ごはん杖 (毎週ショートショートnote)
「そば杖を食うってやつですよ」
後輩の西山君はエンターキーを力いっぱい叩きながら腹立たしそうに言った。別チームの尻拭いのために休日出勤になり、西山君は機嫌が悪い。
「傍杖なんて言葉よく知ってたね」
西山君はいい大学を出ている割に言葉を知らない。
「バカにしないでください、それくらいは知ってます。大体あいつら、いつも俺たちを『残業ばっかりの給料泥棒』なんて言うくせに…」
「まあ、貸しを作ったと思えばね」
「先輩、甘すぎます。だからあいつらに舐められるんです」
舐められてたのか…
「ところで何で【蕎麦杖】なんですかね? うどん杖でもよくないですか? 俺、うどんの方が好きなんですよ」
「西山君、やっぱり君…」
「なんですか」
「いや、終わったら飯おごるよ、旨い定食屋見つけたんだ」
「あざーす! あ、じゃあ今日は蕎麦杖じゃなくて【ごはん杖】だ!」
ピカピカの笑顔を見せる西山君に何も言えない私は、やっぱり甘いのだろうか。
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