【雑記#2】シャニアニ2nd Season 第一章の所感
シャニメ2nd Season 第一章の所感
後述する通り俺はシャニメ1st Seasonにあまり好意的ではなく、また劇場先行公開とテレビ放送の間隔が1st Seasonの頃より短いこともあり「本放送を待てばよいか……」と完全に高を括っていたのだが、初日鑑賞勢の皆が掌を返したように絶賛している様子を傍目に「まぁそりゃ公開初日に見に行くような熱心な人間は何出されても絶賛するだろ」と斜に構えつつ、けれど流石に気になりすぎた。そう近くもない映画館までまんまと足を運んでしまった
……順番が前後するが、まずこれだけ伝えさせてほしい。283PRODUCTION HalloweenParty「Happy Surprise Trick!」が最高に楽しかった!!!マジで!!!!
見てない奴はちょっと生物として無理がある。厳しいって。今すぐ見に行け!!!!!走れ!!!!!!
なによりも4話の衝撃が大きかった。全くの私情となるが、まず「俺は声優さんのライブにあまり興味を持てない人間である」という前提を踏まえて、人生で初めてこんなにワクワクする「シャニマスのライブ」を、シャニメ4話で、浴びれたんだ!!!
そんな俺がシャニメ1期を受け入れ難かったなによりの理由は11話~12話のライブシーンにあった。「あれは1st LIVEの再現で……」「実はシャニメ全体を通して初年度の空気感を追体験出来るようになっていて……」とか言われても感動の押し売りとしか思えなかった。シャニメが悪いというより俺の捻くれた性格が悪かった。この時点でようやく「これは本当に俺に向けたアニメじゃないんだな」ということに気が付いた
2nd Seasonの4話で開演された「283PRODUCTION HalloweenParty『Happy Surprise Trick!』」は何もかも1期と話が違った。既に聞き潰した初期曲がまた擦られるわけでもなく、事前知識がないと最大限楽しめないでもないのに、自分の愛してやまないアイドルたちが歌って、踊って、MCをしている。こんなに幸せなことがあるか?けど4話には全てがあった。Poison Berry Daughtersのライブシーンはなかった。
俺が長年祈り続けてきた「シャニマスは早くMRライブをやってくれ」という願いが突如としてほぼ実現してしまった。だから俺たちは、光について、アニメ アイドルマスターシャイニーカラーズ 2nd Season 第1章について語らなければならない
2nd Season – 1話
冒頭数分で1期の軌跡を振り返っていき、そんな「今までの283プロ」のリズムに風穴を開けるが如く現れた新星ストレイライトの登場から幕は上がる
283プロにとっての彼女たちの異質さを言葉を介さずに伝えていく表現が相変わらず上手くて、特にヘリポートに向かう場面、物怖じしない芹沢あさひの軽やかな足取りに、黛冬優子・和泉愛依の大地にその存在を轟かせるが如く重々しい足並みが続いていく演出で、観客に「なにかがはじまる」予感だけを刻みつけて舞台が再び283プロに切り替わるシーンは、もうそれだけで我々を舞台の中に引き込むのに充分足るものだった
場面は飛んで、櫻木真乃と芹沢あさひの邂逅のシーンの話に移ろう
ここで「どんなアイドルの在り方を目指すのか」という問題に焦点があたり始める。芹沢あさひの極めて純粋な疑問から再び問われたそれは既に2~3話の内容にも関わっていたため、恐らくは2nd Seasonの本筋となることが伺える。最終的に真乃はどういった答えを出すのか、制作陣の考えた解釈を知れるのがすごく楽しみだ
演出面に関して、夕暮れの空気感がフィルムスコアリングを通して伝わってきて、またあさひの顔が逆光を受けている表現なんかも合わさり場面全体の熱を帯びた雰囲気が丁寧に表されていたと思う
1期であまり感じることのなかったシーン毎の切り替え(メリハリ)がかなり意識されていると感じたし、それだけで見応えのあるアニメになっていた。あさひのオーバーなまでの躍動も「芹沢あさひ」という人間が目一杯表現されており逐一楽しめた
いよいよ1話のトリとなるWandering Dream Chaserライブシーンの話に入ろう。まず、素人目から見ても1期より演出も魅せ方もパワーアップしていた!
