Apple musicとSpotifyの設計思想の違いから見る音楽マーケティングの今後について
音質とか曲数とかそういうスペック的な情報はまとめてくださってる人がいるのでそちらで。
ここで語りたいのは、UIから見る思想の違い。
コンセプトの違い
まずそれぞれのUIから読み取れるコンセプトの違いを考えたいと思います。
apple musicは「アーティスト至上主義」
曲がまずあってそれを探すレイヤー構造としてアーティスト名 > アルバム名 > 曲名
となっている。曲を登録するとライブラリにはその曲を歌ってるアーティスト名、その曲が入ってるアルバム名も自動登録。
(※左:新しいアルバムを追加/右:一覧から追加したアルバムを表示)
つまり、「●●がリリースしている××というアルバムの△△という曲」という理解をユーザーに促すことになる。
一方、Spotifyは「出会い至上主義」
たとえば任意の好きになったアルバムがあったとして、それをお気に入り(apple musicでいうライブラリ追加)しても、そのアルバムをリリースしているアーティスト名は登録されない。
お気に入りしたアルバムはお気に入りしたアルバムのリストに一覧化されるがそのアルバムをリリースしてるアーティストはお気に入りのアーティスト欄には登録されない。
最近、apple musicからSpotifyに移行せんとしてる身としてはこのUI/機能の違いに大変戸惑っているわけなんですが、ある意味これはユーザーの多様なニーズにマッチしてるのかもな、と思うわけです。
たとえば、●●というミュージシャンを好きな人が、そのアーティストの曲を須く聴きたいと思ったときには、アルバムや曲にはしばられず、そのアーティストの曲を色々と(極論ランダムで)聴きたいんじゃなかろうか、と。そうなったときに、お気に入りのアーティストページから人気の曲一覧が表示・再生されるSpotifyのUIは使いやすそうである。
逆に、「CMで聴いたあの曲いいね!」と思った人がその曲を繰り返し聴きたいとき。この時、その曲をお気に入り登録しておけば、アーティスト名は気にせず曲単体にいち早くアクセスすることが可能。
思想の違いはどこから?
apple musicにもアーティストページは存在するが、ここにある曲を繰り返し聴きたいときには、前述のように「ライブラリに追加」が必要。
これはiTunesというプラットフォームを作ってきappleとしては素直な進化だし、iPod時代からiTunesを10年以上使ってきた俺としても非常にわかりやすい。(当たり前だけど、かつてはTSUTAYAで品定めしてきた曲をiTunesに追加してiPodで聴いてたし)
一方でSpotifyはそういった「マイライブラリ」的な思想とは対照的に、ストリーミング文化を象徴としたサービス設計になってる。
コンテンツを外から持ってきて自分の本棚に入れるというapple musicの考え方に対して、Spotifyは自分がそのアーティストや曲の部屋に聴きに行くという設計。
コレクション文化からシェアリング文化へ、自分だけのものからみんなで共有するものへ、という感じですな。
どういう事が起こるか
こうなるとどういう事が起きるか。
かつて(少なくとも俺がTSUTAYAやタワレコに足繁く通っていたころ)には、アーティストが立っていて、それに紐づく曲があるという、apple music的発想で音楽と出会っていたが、ストリーミング世代にはアーティスト名と曲はセットで出会う事がない。
Spotifyのレコメンドプレイリストから流れてきた曲に対して「あ、この曲いいな、お気に入り」となると、またその曲を聴きたいときは曲名から検索すればよい。
アーティストと曲の分断が起きるのであります。
こうなると、アーティストに求められるのはマーケティング力になってくるのではないか、と。
「この曲を歌ってるは●●という人なんだ!」という気づきを如何に与えるか、が重要になってくるわけよね。
これをやらないと困ることになるのがライブの集客。
どんなに「●●がライブやるよ!」って言ってもその名前が認識されてなかったら(たとえ曲が知られてても)ライブには来ないやん。それ困るやん。
ストリーミングサービスと音楽活動
もちろんネガだけではなく、spotifyは顔と名前覚えてもらえないけど、曲との出会いは創出しやすいと思うわけです。(無料版のランダム再生もあるし)
ミュージシャンはこれを如何に活用して自分たちのオリジナルを世の中に広めていくか。それがすごく重要。プレイリストを活用するもいいし、アーティストページを充実させるもいいし、SNSとの連動性を高めるもいいし、色んなやり方が考えられますよね。
まだ個人的にはapple music(ないしiTunes)のが使いやすいのも事実ですが、今後この音楽ストリーミング業界がどうなっていくのか、、見ものであると同時に、作り手としての広め方も画策していくつもりでございます。