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不思議なハサミ、金、消費税還付
お坊さんだけが持つことが許されるハサミがある。
知ってた?
そのハサミを使うと除霊が簡単にできるんだ。
チョッキン
何かを切る真似をするだけで、除霊できるんだ。
すごいでしょ?
ただね、そのハサミを使っていると、人体に影響があるんだ。
そのハサミを使うたびに、髪の毛が薄くなっていくんだ。
ハゲていくんだね。
だから、お坊さんって、髪の毛がない人が多いんだよ。
知ってた?
このことは、みんなには内緒だよ。
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武蔵小杉という町に、トキンという人がいます。
トキンの本業は、お寺の住職です。お坊さんです。
トキンはお寺の仕事をしているかたわら、不動産経営もしています。
居住用マンションの賃貸業です。
トキンは毎年どんどん居住用マンションを買っています。
最近も3件買いました。
トキンが物件を買うときのルールがあります。
幽霊が出る物件であることです。
幽霊が出る物件は安く売りに出ているからです。
心霊物件を安く買って、除霊して、居住用として貸し出しています。
コスパ最高です。
お坊さんが除霊してくれているなら安心だと言うことで、心霊物件だったにもかかわらず借りる人が沢山います。
お坊さんにしかできない見事な発想です。
もちろん除霊は「あのハサミ」を使っています。
簡単に除霊できますから。
トキンはハサミを使いすぎて、とうの昔に髪の毛がなくなってしまいました。
もはや気にもなりません。
あるとき、とんち好きなお坊さんに会いました。
「やぁトキンさん、こんにちは。相変わらず居住用マンションを買い漁っているようだね。」
とんち好きなお坊さんが、ニコニコとしながら話しかけてきました。
「いえいえ、少しだけしか買ってないですよ、一休さん」
トキンは、手を顔の前で振りながら、返事をしました。
「またまた、ご謙遜を。ところでこんな話は聞いたことありますか…」
一休さんはこんな話を始めました。
・一休さんが持っている金をトキンが買う。
・トキンが買った金を一休さんが買い戻す。
・これを何回か繰り返す。
・そうするとあら不思議、確定申告のときに、消費税を還付受けることができる
という話だ。
トキンは、また一休さんのトンチ話が始まったと思いました。
「ささ、金塊をお買い上げください。すぐに買い戻しますから。」
今、手元に現金がないという口実で断ろうとすると、一休さんはキャッシュレス決済をしましょうと提案してきました。
「坊主間決済ができるtemple payで送金しましょう!それであれば現金を用意する必要もないし、何より履歴が残ります!!」
一休さんの圧に負けて、トキンは仕方なくtemple payで金塊を買うことにした。
金塊を買っても、すぐ買い戻してくれるなら損はないはず…。
temple payは決済手数料は無料。
金塊を買ったり売ったりを100回は行ったでしょうか。。
「そろそろいいでしょう。ありがとうございました。これで確定申告してください。きっと還付金が手に入るはずですよ…。あっ最後にこの金塊はわたしが持って帰っていいですよね?」
「えぇそれで結構ですよ。」
では、最後の取引を、と一休さんは言って、temple payで決済をしました。
その後、トキンは確定申告をしてみました。
なんと一休さんの言う通り、還付金が手に入るではないですか!!
「一休さんの言うことは本当だったんだ。今まで一度だって還付されたことなかったのに!!」
トキンは思わず叫んでしまいました。
しばらく経ってまた一休さんに会いました。
「おっ、トキンさんではないですか。またマンション買われたんですってね。」
「はい、そうなんです。あの…この前の金塊はまだお持ちですか?」
「えぇ持ってますよ!また、やりますか?」
「ぜひお願いします。」
またトキンと一休さんは100回くらい売買を繰り返しました。
取引の最後に一休さんはいいました。
「最後にこの金塊はどうしましょう?」
「一休さん、金塊は私が持っていてもいいですか?」
「もちろんですよ、トキンさん。」
トキンは金塊をもらって帰ることにしました。
これで一休さんに会わなくても、還付金をもらうことができるな…。
そう思いながら、金塊を懐にしまいました。
ある日、トキンは(消費税率8%の)新聞を読んでいると、
「税制改正。金を売っても消費税は返ってこなくなる」
という記事を目にしました。
これは大変だ。早く一休さんに会って、金塊を換金しようとトキンは考えました。
トキンは早速、町に出て一休さんを探しました。
しかし、姿を見つけることができません。
翌日もその翌日も探しましたが、いっこうに見つかりません。
トキンは探し疲れたので、公園のベンチで一休みすることにしました。
あーあ、一休さんどこ行ったんだろうなと思いながら、トキンは鞄から金塊を取り出して、ベンチの前の机に置きました。
なんだか金塊を見ていると憎らしくなり、「あのハサミ」を取り出して、チョッキンと除霊をしました。
もちろん、なにも起きません。
なにも起きないのことにさらに腹立たしくなり、トキンは立ち上がり、持っているハサミを金塊に投げつけました。
カーンと大きな音が鳴りました。
「ん…」
トキンは金塊に変化が起きていることに気がつきました。
金塊の表面がハゲたのです。中から黒いものが見えています。
一休さんから買った金塊は、鉄の塊を鍍金(めっき・トキン)で加工しただけのものでした。
そう、トキンは税金に囚われ過ぎたため、まんまとだまされて、お金を失ったのでした。