特に画像のシーン、衣装やエクステだけネオンで光る演出がこの曲が本来纏っていた「見る者を凌駕するようなStraylightの力強さ」を最大限に強めていて、自分にとって聞き慣れた曲に見慣れた衣装・振り付けであるのにも関わらず作中のモブさながらに圧巻されたのをよく覚えている
また少し細かい部分に目を向けると、ライブシーン中に彼女たちはヘッドセットを装着していないことに気付く。更にヘリの音もMVに紛れ込んでいないので、恐らくこれは「ダンスと音源は別に収録して合成している」ことを示している表現だと思われる。そりゃあ楽曲MVなので当然といえば当然だが……。相変わらず細部の凝りようには驚かされるばかりだ
総括しよう。全体の流れを踏まえると1話はいわゆる溜め回だったように思えるが、飽きさせない工夫や細部への拘りは明らかに上手くなっていた。「このクオリティで1期が作れていたら……」など身勝手な未練は尽きないが、とにかくこの時点で俺は2nd Seasonへの不安を忘れ去っていた、そんな内容だった
気になった点
・俺の大好きなシャニPは1話~4話を通しても相変わらず存在感が無い
・1話か2話かは覚えていないが、Wandering Dream Chaserが何度も繰り返し流れる場面があり冗長気味に感じた。全体のテンポ感も多少は改善されているものの、手放しに褒められる程ではない
・原作の時系列を踏まえると「ストレイライトは各々ソロで活動して少し後にユニットメンバーと合流」という流れだったはずなので、アニメの「283プロに新たなユニットが加わる→どんなユニットなんだろう?」というさも初めてメンバーの存在を知ったかのような皆の反応とは一致しないように感じた
・OPの「プリズムフレア」はユニットらしさや283らしさが存分に現れる映像も、宙へ上昇していくアイドルたちに共鳴して勢いが加速していくサビや曲自体も全部最高に良かったのに、どうして一回しか流さないんだ
・OP歌唱メンバーや映像にノクチルが居ない問題があるが、これは「第二章のノクチルが出てくる回までだけで良いからシャニメ見てみて!」をさせるためなんじゃないかと思う。それくらい彼女らは訴求力を持っているだろうし
・相変わらずタイトルフォントがダサい
2nd Season – 2話
この回はゲーム内に実装され名作として名高いイベントシナリオ「Stray light.run()(シャニソン / WE WILL BE)」に準拠したストーリーであった。大事な結成当初の物語に当たるため「やるだろうな」という予想は多かったが、内容を見知っている既プレイユーザーでも想定以上に楽しめる構成となっていたと思う
長尺のシナリオを端折って再現するために少なからず存在する改変部分についても、個人的には文句の付けようが無い出来だった。1st Seasonで数話にかけて真乃が考え倦ねていた「どうして私がセンターなのか」という問いに対して、この回では「ストレイライトのセンターは誰なのか」という強烈な対比を含ませつつ、283プロの初期ユニットではあまり見られなかった明確な対立意識や個性・属性の不揃いさ、そして新たな壁に衝突する度に強固なものとなる結束感――総じて「ストレイライトらしさ」がものの数十分の間に見事に表現されていた
それでいて和泉愛依があさひと冬優子を繋げる「真ん中」であることも端々に表現されている。……なにぶん原作が秀逸なだけに省かれた名台詞などはいくつもあるが、逆にあれ以上要素を詰め込んでしまうと「言わせたい台詞だけを不自然に言わせる文脈軽視のアニメ」になり得ないだろう。改変部分に納得感もあったし、総じて俺がシャニメ1st Seasonに求めていた「シャニマスに興味がある人間に満を持して勧められるアニメ」だったと言って差し支えない出来だった!
