先生は、
その著書『Taming Capitalism before its Triumph』(オックスフォード
大学出版局)の中で、
「近世イギリスでは『錬金術』のメタファーでビジネスが語られていた。」
と述べておられます。

つまり、現代でも多用される「project」という言葉は、大航海時代を経て、
産業革命の時代へと向かいつつあった近世イギリスにおいて、頻繁に使われている言葉でした。
『業を企てる』―すなわち企業が生まれた時代であり、そこでは新規事業や
技術革新のような活動、つまりprojectが数多く生まれていたのです。

私は『錬金術』こそが、『産業革命』の原動力であったと考えています。

■ 『錬金学』とビジネス

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