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①逮捕前夜~その瞬間

繁忙期の年末営業も意識する11月の始まり。
浅野はデリヘル贅沢なひと時の現場の責任者として働いていました。

今年はずっと店長を任せていた部下の田島さんが新規事業で愛知でシーシャバーを出店することになったので6月から数年ぶりに店長職をやることに。
感覚を思い出しながら、運営すること数ヵ月。期待したくなる新入社員の入社も決まり、ここから繁忙期に向かってお店盛り上げていきたいなってマンツーマンで研修をしていました。

その日は19時の面接からスタート。
社員研修やキャストコンサルでいつものごとくしゃべり倒し、口がカラカラになりながら、明日も研修頑張ろーぜなんて最後の台詞wを残して陽気に帰路に着きました。

少し気になったのは、その日スタージョブというスカウト会社に関わりがある人から伝言があったこと。内容は先日スタージョブの従業員に家宅捜査があって(その事実は既に知っていた)、その際令状に浅野の職業安定法違反の被疑事件で家宅捜索をするとの記載があったと知りました。

なんだそれ。浅野は3年前に自分が運営しているスカウト会社を廃業していたので、全く運営に関わっていない会社に自分の名前で家宅捜索が入る意味がにわかには理解できませんでした。当時、一緒にスカウト会社を運営していて現在デリヘルで一緒に仕事をしている後輩の黒瀬が心配していたのですが「流石に少し調べれば関係ないことは分かるだろうし。悪い冗談でしょ」そんな感じであまりシリアスに受け止めていませんでした。

逮捕の朝

心地良い疲労感で帰宅。
その日はウイスキーをそこそこな量飲みながら好きな映画を見ていました。

朝9時半位かな。自宅のインターフォンで間が覚めました。
軽くソファーでまどろんでいた浅野は注文していた佐川急便のアロマキャンドルが届いたのかな。眠すぎるんですけど。そんな感じ。

「戸塚署です!!」
マジかよぉぉーーぉぁーーーーーーーーーぅwww

眠気と何より高濃度のアルコールで頭が回らない。
冷静にならないと。現実を受け入れて、切り替えなきゃ。
水を飲んでタバコを吸いながら部屋のインターフォンが鳴るのを待つ。

部屋を開けると警察が5名待機。
令状の内容を読みだす。
職業安定法違反の被疑事件で逮捕とのこと。
高圧的で頑固そうな白髪刑事が主導。
この人がこの後ひたすら強引で、証拠より自分の作ったストーリー優先で威圧的な取り調べをするN巡査部長(班長)でした。
(最終、浅野が起訴されずに勾留満期前に釈放されて謝罪なし。彼の判断でこっちは実名報道、マスコミ呼ばれて手錠付きの写真と映像晒されているので彼の名前位出してもいいかなと思ったりもしたのですが、大人の対応だなぁ。偉いぞ。浅野ことさのけい。笑)

家宅捜索を始めるとのこと。
頭フル回転で対応できないコンディション 。
マシな状態にするためにお酒を抜くためにガサ(家宅捜索)中、水飲みながら少し時間を使うことに決めました。

「弁護士に連絡していいですか?」
「ダメだっ!!」
「いや。証拠隠滅するわけじゃないので、いいでしょ」
「ダメだっ!!」
「そういう権利があると思うのですが。自分の携帯使うなってことなら、刑事さんの電話使わせてください。仕事にも響くので。横で聞いていて構わないので」
「ダメだっつってんだろぉーー!!」
完全に治外法権になっていることを理解。
お酒抜かないと、この人とのやり取りタフになりそうだなって。
スマホを押収され、部屋中ひっくり返しながらガサ入れが続く。

「気持ち悪いのと、お酒抜きたいのでお茶飲みますね」
「ダメだっ!!」
「証拠隠滅もしないし、横で見てても構わないのでお水飲みます」
もう話しても無理だと悟って、蛇口をひねり勝手に水を飲みだす浅野。
あれ、水ならいいんだ。笑

よく見ると、N班長、めちゃめちゃキメて来てる。
昨日、床屋にいったことが伝わってくるエッジの効いた刈り上げ。
平日には使わないのではと推定される肉厚シルクのカッコいいネクタイ。
えっ。これめちゃめちゃテレビ報道ありそうなやつじゃんwww
ゴーーーーーーン(合掌)

非常用エレベーターから駐車場へのルートで手錠を付けて誘導される。
マンションの構造バッチリ把握していて車まで連れていかれる。
どこにメディア配置するか調べてるんだろうなと。
N班長のハツラツとした表情とテンション高さを見てテレビ報道を確信する…