(あと、冒頭冬優子対峙時のシャニPがひたすらかわいかった。この回はシャニPの筆跡らしき「完パケ」という字も見れて満足だった)
気になった点
・自分は気が付かなかったが、どうやらはづきさんが居る場面でも「ふゆモード」ではなく本性の「冬優子」になっているシーンが存在するらしい。原作のゲームではプロデューサーとユニットメンバー以外に本性を曝け出している描写は無かったはずなので、1期の「大崎家一軒家じゃなくタワマン疑惑」と同様に単なるミスな気がする(あれがミスじゃなさそうならご指摘願いたい)
・和泉愛依の大事な要素であり2面性をモチーフとしたストレイライトを語る上で欠かせない「過去のトラウマが起因して舞台上では本性が出せないため、アイドルとしての和泉愛依はミステリアス・クールキャラとして活動している」という設定が完全に欠落していた
「1話という限られた制限の中で、更に要素を付け加えると広がった風呂敷がアニメ内で畳めなくなる」という理由もありそうだし、省いた理由は納得の圏内だと思う。また、この問題に関してはあさひの「(冬優子ちゃんみたいに)かわいいアイドルを目指せばいいっす」(……どんなニュアンスだったか全く覚えていない)という台詞にも関わってくるので、いずれアニメ内で説明しそうな気もする
・改変部分に関しては全く異議が無いが、俺の担当であることもあり、冬優子の「アイドルが戦うってのがどういうことか、見せてやる」という台詞は少しだけ欲しかった。けれどアニメの前後文脈的には無理矢理その台詞を捩じ込むとその部分だけ不自然に浮く可能性も大いにあるし、なにより2話を通して冬優子が目立ちすぎている感があるので削ったものだと受け取った。もし本当にそうなら勇気ある名采配だと思う
改変部分に納得がいかなければ既プレイユーザーが原作や公式コミカライズに誘導してやれば良いだけなので文句は全く無い!
・着替えシーンはマジでいらない
・ED
2nd Season – 3話
3話はいよいよ来たるハロウィンライブに向けた準備+越境回。「各チームで異なる展開が続く」という収集のつきにくい構成にも関わらず1話の中でいくつも見どころが用意されており、また全体的なテンポ感も見直されていたために1期の反省を強く感じた回だ。チーム毎にそれぞれ振り返っていこう
・OPEN the New World組(灯織、夏葉、恋鐘、あさひ)
この組み合わせを見て真っ先に思ったのが「灯織の心労がすごそう」ということだったし、実際他のチームがステージの演出を考えたりお茶を飲みながら会話を楽しんでいる間、このチームはそんなことに目もくれずにひたすらストイックにレッスンに励んでいた
そんな中で年長の夏葉が灯織を気遣う場面は「明るい部屋」の聖歌隊練習を思い出したし、その結果の4話で披露された本番のパフォーマンスには目を見張るものがあった。(個人的には)バランスが良い……感じはしなかったが、結果的に各々が良い刺激を受けていそうだ。次は是非小糸と美琴も入れてほしい
・Midnight parade!組(摩美々、咲耶、凛世、甜花、愛依)
咲耶と摩美々はアンティーカの中でも特に絡みの多い(と思われる)組み合わせで、咲耶と凛世は「線たちの12月」で繋がりがあったし、その他にも摩美々と凛世はチームまりあ同士で、甜花は田中軍団(非公式)のメンバー、凛世と愛依のをとめ条約に、甜花と愛依のかわぶた同盟など……それぞれの共通項は非常に多いが、こうして一堂に集うと「どういうメンツだ……?」となったチーム。よく考えれば摩美々・咲耶・愛依で283プロ18歳組でもある
改めて見ても各々がかなり個性的で、かつクセの塊のような設定と衣装が合わさることによりなんかすごいことになっているが、歌詞や台本を練っていく過程では各々が自然体で調和していたのが印象的だった。今回の越境チームの中では一番波長が通じ合っているチームだと感じたし、心做しか咲耶がずっと嬉しそうにソワソワしてるもの良かった
