庵野秀明展で感じたエンタメビジネスのあり方 ※ネタバレあり
学生時代は、課題なんかもあって、ちょいちょい美術館に行くこともあったのですが、就職してからは頻度も落ち、久しぶりに行った国立新美術館。
庵野秀明展に行ってきました。
見に行ってきて色々感じることがあったので、少し備忘録的に書いてみたいと思っております。
以下ネタバレを含んでおりますので、これから行く予定の方はご自身の判断でお読みください。
展示内容概要
今回の庵野秀明展では、大きく分けると3部構成で、「これまで庵野氏が見てきたもの」「これまで創ってきたもの」「これから創ろうとしているもの」と分けられておりました。
彼の作品は言わずもがなエヴァンゲリオンに代表されるアニメ作品やシン・ゴジラなどの実写映画など。映像作家として日本を代表する一人です。
自分も通い詰めてたわけではないですが、美術館で展示されるものって本当に様々で、例えば絵画や彫刻なんかのジャンルの場合は、「作品自体」が展示されることが多いと思いますが、今回の展示会、前述のような作品それ自体はすでに世の中にリリースされているものだったりもするので、3部構成の中では特に、その過程を見せるようなものが大半でした。
そういう意味では、ル・コルビュジェやガウディなどの大規模建築家の展示会と類似しており、結果的に精神性や生い立ちなど、作家自体の深堀りも言及されるようなものでした。
楽しみ方の変容、もしくは進化
ということで会場に入って行くと、庵野氏が映像作家になるに至る様々な作品の展示に始まり、エヴァンゲリオンやその他作品の制作過程のアウトプットなどが所狭しと死ぬほど並んでいるわけです。
※第三村模型
この「過程を見せる」という行為って話題になったプロフェッショナルと同種のコンテンツだな、と。
少し前に楽しんで見ていた集英社のミリオンタッグもそんなコンテンツで、いずれもコンテンツとして個人的には非常に面白かったのですが、一方でミリオンタッグもプロフェッショナルも動画だったな、と。
今回、というか美術館・博物館の展示ってどうしてもその性質上、点を見せることになりがちで、動画ほどの連続性(=線)で見せることは難しい。その分、点としての深さは出せるというメリットもありますが、中々この展示を線で楽しむのは難しかったなぁ、と感じております。
ただ、こういう「過程」のエンタメ化って今ニーズがめちゃくちゃあるよなぁ、という話が本題その1です。
かつてから、ドキュメンタリーというジャンルで、「そこに存在する真実を、なるべく真実のまま切り取る」という行為はされてきているわけですが、これを見るときのインサイトって「知りたい」とか「見たい」とか。透明化という言葉に代替できるものなのかなぁと思うわけです。
これっておそらくyoutuberの文脈がめちゃくちゃ影響していて、たとえばきまぐれクックとか佐賀よかでしょう。とか。そういう「見たことないもの見せる系」「普段やらない事・ものを見せる系」のチャンネルに人気があることと因果関係が必ずあるよな、と。
別の例で言うと、たとえば芸人。昭和の漫才師の"板の上では絶妙な掛け合いを見せるけど、普段はベタベタ馴れ合わない"みたいなスタイルから一変、さまぁ〜ずに始まり、バナナマンとかサンドウィッチマンとかそういう、コンビ仲の良い芸人が、好かれてる時代だと思うんですよね。
表舞台と舞台裏、みたいな対比はなく、
表裏なく常に同じ関係性の芸人、
普段の趣味をそのまま紹介するyoutuber、
そういう生さ・透明性みたいなことが、受け手の安心にも繋がってるんだと感じております。
バンドにおいても、そういう透明性がエンタメするんだろうなぁ、とか考えながら、この記事を書いたり、
次の一手を検討するのであります。
続・エヴァの呪いと業界維持のためのマネタイズについて
そんなエンタメの在り方みたいなことを考える一方でめちゃ気になったこと。
それは、来場者のみんながみんな、ホントにコレでもかと言うくらい写真を撮っておるわけです。
コレが本当に違和感だった。
たしかに撮影はフラッシュ・動画以外は許容されていたし(一部除く)、自分もところどころ写真に収めておきたい展示はあったのですが、とにかくそこかしこで鳴るシャッター音。モノを見ずに撮影だけしてる人さえいた。
察するにこういうことではないか。
展示内のステートメントにもあったが、エヴァ自体がアニメに「考察する」という文化を導入した金字塔であり、「エヴァを見る=大量な情報を取りこぼさずそれを組み立て考察する」という態度で臨むことが良しとされている背景。
会場に来場した人たちが、普段エヴァもしくは庵野作品を閲覧する時のそういう態度で、会場に来場してたのだとしても何らおかしくないよな、と思うわけです。
美術館の様子としては違和感あったわけですが、翻ってみると、それ自体が庵野秀明の作品の一部な気もして、それはそれで感慨深いです。旧劇でも観覧者を巻き込むような演出もあるので、そんな事を考えてしまいます。意図せずかもしれんが。
そしてそういう「エヴァの呪い」にかけられた人たちを来場者として展示に呼び込むことで、ビジネスとしての成功を強く感じます。
入場料だけでなくグッズ展開もえげつないですしね。
アニメ(ーター)見本市、STUDIO Qなどの、文化維持のための組織、運動も積極的に行っている庵野氏なわけですが、今回の展示での利益が、そういう組織の運営に還元されると良いなと思うわけです。
エンターテインメントを作る一流として、ディレクターとして、庵野秀明は大変尊敬できるが、そういう「仕組み」を作るところにも積極的にやってらっしゃるプロデューサー的な活動にも敬意を評しております。
そんな話。
東京を中心に活動するZEKUUと言うバンドです。今後増えていくであろう、”副業ミュージシャン”のポジションを30才を超えて狙うべく色々試行錯誤をしております