Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【7月12日㈬~7月18日㈫】
7月14日㈮、劇場営業担当のHと2人で、上映中の“ジョン・カサヴェテス レトロスペクティヴ リプリーズ”最終日のタイミングで、7月28日に閉館になる名古屋シネマテークに、お別れのご挨拶に行ってきました。お邪魔するのは2019年に亡くなった前支配人 平野さんのご葬儀以来なので4年ぶりです。
シネマテークが常設館として営業を始めたのは1982年だそうなので、40年以上の長きに渡って、名古屋とその周辺のシネフィルの皆に向けて、邦洋問わず良質なインディペンデント映画を届けてくれていたことになります。うちは本格的に劇場配給を始めた1998年以降のお付き合いなのですが、それでも25年近くお世話になりました。中部地区での公開にあたって、うちの配給作品の6割7割は、こちらでかけて頂いていた感じなので、新幹線のぞみで品川から名古屋駅まで1時間半もかからないのですから、もっとちょくちょく寄らせて頂けば良かった、と今さらながら後悔することしきりです。そんな不義理しまくりの私たちを、現スタッフの皆様はやさしく迎え入れて下さいました。長い間、本当にありがとうございました。心より感謝申し上げます。
先日、京都みなみ会館が9月いっぱいで閉館になる、というニュースも流れてきました。コロナ禍は何とか乗り越えたものの、コロナ前のように客足が戻らずに力尽きてしまう映画館が出てきたことに、危機感を感じずにはいられません。私たちのような独立系の中小配給会社に出来得ることは、全国的なヒット作を生んで、全国のミニシアターに潤ってもらうことだけなのですが、今の時代、いったいどんな作品を、どんなふうに宣伝して公開すれば良いのか、悩みは尽きません。が、しかし、そこは“映画の力“を信じて、愚直に頑張るしかないのだよなー、と思ったりしています。
現在は11月公開の配給作品のポスター、チラシのビジュアル作成、マスコミ向けの試写状を作成しているところ。当通信で何度か触れている作品ですが、いわゆる“ミニシアターの王道”的な映画だと思っているのですが(正式な公開情報解禁は数週間後なので、詳細はもう少々お待ち下さい)、こういう作品こそ、全国で多くのお客様にご来場頂けるようにしなければ!と、決意を新たにしています。
劇場閉館のニュースも悲しいのですが、今週はもう一つ悲しいニュースが飛び込んできました。7月16日にジェーン・バーキンさんが亡くなった、とのこと。SNSで検索すると、娘のシャルロット・ゲンズブールさんの来日が中止になったり、パリでのコンサートが延期になったり、予兆はあったようなのですが、私は彼女の体調が思わしくないことは、全く知らなかったので、本当に驚きました。享年76歳。まだ早いですよね…。
“職業病”と言えるのかもしれませんが、ジェーン・バーキンさんが亡くなって、いくつか目に(真っ先にではありません!)思ったのは、追悼上映、追悼放送に出せる「ジェーン・バーキンさんが出ている映画の権利、持っていなかったっけ?」ということ。調べてみましたが、現在保有している作品の中では、アニエス・ヴァルダ監督の遺作『アニエスによるヴァルダ』の中に過去のジェーンの主演作『アニエスv.によるジェーンb.』と『カンフー・マスター!』のフッテージが引用され、ヴァルダがジェーンについて語っているシーンがあるだけでした。
本作で触れているワケではありませんが、ヴァルダとジェーンが初めて組むことになった時の話は有名です。『冬の旅』を観て感動したジェーンがヴァルダに手紙を書いたら、「会いましょう」とすぐにヴァルダから電話がありました。それは何故かというと、ジェーンの手紙の文字が読めなかったら(読んでも内容が分からなかったから、本人と直接話したかった、という説も)。なんだか“らしい”エピソードですよね。
『アニエスv.によるジェーンb.』と『カンフー・マスター!』の2作品は、90年にユーロスペースさんが劇場配給されて、その後日本の権利が切れた後に、ザジでVHS化、DVD化、一部劇場配給の買付をしたことがありましたが、現在は日本のどこの会社も権利を持っていないと思われます。ぜひスクリーンで再見したいものです。どこかの会社さんがあらためて劇場権を買われることがあれば良いなぁ(ザジは買わないのか!)。
最後に、個人的な体験。確か10年ほど前、テレビ番組見本市の出張でカンヌに行った帰りにパリに寄った時のこと。もう明日は日本に帰る、というタイミングなのに日本食が恋しくて仕方なくなり、サンジェルマン・デ・プレでたまたま見つけた日本蕎麦屋、というか和食店のランチタイムに、ちょっと高そうだけど思い切って飛び込みました。
案内された2人席に座ると、隣の席、私の斜め向かいにヨージ・ヤマモトが、アシスタントらしき若者2人と向かい合って蕎麦を啜っていました。あの風貌なので間違えようがありません(後で調べたらそのお店は場所柄、ファッション関係のお客さんが多い店とのこと)。「さすが、パリ!」と感心しているうちに、3人は食事を終え席を立ちました。
私が清水の舞台から飛び降りるつもりでオーダーした、良いお値段の天丼の、あまりの小どんぶりぶり(笑)に驚愕していた時のこと、隣のテーブル、私の斜め前、さっきまでヨージが座っていた席に座ったのはシャルロット・ゲンズブールでした。おぉ、シャルロット!と感動して、横を向いたらジェーン・バーキン!ほんの数十センチ隣りで2人がランチしているのです。私はバカ高い小どんぶりの天丼も、その後のざる蕎麦も、どこに入ったか全く分かりませんでした。あの時、帰りがけにでも「日本で映画の配給をしている者です。アニエスの映画も配給してるんですよ」などと、ご挨拶出来れば、多少は会話も交わせたのかもしれません。意気地ないな〜。
8月4日㈮にはシャルロットが初めて監督したドキュメンタリー『ジェーンとシャルロット』が公開されます。今となってはキャッチコピーの「あなたのことを、もっと知りたかった。」が、よりリアルに響いてきます。観に行かなくては!
texte de Daisuke SHIMURA
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