パフォーマンスの「この世は見えないものが……」「光と闇」のくだりでやけに「線たちの12月」や「バイ・スパイラル」を感じたが踏襲されているのだろうか
・CANDY UNIVERSE組(めぐる、結華、果穂、樹里、甘奈)
ド直球に元気そうなメンツが揃っているし、ハロウィンパーティーが終わっても定期的に遊んだりしそう、かつ皆誰かの不調には鋭く気付くことが出来るタイプなので一番手間が掛からなさそうなチーム……には違いないのだが、皆フッ軽でお喋りなため少しだけ樹里が押され気味になっているのが面白かった
「小学生の果穂を支える頼れるお姉さんたち」という放クラ同様の至極わかりやすい構図でもあり話を動かしやすかったのだろうか、「小道具にかぼちゃを使いたい」→「おばけカボチャの子供です〜〜!!」→商店街のアドバルーンを見てステージ演出を着想、のくだりはベタなくらい”アニメ”をやっていて面白かった。甜花が甘奈に秘密を隠すシーンで動揺を隠しきれない甘奈の表情や間も一生味がした
・ねぇ、ねぇ、ねぇ組(真乃、霧子、智代子、千雪、冬優子)
なんというか、冬優子にとっての理想みたいな布陣だ、皆素直に「ふゆ」って呼んでくれるし。直前にバチバチやりあってるストレイ回があったので温度差に少し笑ってしまった。言わずもがなの真乃・霧子に加えて、無類の安定感を誇る智代子と283プロ屈指の胆力を持つ千雪(ただしこの時点では恐らく”遠慮”しているが)が揃い隙のないチームとなっている
真乃の思い悩みを爆速で察した智代子と千雪が暖かく寄り添おうとしたり、それに応えるように真乃が自作のアイデア案を用意してきたり、レッスンの休憩時に霧子と冬優子がタオルやドリンクを差し入れたり……言葉を介さずとも互いに歩み寄っていく描写がすごくシャニマスらしかったし、見事だなと思った。あとチェインのくだりで千雪が顔文字を使ってたのは割と衝撃的だった
気になった点
・前述の通り、1期の反省を踏まえての改善点は多く見受けられるが、やはり主題が掴みづらいし各々のチームがやっていること自体にも物語性はあまり見出だせない
例えば「ねぇ、ねぇ、ねぇ組」の展開は、要約すると「また真乃が悩んで、他のチームメンバーがそれを支える」程度の希薄な物語しか描かれていない。それが4話での圧巻のパフォーマンスに転じたとは思えないし、各々のアイドルの個性を把握しきれていない新規が果たして物語重視ではない3話を楽しめたかどうかは甚だ疑問である
このように、3話は2nd Season第一章の中では一番「シャニアニらしさ」が悪目立ちしていた回だと思う
・「きよしこの夜、プレゼン・フォー・ユー!〜お客様の中にサンタはいらっしゃいますかSP〜」に引き続いて、またもやノクチルが越境チーム分けに参加していないことが少し気になった
けれど、彼女たちの閉塞感を示す上で欠かせない要素である「他のユニットと積極的に関わるわけでもなく、芸能界からも浮いていた」という初期のノクチル特有の描写を第二章以降で描いていくためにも今回はノクチル加入前に越境回をやった、という事情があるなら作為的な気もする
2nd Season – 4話
なんとも締まらないが、4話の感想はこの項の冒頭に述べたことが全てである。とにかく楽しかったしライブのことは何も覚えていない。人間は熱に浮かされた直後ってそうなるものだろう
細かい部分で付け加えると、開幕のMCはアルストが務めていたが、あれはアルスト3人の歌唱パートがセトリ後半に集中していたからだと気付いた時は気持ちよかった。「ねぇ、ねぇ、ねぇ」のパフォーマンスで配っていたお菓子がトロッコに積まれた分ほとんど減ってないのも面白かった。現地に行って大玉も転がしたかった。終演時の灯織が天皇みたいな手の振り方をしてて面白かった
とにかく俺が見たかった「シャニマスのライブ」が詰まっていた
気になった点
・Poison Berry Daughtersのライブ映像が無い(円盤特典?)
