公式大会は誰のもの?
題名からして痛いですけど。
さて、先日H2さんがこんな記事を書かれていました。
H2さんらしい、軽やかだけど雑にならない絶妙な語り口で、いまみんなが気になっている主題を取り上げられます。素敵。
とても興味深い内容だったので、そう言いながらツイートしたら、「意見陳述せよ」と煽られてしまいました。お気楽にツイートして終えようとしてたのに!
そんなわけで、タイミングは完全に逸している気もしますが!この記事はH2さんの記事へのアンサーソング、返歌的なものです。(自分で言っていてよくわからない。)のでH2さん以外の方にはあまり意味がない記事かもしれません。それでも読もうというツワモノは、まずH2さんの記事を読んでからにしていただけると助かります。
前提として……
公式大会は誰のもの?という記事が書かれた背景というか前提として、競技志向のプレイヤーと交流重視のプレイヤーの優先するものが相容れない、という何度も繰り返されてきた話があるのだと思います。
おなじポケモンカードゲームなのですが、それぞれが目指すもの、欲しがるものが違うことはすでに語り尽くされています。
これはターゲットが違えばニーズが異なる、という至極真っ当なことであり、どちらかの立場や意見が正しいということではない話です。
なのですが、ポケモンカードの大型大会というのは年に4回ほどしか行われません。そして多くのポケモンカードファンが楽しみにしているイベントです。そこには競技志向のプレイヤーも交流重視のプレイヤーも、これからポケモンカードを楽しみたいと思っている小学生もやってきます。
ニーズの異なる人たちが一堂に会すわけです。しかも昨今のブームで大量の人たちが。そりゃ軋轢も起きようというものです。
誰のカードゲームなのか
ところで、ポケモンカードを販売し、公式大会を主催している株式会社ポケモンさんはどんな人たちにポケモンカードを楽しんでもらいたいと思っているのでしょうか。一つのヒントが最近のCMにありそうです。
このCMには2つの場面が描かれています。前半、友人たちとリラックスした雰囲気の中で楽しげに遊ぶ姿。後半は少しピリッとした環境で、競技志向と思われるデッキとプレイングで対戦している姿。
このどちらも「楽しい」と思ってもらうこと、もしくはどちらか趣向にあったカタチで楽しんでもらうこと。これが株式会社ポケモンが目指しているポケモンカードゲームの理想像なのかもしれません。
とても欲張りなことですが、これが実現できたなら、ポケモンカードは一つのゲームでありつつ、文化的な側面を持つことができるかもしれませんね。
今の公式大会は誰に向けているのか
「チャンピオンズリーグ」という名前が冠された大会について、公式サイトでは以下のように紹介しています。
「カジュアルからガチバトル、さらに対戦以外のコーナーも盛りだくさんの、ポケモンカードのお祭りだ!」
ここからも、大会自体はH2さんがおっしゃるようにどんな遊び方をしている人も参加できるイベントであると読み取ることができます。しかし、その中のガチバトルに当たるメインバトルは世界一を目指す大会です。
H2さんが指摘するようにメインバトルにも「ポケモンカードゲームのバトルのルールを知っている方」という規定しかありません。でもそれを持って「ガチバトル」では無いとは言えません。
少なくともイベントの中でこのメインバトルに関しては競技としてポケモンカードを楽しむ方々に向けたもので間違い無いでしょう。わたしはそう考えています。
よって、「公式大会は誰のもの?」と聞かれたなら、「イベント全体はみんなのもの」であり、メインバトルについてだけ限定すれば「競技プレイヤーのもの」であると答えます。
不十分な最適化
一つ断っておきたいのですが、わたしは競技志向のプレイヤーの方が交流や楽しみを重視するプレイヤーよりも優先するべきとは思いません。ましてや立場が上などということも考えません。ですからチャンピオンズリーグのメインイベントは競技志向のプレイヤーのみが参加すべき、という言説には組みしません。競技志向のプレイヤーに向けた大会であることがそのまま他のプレイヤーの参加を排除することにはならないと考えています。
ポケモンカードの楽しみ方は多種多様で幅が広く、それぞれに楽しむ権利があります。その幅の中にはお互いに相容れないものが存在するとするなら、全てのプレイヤーを一つのコンテンツで満足させることは難しく、全方位に向けている位置付けの現在の公式大会は、誰にとっても「最適化」されているとは言い難いものがあります。
そもそも先のイベント紹介ページの中で「目指せ世界一!」のエリアにありながら、チャンピオンズリーグの説明にカジュアルからと書かれてしまうところに、主催する側の苦悩も見て取れます。
個人的には競技志向のプレイヤーのための大会は「ポケモンカードのお祭り」とは切り離していく必要がある、と考えています。多様な方向性を持った参加者を多数集めるイベントとなったポケモンカードの公式大会は、これまでのように一つのイベントで全ての人を対象とするのではなく、その参加者の志向に合わせて違うイベントへと分離していくのが自然だと思うのです。
プレイヤーの志向によって大会に違いが生まれることは、大会として後退でもなんでもないでしょう。多数の競技人口を持つスポーツでは、その多くでガチの競技大会からカジュアルなイベント的なものまで多種多様な大会が開かれています。ポケモンカードでこうした「区別」を行うことは、むしろそれだけの幅を持った懐の深いゲームなのだということができると思います。
違う志向を持ったプレイヤーも同じゲームを楽しむ人
しかしながら現在のシーズンでは公式大会はガチバトルもカジュアルバトルも楽しむ「ポケモンカードのお祭り」です。メインバトルは真剣勝負の場ではあっても、そこに志向の違うプレイヤーが参加している可能性は十分あります。そしてそのプレイヤーにはなんの落ち度もないのです。
急激に増えたプレイ人口のおかげで様々な問題が起きていますが、公式大会に参加したくともできない状況というのはもっとも大きな問題ではあるでしょう。その状況から「競技志向ではないプレイヤー」へ複雑な思いがまきおこることはある程度しかたのないことなのかもしれません。
しかし、競技プレイヤーにはぜひポケモンカードがどんなゲームであったのか、自分がどうやってこのゲームにのめり込んだのかを思い出し、同じゲームを楽しんでもらえるように相手への思いやりを持っていただきたいです。
また競技志向ではないプレイヤーのみなさんにも、違う志向を持ったプレイヤーがいることを理解して、お互いに真摯な気持ちで対戦に臨んでいただければと思います。真剣にプレイすることはどんなプレイヤーにも大切なことだと信じています。
国内の2019シーズンは折り返しを越え、6月のPJCSでフィナーレを迎えます。少しずつ良くなるよう進められてきた競技シーンが2020シーズンにどのような進化を見せるのか。わたしは楽しみにしています。