手錠つけられて刑事5人に前、横囲まれて警察署まで護送。
全然お酒が抜けていません…笑

取り調べ

まずは指紋採取や撮影、身長、体重測定。
デリヘルで言うとプロフィール登録的なやつ。笑

ここから20時位に留置所に連れていかれるまで取り調べ。
前日徹夜なので最終おそらく30時間位起きていたかと。
取り調べの休憩はトイレ以外なかったため、ゴリゴリの取り調べで心を折りに来ているなと解釈。

長時間の取り調べは何度か受けたことがあるのですが、基本は休憩を入れる規則になっていることは知っている。
めげて休憩欲しがっているとか思われるのも嫌だし、睡眠不足は時間経過とともにきつくなるのでこれがN班長のスタイルだなと受け入れてそのまま対応。

取り調べスタート。
この時点でもどうやって起訴するつもりなのかわからなかったので、捜査状況の把握とお酒を抜くことが最優先事項と認識する。

浅野の供述証拠を作るのにも関わらず決めてるストーリーありきで調書を作ろうとしている雰囲気。書きたいことが決まっているわけだなと。

例えば事実だったとしても、恣意的に偏ったストーリーに沿う証拠のみを集めて書き出せばそれっぽく見えちゃうし、反面の証拠を出していくことが肝になってくるなと感じる。

恐怖じゃ折れない論理的で面倒な人と思ってもらえると、後の取り調べがやりやすくなると考えて、細かく調書の言葉や言い回しについて指摘していく。

とにかく浅野を現役スカウト会社の代表にしたいことは伝わってきた。

例えば、以前摘発された会社の登記が残っているから、現役スカウト会社の代表だというのが刑事の主張。しれーっと勝手にデリヘルの会社ではなく、その会社の代表と供述調書の職業を記載してくる。都度確認、違うと感じたことは必ず否定して理由を説明する。

担当税理士に確認してもらえば分かるが、スカウト会社は既に閉めていて、その会社から当時の社員含めて誰一人給与は受け取ってない。
稼働実態もないし、税理士とのやりとりで廃業手続きを進めてほしいというやりとりも残っている。
何年も給与を取っていない会社の代表扱いされるのはおかしいし。そのやり取りの履歴や私の給与の受け取りの証拠をこちらから提出します。
だからスカウト会社の代表で職業記載するのはやめてください。
私はそういった供述はしていません。

お酒を抜くために水をがぶ飲みし続けながら、ひたすらこういったやり取りを続ける。

強引で威圧的なその日の取り調べのクライマックスは、
「供述調書は私の供述を書くものですよね。前提として前回摘発された時の担当検事に説明された話は絶対記載してください」と言うも取り調べ担当の刑事さんは都度N班長に確認。
「書けません。出来ない」
このやり取りが3回程繰り返される。
「じゃあ、この取り調べのやり方に納得出来ないので今日の調書全てにサインできません。もう終わりましょ」

そこでN班長登場、
今日一番の怒号で
「それは書けない。出来ないって言ってんだろぉ!!」
意識して真顔で、
「私の供述調書です。勝手に作られるならサインはしません。録音して取り調べしてくれませんか?」
「出来ないっ!!」
「理由を説明してくれませんか?」
「出来ないって言ってんだろぉ!!」
すげーなこの人。
「じゃあ、今日の取り調べ全て不成立ですね。サインしないので終わりにして下さい」

その後、10分程放置されて最終的には全部書いてくれました。
なんだったんだろう。あの出来ない出来ない発言の意味は、今もわかりません。ようやくお酒が抜けてくる。笑

体力的にも折りにきてたけど初日はなんとかクリア。
取り調べ中にいつもお世話になったいるグラディアトル法律事務所に連絡を入れてもらったので、留置所の接見室で弁護士打ち合わせ。
長くお付き合いさせてもらってますが、動きが早くて
罪状や、警察の提示してきた証拠の説明。
自分の対応を話し、アドバイスをいただく。
仕事やプライベート連絡をお願いする。

途中検診で体温が右・左脇で計4回測定して37度超だったのからか(刑事さんはとにかく37度超えてほしくなかったみたいで「右と左だと結構違うからね」とか言いながらひたすらリテイク依頼された。笑)
一人部屋に通される。戸塚署は新人独居優先という噂も。
他の人に気を遣わないで済むのは助かる。

幅の狭い薄く固い布団を敷いて、警察と提携している病院で処方してもらった睡眠導入剤をもらって、体力回復に努める。(最初の病院についてはあとでお役立ちコラムで書こうかな)

病院への道中、和むために刑事さんが話しかけてくれたが 笑顔で「マンション夜景きれいでしょ、家賃いくら?」(心の中では、報道してくれたおかげさまで、もう二度と審査の厳しい三〇不動産の物件には住めません。苦笑) シュールだなと。たくさん逮捕しなきゃだから、容疑者の気持ち考えることは重荷なんだろーなw

そんなことを思いながら深い眠りつきました。




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