シャニメ 2nd Seasonの個人的総評
4話が俺にとって思い入れが深すぎた影響もあり若干の補正も含んだ総評だが、それにしたってシャニメ2nd Season 第一章は面白かった。1期と比べて物語がその場の空気感に頼りきりになっておらず、また細部の演出もより洗練されていたことが何よりも大きな要因だった思う
シャニマスはEnza版にしろシャニソンにしろトワコレ・マイコレ・パラコレの仕様にしろフェスツアーズにしろマッチライブにしろ全てにおいてスロースターター(悪く言えば初動の悪印象がずっと付き纏うようなムーブを繰り返している)なのは重々承知しているので、もう一周回って「いつも通りのシャニマスだな……」とシャニメ1期を少しは愛せるようになった気すらしている。いや最初から2期のクオリティで出してくれよ。
少し残念だったのが、予告の内容から第二章では原作ゲームで既に実装されているシナリオの再構築をやることが判明してしまったことだ
確かに「Straylight.run()」や「天塵」は彼女たちを語る上で避けては通れない物語なのでアニメ化に組み込んだことに異議もないが、冒頭に述べた通り俺はシャニマスのライターが書いたアニメオリジナルのシナリオが見たかったし、せっかくアニメ化するのだから「『YOUR/MY Love letter』や『セヴン#ス』に次ぐくらいのクオリティで新たなシナリオを作りまくってやるぜ」くらいの気概が見たかった
第二章でやるであろう「L’Antica 283プロダクション ファン感謝祭編」も「天塵」も既にシャニソンで擦られた内容だし、「薄桃色にこんがらがって」もほぼ確実にシャニソンに追加されるあろう内容なので、実際にアニメ化が上手くいったとすれど、それが元のシナリオの面白さなのかアニメの面白さなのか分別が付かない
そういう意味で、シャニメ2期は”逃げ”の選択をしたなとも思えてしまうし、「既存コミュの宣伝はオタクが勝手にやるからシャニメはもっと新しい物語を描いて!」と言いたくなるが……厄介で身勝手すぎる感情とも自覚があるのでこれ以上の言及は控える。
第二章の内容が以上の通りだとすると、第三章はまずイルミネ回と放クラ回をやり、残った2話で全国ツアーの話をするのだろうか。イルミネ回は「Star n dew by me」なら1期のCatch the shiny tailと繋がりがあるし、放クラ回は「階段の先の君へ」なら1期と同じく商店街繋がりで綺麗な気もするが果たして。
天塵に関してはノクチルの結成秘話まで加えて描かなければならないため、どう考えても尺が足りない。作中の季節の都合を考慮してもラストの花火シーンは省く、もしくはEDに少し映る程度に収める可能性がありそうだ
……なんにせよ俺は今アニメ アイドルマスターシャイニーカラーズ 2nd Seasonという新たな光を信じている。この光がどうか多くの人々に届くことを、願い、祈っている
補足 - シャニメ 1st Seasonの個人的総評
自分がシャイニーカラーズのアニメ化に期待していたことはただ一点、「新規がゲームに手を出してみる導線になってくれるアニメ」だった。その上で欲を言えばシャニマスのライターが描いたアニメオリジナルのシナリオを見たかった
そんな期待を胸に劇場へ足を運び、ただ一つ感じたことは「これは俺の方向を向いたアニメではない」ということだった
……先に「なんとなくアニメ1期の評判だけ知っている」という方の誤解を解いておくと、作品のクオリティ自体が評価の争点になっているわけではない
懸念の大きかった3DCGアニメーションに関しては実際映画館で鑑賞して強い違和感や解釈不一致を覚える出来では無かったし、むしろアイドルの動きが細部まで忠実に拘り抜かれているのは紛れもなく事実だ。間違いなく制作の熱意や意図は詰め込まれているのだ
随所の表情や仕草にまで彼女たちの息吹が宿っているのはこのアニメを語る上で欠かせない美点の1つだろう。自分も感銘を受けた部分はいくつかあり、例えばそれは11話のL’Anticaによる幻惑SILHOUETTE歌唱シーンだ
恋鐘が「壊せBias!」と声を張り上げるシーン(21:03)で一瞬後ろの舞台照明と彼女の手が重なり、その光を掴むように繊細に交差していくシーンは画としてとても美しく、強く印象に残っている
その結果他の部分がおざなりになり、毒にも薬にもならないような薄味のストーリーが出来上がったことも事実だと思う。実際、自分が物語で高く評価した部分は7話しか無かった(そりゃ自分はシャニマスが大好きなので1期も全体を通して最低限は楽しめたが……)
それは、10話の合宿回が「主題が明示されているのにも関わらずなんとなく皆で合同レッスンしてカレー作って花火して、唐突にプロデューサーが『色とりどりの光――シャイニーカラーズ』とポエムをキメながら夜空を見上げてEDに突入する」抽象・感覚的すぎる内容になっていることなんかが象徴だと思う
