大学にはデブがいない話

中学高校まではクラスすげえデブ一基、あるいは二基いたのに大学にはあいつらが居なっててなんだか寂しい。すげえデブは多分みんながみんな馬鹿食いしまくってデブったわけではなかろうが、俺の友達のデブはみんなお菓子スナックコカ・コーラ、大好きゴキゲンなデブだった。

あのデブたちは汚い公立中学校の詰まった空気を洗浄してくれてたような気がするんだよ。クラスには親が殺人で捕まった噂が立ってる奴とか、家に猫が17匹くらいいるやつとか、そんな奴らがちょいちょいいて、辛気臭い空気をスウハアしてるわけ。そんな教室にあって、彼ら幸せな、愛すべきデブたちはパクパク彼らの大好きなお菓子・ペヤング・冷凍唐揚げをつるんと吸い込んだお口でもって、幸せなCO2をブワッと吹き込んでくれてたんだよな。ところが大学に入ってみると、あのゴキゲンなデブたちが忽然と姿を消している。なんかね、長年借りたアパートの引越し、冷蔵庫を運びさったその空間の広さになんだか寂しくなる心地。どこ行っちゃったんだろう、あいつら?

彼らは重力だった。大学にはその重力がない。代わりにやたらカフェイン摂取量が多いガリガリのオタクばっかりだ。彼らは優秀だが、なんの匂いもしない。すげえエスニックな甘っとろい香りの学ラン羽織ってたヒロトミ君とは違って。変なヤンキーも、学級委員長も、休み時間になったらデブっちょのおっぱい・おなかをプルプルしてた。その瞬間だけ、少しだけだけど、クラスが同じほうを向いてたような気がするんだ。

結局、あのゴキゲンなデブたちは、勉強なんかするワケなかったんだってこと。中学まではポテチとかカラムーチョ、popcornばっか食ってた連中は、高校時代、俺が受験勉強セッセとしてるあいだTiktokでフォートナイトのキル集でも作ってたんだろう。ヘンなEDMのBGM付きで。

そんなわけで、俺と奴らの道が交わることはもうない。でも、あの日にもんだデブのおっぱい、蠱毒みたいな中学、大好きだったみんなのこと、今でも野良のデブを見かけると思い出すよ。

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