映画『ハッピー・オールド・イヤー』公開記念 リアル引っ越しドキュメント⑬「親の世代が作ったものはもう機能していない。老人はなぜ変化を嫌がるの?」
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前回の記事はこちら☞ 連載⑫「感情に溺れるな」
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今回の、このドキッとするセリフは、映画『ハッピー・オールド・イヤー』で、同居する母親とうまくいっていない主人公ジーンが言うセリフ。実家をリフォームしてミニマルでオシャレな暮らしを実現させたい彼女と、そこらじゅう物がゴチャゴチャしてて、たとえ毎晩リビングのソファで寝るような状態であっても、そっちのほうが落ち着く母。対立しないワケがありません。母が腰痛持ちなのは「いつもそんなところで寝てるせい」と娘は強い口調で非難します。
断捨離をめぐって浮き彫りになるのは、これまで築いてきた“人との関係性”。本作は家族と同居している家をリフォームする話なので、当然親との関係性にもスポットが当たります。世代が違うと、知識も、考え方も、価値観も違うので、誤解や衝突が発生しやすくなります。いくら血の繋がった親子であっても、そのギャップを乗り越えるのは簡単なことではないのかもしれません。その辺りの母と娘の心情のぶつかり合いを、ナワポン・タムロンラタナリット監督が時に容赦なく描き出していくのも、本作の見どころの一つです。
※ことあるごとに主人公ジーンと対立するママ。ママの唯一の趣味が“家カラオケ”というのも、妙味のあるキャラクター設定です。
世代間の格差、いわゆる“ジェネレーション・ギャップ”ってやつは会社内にももちろんあります。物心ついた時からパソコンはもちろん、携帯電話があった世代(社員たち)と、テレビは白黒、電話はダイヤル式の重たい黒電話の時代を知っている世代(私)では、どうしたって考え方も価値観も微妙に異なります。カラオケで唄う歌が違う、子供の頃に観ていたテレビ番組が違う、という他愛のないことなら良いのですが、時代によって移り変わっていく「常識」によって、考え方が違っていたりすると衝突も起こりがち。たとえば、ビジネスにおいての、メールや電話というコミュニケーション・ツールに関していえば、一昔前は「大事なことはメールではなく、直接会って。会えなければせめて電話の肉声で」という感じでしたが、今は先方の状況も分からないのに、いきなり電話するのは失礼、みたいなことになっています。何が正しくて、何が間違っているか?も、時代によって変わっていくものなんですよね。
断捨離の話題からちょっと逸れてしまいました。事務所引っ越しに際しては、幸い世代間格差による衝突は起こらなかったので、今回ピックアップした「親の世代が作ったものはもう機能していない…」というセリフに則したネタがない、というのが正直なところなのでした。新事務所のレイアウトについて意見が分かれることもなかったし、内装についても…。いや、これは全面的に私の趣味をゴリ押ししていて、誰も文句が言えない、という話もあります(笑)。「トータルにコーディネートしてるんだから、勝手に備品を買ってこないでね」ってこれ、何ハラ?
セリフ後半の「老人は、なぜ変化を嫌がるの?」についてですが、今回の事務所の引っ越しによって最も変化するのは環境。通い慣れた通勤ルートも変わり、通い慣れたランチの店にも行かなくなってしまうので、頑張って新しい環境に慣れ、新しい店を開拓して行かなくてはなりません。それこそ若い世代は、新しいことウェルカムで、そういうのは苦じゃないのかもしれませんが、私のような(初老の)人間にとっては、エネルギーのいる仕事です。しかし変化を嫌がっていては、経費削減は実現しません!(笑)私も好奇心を枯渇させず、新しい街に順応すべく頑張る所存です!
※通い慣れ、見慣れた大鳥神社の交差点の景色ともお別れです…。
◆映画『ハッピー・オールド・イヤー』
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12/11(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開!
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