Une Semaine à Zazie Films 週刊ザジ通信【2月1日㈬~2月6日㈫】
雪の多い地域にお住まいの方にとっては、「何を大騒ぎしているの?」という感じだったかもしれないのですが、月曜未明から降り始めた都心の雪は、月曜午後には本降りとなって積もり始め、夕方からは強風もあって大荒れのお天気となりました。「電車止まっちゃうかもしれないから、早く帰ってね」と皆に告げて、私は18時半過ぎには退社。すでにその時間帯には、バス停までの道のりが「八甲田山」の行軍のような様相を呈していたのでありました(大げさ)。
自社の映画を公開中の配給会社の人間にとって、大雪及び雪予報は大敵。予報によっては映画館が早じまいを決めて最終回の上映が中止になる場合もあるし、ニュースで朝から「不要不急の外出は控えて」と注意を促されてしまうと、たとえ結果的には実際に大した降りにはならなかったとしても、客足に影響が出てしまいます。が、“自然”が相手じゃ文句も言えません。
月曜は渋谷シアター・イメージフォーラムで“カール・テオドア・ドライヤー セレクションvol.2“の中の1本『あるじ』の1回上映、Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下で『ノスタルジア 4K修復版』の2回上映がありましたが、そんな悪天候の中にあってもお客様がご来場下さいました。有難いことです。ご来場下さった皆様が映画鑑賞後、交通機関の遅延等のトラブルに巻き込まれず、無事に帰宅されたことをお祈りします。
以前も書いたことがあるのですが、“大雪下での興行“と聞いていつも思い出すのは、スティーヴン・ダルドリー監督作『リトル・ダンサー』(日本ヘラルド映画配給)の初日のエピソード。その日の東京は大雪だったそうですが、メイン館のシネスイッチ銀座前には降りしきる雪の中、長蛇の列が出来て、大ヒットのスタートとなったのだそうです。その事実から導き出される真理は、“たとえ悪天候であってもヒットする映画にはお客さんは来る”という事実。その場に居合わせたワケではないので、「都市伝説?」とも思ったのですが(失礼な)、念のためネットの気象庁のページにある“過去の気象データ“で検索してみると、2001年1月27日の土曜日、確かにその日は「最低気温0.5℃、積雪8㎝」と記されているのでした。なので「こんな天気なんだもの。このお客さんの少なさは仕方ないよね」というエクスキューズは、いつでも有効、というワケにはいかないのでありました。
もちろん、2001年当時と今とでは時代が違うので、テレビで今ほど大雪に関する情報が四六時中流れる、ということも無かったでしょうし、交通機関が“計画運休”するのも稀だったでしょうから、“雪の日に出かける“という行為がもうちょっとラフに行われていたのかもしれません。今も使われているエリアもあるようですが、昔は鉄道の積雪対策として都市部でも大雪が降ると、雪が積もった線路上にチラチラと火が灯っていることもありました。“融雪カンテラ“と呼ばれるものです。今は線路火災と勘違いされることもあるそうで、昭和は遠くになりにけり…という感じです。
そんな“昭和懐かしネタ“”はともかく、そうこうしているうちに来週からベルリン国際映画祭が始まります。ベルリンの冬は“極寒“というイメージがありますが、温暖化の影響なのか、ここ10年ほどは雪が積もって大変!みたいな経験は無く、チラチラ舞う程度がほとんどです。ちなみに、BBC WEATHER(世界の天気予報は、このサイトが一番信頼がおける、とどなたかに教えてもらい、そのまま愚直に信じている私です)をチェックしてみると、来週半ばからの滞在中は、前半が曇り時々雨、半ば以降は晴れの予報。気温はさすがに東京よりちょっと低くて、下が-2℃、上が5、6℃といった感じです。ですが、油断は禁物。朝晩は路面が凍結していることも多いので、時差ボケで早く目が覚めてしまい、朝ランをすることも多い私なので、転ばないよう気を付けねばなりません。
でも、ベルリンで気になるのは、お天気よりもボイコットを巡る動き。この辺りのことは、たびたび当通信でも“Y氏“としてお名前を挙げさせて頂いている矢田部吉彦氏のnoteに詳しく書かれていました。日本語で説明してくれているメディアを見つけられていなかったので非常に勉強になりました。
ベルリン国際映画祭の出品作は、カンヌほどメジャーな監督の新作が並ぶワケではないので、うちのような弱小配給会社にも買い付けのチャンスが生まれる、という話は、先々週の当通信で今年のコンペ出品作のLINE UPに触れた際に書いた通り。実際、過去のザジ配給作を見てみると『ローサのぬくもり』(1999年パノラマ部門観客賞受賞)、『幸せになるためのイタリア語講座』(2001年銀熊賞受賞)、『ナショナル7』(2001年パノラマ部門観客賞受賞)と、本格的に新作の配給を始めた当初は、ベルリン絡みの作品が多かった印象です。
一昨年は久しぶりのベルリン出品作、2019年のパノラマ部門に出品されていた『わたしはダフネ』を買い付けて公開しました。そして実は…間もなくの情報解禁を予定している5月公開の新作も、一昨年のコンペに出ていた作品なのでした。しかも銀熊賞2冠に輝いています。ここまで匂わせまくって(笑)、タイトルを公表しない、というのは、最早何の意味もないかも…。今週は予告編の制作を進めてほぼ完成に至り、これから権利元からのアプルーバル(承認)を取る作業に入るところです。来週には発表出来るかな??
texte de daisuke SHIMURA