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メンタル・アカウンティング〜別腹の論理〜

今回のお話

以前も引用した気がしますが、何度も見返して経験や知識と照らし合わせながら書かれた「意味」を解釈しようとしています。ある意味で「アクエリアス」のような記事です。(さっと飲めて効果がいいが、シーンを見極めて飲まないと意味がない)

さて今回この記事を見返していて以下のような一文が目に留まりました。

マネタイズのために、誰のどの財布からお金が取れそうかを探索する
太字は筆者による

あれであれをしたら儲かりそうなんていうのはごまんと思いつくなんてことはよくありますが、それは果たしてどのシーンに効果的なプロダクトでどの財布にアプローチしているものでしょうか。

どの財布とはどういう意味でしょうか。
よく「スイーツは別腹なので」といいますが、まさにそういう意味です。
同じモノ・コト(お金も)なのに(頭の中で)カテゴリが別のことを「メンタル・アカウンティング(心理的会計)」と言ったりします。

今回は、お金版スイーツは別腹なメンタルアカウンティングについて考えていきましょう。

1円のために東奔西走する主婦

最近は聞かなくなりました(耳にしないだけ?)が、昔やクレよんしんちゃんの世界の中では1円でも安い卵1パックのためだけに隣町のスーパーまでママチャリを走らせるなんてことはありました。

このWIREDの記事の事例にもある通り、行動経済学者のリチャード・セイラー教授の実験では以下のような結果になったとあります。

Thaler氏の別の実験では、「価格15ドルの計算機を5ドル安く買えるなら、車で20分遠回りをしますか?」という質問が行なわれ、回答者の68%がイエスと答えた。これに対し、「価格125ドルの革のジャケットを5ドル安く買えるなら、車で20分遠回りしますか?」との問いに、イエスと答えた人はわずか29%だった。

なんとなく直感的ですが、この二つの質問の中ではまさに「移動のコスト(精神的・身体的など)」を頭の中で勘定しているということを表していますね。

確かに割引率>移動コストと感じるなら遠回りし、そうでない場合はそうしないということになります。
同じ「5ドルの割引」が商品の金銭的大小やシーンに応じて判断が変わると言うのは非常に面白い実験結果ですね。

直感的にも300mlそこらのジュースを道端で500円ではほぼ買わないが、映画館や遊園地では躊躇せず支払うケースもありますよね。

この背景には人間の思考パターンに依存する部分があるかと思っています。
それは聞いたことがあるかもしれませんが、システム1、システム2というやつです。

何年か前にかなり売れたので知っている方も多いかもしれませんが、ダニエル・カーネマン教授の「ファスト&スロー」という本に書かれている人間の思考プロセスのことです。(ちなみに先のセイラー教授もカーネマン教授もノーベル経済学賞を受賞している)

簡単に説明するとシステム1&2の違いは以下の通りです。

システム1(直感的な思考(ファストな思考)):人の顔をみて怒っているなど簡単に判別可能な思考プロセス
システム2(論理的な思考(スローな思考)):数学の証明問題を解いたりなど集中力が必要な思考プロセス

これを先の例に当てはめるとシステム2で考えれば全くもって同じ割引と捉えられるけれど、どうしても思考体力を奪ってしまうためにシステム1で思考して直感的な答えを出してしまうということになります。

ではここまでの参考情報を持って最初に引用した文章を改めて引用すると

マネタイズのために、誰のどの財布からお金が取れそうかを探索する
太字は筆者による

このことは、以下のように読めるのかなと思います。

マネタイズのために、誰のどの財布からお金が取れそうかを探索する
⇨ある人がシステム1or2思考でその財に対して支払い可能額の最も高いシーンを見極めること

普段の生活の中でなんとなくスルーしそうな行動というのも一歩身を引いてみて高度に言語化された文章と共に振り返ってみると新しい「気づき」を得れることが多いと感じます。

それは多面的思考なんて呼ばれたりしますが、その多面的な思考も「気づき」を得る一つのトレーニング方法なのかもしれません。
もちろん気づきを得たと思ってもそれが何に対するどんな気づきなのかを言語化する必要もありますが(映画見て面白かったとほぼ同義になってしまうため)

外に出る機会がなかなか減っていく(減っている)ご時世ではありますが、インプットや振り返りの時間(システム2の時間)を増やしても良いかもしれませんね。
それでは、また。

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