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伊豆で正月旅行②-伊豆の平安仏と下田温泉
1日目
竹の庄では大女将と若旦那さんのお見送りをうけて、最初の目的地である河津平安仏像展示館に向かう。
ここはたまたま宿にあった観光パンフレットで知ったのですが、まず河津平安仏というキャッチフレーズが琴線に触れます。
言ったら失礼かもだけど、平安時代の暮らしって一般民衆は竪穴式住居に暮らしていた時代ですよね。
当時の河津といったら平安時代の貴族文化から一番程遠いところにある訳で、そこに平安仏?なんで?という疑問の方が大きかった。
その疑問を解くべく現地に向かった。
JR河津駅よりその線路の軌道が下田駅へと向かう山間部がわずかに開けた谷筋に沿って細い道を河津川の枝沢を遡っていく。
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細い道をさらに詰めて行くと、駐車場が現れそこからは急な坂道を南禅寺目指して登って行くことになります。
場所だけのパンフレットを見ただけで、この坂を登って行くのはよっぽどの物好きかよって言うくらい急坂です。
登り詰めた南禅寺は今は小さなお堂を残すのみです。(トップ画像)
すぐ右隣りが河津平安仏像展示館でさほど大きくない建物です。
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入館料を支払って展示場入口に立った私は、ちょっと言葉では表せないのですが、「呼ばれた!」と思わず立ち竦んでしまいました。
正面にはどっしりと威厳を湛えた薬師如来坐像が私たちを迎えてくれました。平安時代初期の木彫像に多く用いられた、大波小波の衣文である翻波式衣文が美しい。
くどいようですがここは伊豆の片田舎です。
けっして地のお金持ちが趣味で集めたものではありません。
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あまりの私の驚きぶりに係の方が「説明しましょうか」とおっしゃっていただき、じっくりと説明を受けることになります。
まず749年に行基創立の那蘭陀寺という七堂伽藍の大寺があったそうです。
そして838年伊豆諸島の神津島で大噴火が起きます。
その後も三宅島噴火などが続きます。
平安京でも降灰や爆発音の記録が残っており、驚いた朝廷がその鎮圧祈願のために仏像を建立したようで、その作風は中央で造仏された仏像と共通し、一流の仏師が手掛けたものと論じられています。
またこれらの時代(9世紀前半~10世紀中頃)仏像は神像などを除いてカヤ材の一木造りの彫像で、奈良・京都などの西日本の仏教圏以外ではほとんど例がなく学術上でも大変貴重な存在のようです。
ちなみにカヤの一木作りは鑑真とともに来日した仏師によってもたらされたものだそうです。
これらの運搬ですが、この時代下田港はまだなく河津の谷津港が入り江を持つ当時東西交通の要衝地で、港から河川を利用して運び上げたようです。
その後、室町時代の1432年、地震と山津波によって那蘭陀寺は流され、下手
の仏の谷に埋没してしまいます。
ここにある傷ついた仏像たちは寺の比丘や比丘尼によって掘り出されたそうです。
そして1541年、鎌倉の正光院の南禅和尚がお堂を建て埋まっていた仏像を祀ったそうです。
私が一番感銘を受けたのは、この狭い檀家のいない南禅寺のお堂の中の仏たちを、地元の人たちが長く守ってこられたということです。
中には朽ちる寸前な仏もいらっしゃいますが、守り伝え今に残った奇跡に感謝の気持ちなのです。
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キャプションでは26体の仏像と神像は静岡県の重要文化財となっていますが、今はすべて国の重要文化財で、この中の何体かはいずれ国宝クラスになるというレベルのようです。
最後に係の方が甘茶をふるまって下さり、こちらを辞しました。
お客様がいなかったので1時間以上たっぷりとお話を聞いたり質問したりと、充実した時間を過ごすことができました。
続いて下田市の上原美術館に向かいます。
こちらは大正薬品の実質的な創業者、上原正吉氏の仏教美術コレクションと名誉会長上原昭二氏が蒐集した近代絵画を集めた美術館です。
仏像ギャラリーは展示用に新しく造られた仏像で精緻なんですが、目的がよくわからない…
”仏像でみる伊豆の平安時代”は規模が小さすぎてお腹いっぱいになれない。
まあ、河津平安仏像展示館が素晴らしすぎたので仕方ないです。
ですが、通常は秘仏である仏がお出ましなのでありがたいのです。
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近代館では特別展の”ものがたりをよむ”が開催中ですが、展示が少ないのが惜しい。小林古径の井筒がよかった。
常設では岸田劉生の麗子微笑像がみられてよかった。何点も描いていて以前国立博物館で観て以来だった。
いい時間になったので今宵の宿に向かいます。お値段重視で伊藤園ホテルズの花岬です。
お部屋も清潔で快適だし、窓からの下田港が一望です。海上保安庁の船が停泊中でした。
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オールインクルーシブで飲みほ~だし、食事に贅沢は言わないので十分です。
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温泉は弱アルカリ性の単純泉で露天だけ源泉かけ流しなんですよ。
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この日は思わぬ仏像の旅ができてとても有意義な1日でした。
つづく