Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【10月9日㈬~10月15日㈫】
先週の当通信でお伝えしていた通り、只今フランス・リヨンに滞在中。カンヌ国際映画祭のアーティスティック・ディレクターであると同時に、リュミエール・インスティチュートの所長でもあるティエリー・フレモーが主催する映画祭、Festival de Lumiere、リュミエール・フェスティバル(なぜか、“Film“の文字は入らないので、正確に日本語に訳すと“リュミエール映画祭”ではなく、“リュミエール祭”ということになります)に参加しています。私は映画祭と同時開催のクラシック・フィルム・マーケットという、旧作映画の見本市での仕事が中心ですが、先週も書いた通り、空いた時間は映画祭で上映されている、直接仕事とは関係のない映画を観て、市民映画祭の雰囲気も味わったりしています。
この映画祭には、コロナ前の2017年に初めて参加。当時から“クラシック・フィルム・マーケット“は行われていましたが、とても“マーケット“とは呼べるようなシロモノではない小規模なもので、狭い部屋に机が3つ、4つ並んでいるだけ、フィルム・ライブラリーのカタログを携えてセールスに来る会社も限られていて。ほぼ仕事になりませんでした。なので「二度と参加することはないかなぁ」と思っていたのですが、一昨年、日頃から親しくしている同業他社の方が参加して、「結構マーケットの形を成して来ていて、普段の映画祭に来ないようなセラーも来るので、有益なマーケットでしたよ」と教えてくれたので、「ならば!」と久しぶりに参加。去年に引き続き今に年もやって来た次第です。
日本からは、前述のリュミエール復帰を勧めてくれた同業他社の方と、もうお1人、我々と同様に旧作の劇場再公開を積極的に手掛けている某社の方が初参加。その某社の方とは何年も前にどちらかで名刺交換してご挨拶をさせて頂いてたことはあるのですが、お話しするのは今回が初めて。せっかくの機会なのでランチをご一緒して、情報交換させて頂いたきました。こういうのがご縁で、今後お仕事のコラボに発展する可能性もあったりするのが、マーケット出張の面白いところ。その方は本日帰国で、「東京でまた!」と言葉を交わしてお別れしました。
セールスの会社とのミーティングの内容については書けないので、映画祭の様子を少し。修復された作品のお披露目や、ゲストの俳優、監督の作品の特集、マスター・クラスなど、期間中さまざまな企画が行われているのですが、上映会場はリュミエール・インスティチュート内のホールの他に、街中のシネコンを使っています。一昨日、昨日の夜は中心地のBellecourというエリアに出て、三船敏郎監督主演作『五十万人の遺産』(’63)、フレッド・ジンネマン特集の1本、マーロン・ブランドの銀幕デビュー作『男たち』(’50)を観て、今日の日中は地下鉄とトラムを乗り継いで、街の中心から少し離れたエリアに位置するショッピング・センター内のシネコンで、フランク・キャプラ監督の『スミス都へ行く』を観てきました。300名前後は収容出来るであろうスクリーン(そのシネコンは27スクリーンもありました(@_@))は、平日の昼間なのにほぼ満席でした。上映前にはMC役のスタッフと共に、映画評論家と思われるゲストが登場して15分ほど作品を解説。皆熱心に聞き入っていました(フランス語ゆえ、私は固有名詞しか聴き取れませんが)。
そして今夜は、私にとってのリュミエール最大のイベント、うちの会社の配給作品でもあるカール・テオドア・ドライヤー監督の『吸血鬼』(’31)のオーケストラ演奏付きの上映会に行ってきました。演奏はリヨン国立管弦楽団。指揮はチャップリンの映画音楽復元で知られ、日本でもたびたび公演されているアメリカ人指揮者 ティモシー・ブロック氏という豪華版です。普段は演奏会に使われているコンサートホールなのでしょう、座席数2,100のオーディトリウムは3階席まで埋まる盛況ぶりでした。
が、しかし…。渡欧前から楽しみにしていたイベントなのに、時差ボケで連日トータル4、5時間くらいしか眠れていない状況に加えて、会場に向かう前にフィルム・マーケット会場に寄って、毎夕行われているカクテルタイムに顔を出して、ワインを1杯飲んでしまったせいで(大バカ!)、上映時間74分のうちの、かなりの部分で眠りに落ちてしまいました。一生の不覚!こうなったら同じ企画を日本で実現させるしかないか…。とりあえず東京国際フォーラムAを押さえなきゃです(妄想)。
上映会の後は、パリ在住の日本人映画ジャーナリストの方と会場で合流して夕飯。今日は朝から雷鳴轟き、時折土砂降りに見舞われる酷いお天気で、午後からもずっと降ったり止んだりだったので、街に人出は少なくて、早じまいする店も多く(フランス語堪能なその方が、「まだ21時半なのに~」とお店の人に言ったら、そう言われたそうです)、開いてる店がない…。さて困った!…と思ったら、中華料理屋が開いてた!!“せっかく美食の街リヨンに来ているのだから、安易に中華には入らない”と決めていたけど、この場合は致し方ない!せっかく久しぶりにお会いするので、ゆっくりワイン飲みながら、どこかのブラッスリーとかでフレンチを食べるつもりでいたのに、私は酢豚定食、映画ジャーナリストの方は麻婆丼になってしまいました。しかも食べ終わったら、早く帰って欲しいらしく、2本目の青島ビールは拒否られた。悲し過ぎる。
texte de daisuke SHIMURA