確かに原作(Enza版)が重視していた雰囲気や空気感の演出はアニメにおいても強く意識されている。例えば11話~12話では「空気が震えるようなライブ特有の臨場感」を見事に映像化していて素晴らしいとさえ思った
問題はそれにストーリーが頼りきりになりすぎているところだ。ドキュメンタリー的な映像を目指していることは端々から伝わってきたが、別にその工夫や細部のこだわりが直接的な面白さに寄与しているとは到底思えなかった。そして直接的な面白さを求める俺とはつくづく相性が合わなかった
他にも制作の粗さが目立つ部分は多かった。……早く2nd Seasonがとても良かったという話をしたいので以下に簡潔にまとめるが、そういういくつかの綻びが積み重なって「もうシャニメは馬鹿にしていい」という風潮が出来上がったのだと思う
そしてその大半は作品を捉える上で絶対に見過ごせない「真っ当な批判」だとも思う
シャニメ1期の個人的不満点
・何より致命的だったのが設定や要素の説明不足で、例えば「小宮果穂は小学6年生である」という何よりもパーソナリティに関連する情報を「第1話に数秒だけ映る『果穂がランドセルを背負っているシーン』」だけで説明しようとしている
また、3話はいきなりアルストが引っ越し蕎麦を食べるシーンから始まり、突然千雪が荷解きをするシーンが挟まったりもしているが、「283プロの寮に引っ越してきた」という説明が省かれているのでその事情を知らない人には「この千雪って人が急にどこかに引っ越してきた」ことしか伝わらない(どちらも詳しく検証出来ているわけではないので、単なる自分の見当違いならご指摘を願いたい)
これによってストーリーの是非に関わらず、新規に時間を割いてもらってまで勧めたいとは思えない作品になっている
・シャニマスにはどのユニットにも「あれ、このユニット一癖も二癖もあるぞ」と思わされる物語がいくつも存在するのだから、1期ではそういう見せ場を各ユニットに与えて新規を引き付けてほしかった。1期の内容が原作ゲームの導線にもなっているとは思えなかった
・(3話に関して)「1期は『ユニット回を一通り終わらせた後にWING編を持ってくる』という構成である都合上、3話では(アルストが既に売れた世界線=WING後の話である)『薄桃色にこんがらがって』や『アンカーボルトソング』の内容を組み込めない」とかそういう事情は伝わるが、なら「283プロダクション ファン感謝祭編」のエッセンスをもっと詰め込むくらいは出来ただろと思ってしまうほど平坦な3話
・「4話まで見て!」と言われるほど4話は相対的に起伏ある物語になっているが、正直アニメ映えしまくるユニットである放クラにはかなり身勝手に期待していたので「もっと場を掻き乱せただろ」と思ってしまった。そんな4話
・後述する2nd Season2話で短尺にも関わらずあんなに綺麗に「Straylight run()」を描けたのだから、1期の数話にわたって主題となっていた「何故櫻木真乃がセンターなのか」という話は無理に「Catch the shiny tail」に寄せずに話数をかけた分もっともっと深掘りしてほしかった。せっかくの映像化なのだから新たな解釈を提示するくらいの勢いがほしかった
・(11話~12話に関して)アイドルアニメにおいて最高潮の見せ場となるライブシーンだが、そもそも内容自体に起伏が薄いため一人一人に文脈があまり乗ってない。にも関わらず冗長な間の取り方で何度も「今までの全てがこの日に繋がっていた感」を出してきており作品全体が薄っぺらく映ってしまっている
・本放送の度にシャニソンに追加実装される「No Make」というコミュを読んで初めてアニメの内容が補完される構成となっているが、そもそも新規が面白いかも分からないコンテンツのゲームをダウンロードして律儀にコミュを読むわけがなさすぎる。にも関わらずそのコミュ内容をYoutubeに公開すらしない
・シャニP(BD特典では天井努も)の顔公開や高宮監督の存在など、制作の「オタクはこれが好きなんだろ分かってるぜ感」は異常に伝わってくる。なら内容を伴わせてほしい
・各話タイトルのフォントがダサい。EDは余韻を味わうことに重点を置いているが、そもそも余韻を感じるほど濃い内容ではない
・2nd Seasonでは第一章(1~4話)の時点で新曲が6曲も追加されているが、対して1st Seasonでは全話を通しても計2曲(ツバサグラビティ、想像のつばさ)しか追加されていない。これに関して「『1期は初年度の空気感や1st Liveの再現にこだわっているので、当時存在しなかった楽曲は極力扱わないようにしたい』という企画理念のもとに新曲を増やさない判断をしたのでは?」という説もあるが、それも作品の面白さに寄与しているとは思えない
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