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初めてプレゼンした日

著者プロフィール
妄想発明家ZAWAWORKS
思春期の妄想を叶える装置を発明している。発明品はSNSを中心に、個展や大阪のお笑いライブなどで発表している。2024年はニコニコ超会議に出展した。TikTokフォロワー数4.8万人、累計240万いいねを獲得。


後輩からのDM

ある日の夜、大学の後輩から一通のDMが届いた。

「今日、研究室でZAWA先輩が1年生のときのプレゼンの話が出たんですけど、どんなプレゼンしたんですか?」

後輩に今回はどういう風にいじられたのか聞くと「いいえ、良い例として話してましたよ」と返事が来た。

「技術力高い作品を発表すれば会場にウケるわけではない。技術力低い作品でも会場を盛り上げることはできる」

その後者の例として僕のプレゼンについて話していたらしい。しかし、その先生も8年前の話だから詳細なことを覚えていなかった。それが気になった後輩が僕に直接聞きに来たというわけだ。

今回は僕の原点である初めてプレゼンした日について語る。参考にできる点もあれば、絶対に真似して欲しくない点が多々あるので注意してほしい(8年前の出来事なので時効だと思いたい……)。このブログが僕のように間違えて情報系に入ってしまった学生たちに希望を与えるなら嬉しい。

パソコン触ったことないのに情報学生になる

2016年に僕は情報系の大学に入学した。そもそも僕はプログラミングをしたくてその大学に入ったわけではない。ある程度学歴が高いところで、数学と英語で受験できるところを複数受けていたら、そこに偶然受かったから入学することにしただけで、その他にも経済学部や外国語の学部も受けていた。

だから、どんな学科なのか把握していなかったので、最初のガイダンスで学科長が「みなさんこれからプログラミングを学んでいきますが……」と語っていたときに初めて「ここはプログラミング学ぶ場所なんだ」と知った。

それまでの僕はパソコンをあまり触ってこなかったし、それどころかSNSもしていなかった。他の学生は入学前にSNSで友達を作り、その友達と入学式に行ったらしいが、そんなことも知らないので僕は父親と2人で入学式に参加した。

そんな僕の前にとって「プログラミング」というワードは得体の知れない恐怖であり、大学の先生に「タイピングできないんですけどこれから僕大丈夫ですか……?」と相談しにいったのを覚えている。

先生「一ヶ月後に発表会があります」

入学してから数日後に初めてのプログラミングの授業があった。その学科では「プログラミングを楽しく学ぼう」というのをモットーとしていたため、CやJavaではなくHSPというプログラミング言語を学んだ。毎週「今日学んだ内容を使って作品を作る」という提出課題があり、小さいときから図工や美術の授業が好きだった僕は、毎週楽しく学んでいった。これがCやJavaだったら挫折していただろう。

その授業のガイダンスでこんなことが言われる。

「一ヶ月後にプログラミングの発表会があるので、それまでに作品を作ってプレゼンの準備をしてきてください」

え?一ヶ月後?プログラミング学んでないのに?

しかもプレゼンの準備?プレゼンって何すればいいの?

作戦を練る

というわけで、ほぼパソコンを触ったことないのに、プログラミング作品を制作することになった。普通に考えて作れるわけない。でも、逃げたら単位がなくなってしまう。僕はどうやったら発表会まで間に合わせられるか考えてみた。

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すべての授業内容を学び終えてから作るには時間がなさすぎるな。じゃあ、最初の授業で学んだ内容だけを使って、制作期間を長くした方がいい。

最初に学べたのは円を動かすこと、そしてその円の色を変えられるということ。じゃあ、様々な色の円で作れるもの……

花火だ!

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というわけで、僕は花火のアニメーションを作ることにした。

制作開始

花火にすることに決めた僕は早速制作に取りかかる。僕にDMを送ってきた後輩が「先生がZAWA先輩はサンプル(公式が提供している制作例)をそのまま使っていた」と言っていたらしいが、残念ながらそのときの僕はそんなものがあるなんて知らない。もちろん配列やクラスといったプログラミングの基本知識も知らない。じゃあどうしたか?

すべての円の動きを手打ちした。

円Aは2秒後に花火の中心に来たあと、1時の方向に100pxに進む。そして円Bは2秒後に花火の中心に来て、2時の方向に50px進む……。みたいなことをすべての円で計算して、プログラムに書き込んだのだ。

ちなみに計算はプログラムにさせればいいのだが、僕は"紙で手計算して"各々のアニメーションを打ち込んだ。ちなみにこの記事を書くにあたって円の数を数えてみたら、1,000個あった。

普通の人なら途中で挫折していただろう。でも、僕は数学が得意だったし、諦めの悪さがあった。自分の得意で戦ったおかげで、僕は発表会までに花火を完成させることができた。

ただ発表してもウケない

僕はプレゼンするなら絶対ウケたいと思っていた。しかし、目の前にあるのはしょぼい花火のアニメーションだけ。同級生の中には高校生、早くて中学生からプログラミングを学んでいる人たちがいた。彼らに比べて圧倒的に技術が劣る作品をただ発表してもウケないことは目に見えていた。

どうしようと悩んでいたら、あることを思い出した。それは僕が中学生の頃、友達と自転車を漕いで海辺の花火大会を見に行き、浜で花火に向かって叫んだことだった。「高校受かりたい」「リア充爆発しろ」と各々の思いの丈を叫んだ。

今思うとあれは青春だったな……。ん?これをプレゼンに織り交ぜればいいんじゃないか?

僕は"あること"を思いついた。

本番当日

そして迎えた発表会当日。三日間に分けられた発表の僕は二日目だった。会場は400席以上あり、同級生、先輩、他学部の人たちが集まり、ほぼ満席だった。人前に立つことが好きだったとはいえ、流石に足がすくむ。しかし、ここまでの頑張りを無下にすることはできない。そのとき崖から自分を突き落とすつもりで壇上に上がった。

まずエディタに書いた自己紹介を読む。「パワポを使わないなんて珍しい」と後で授業担当の先生が言っていたが、そんな高尚なものの使い方など知らなかっただけだ。時間がないので名前を読み上げたぐらいで「あとは適当に読んでください」と残りを切り捨てて、プログラムを実行する。

supercellの「うたかた花火」をBGMに花火が打ち上がる。BGMの前奏が終わったあたりで僕は語りだす。

「僕は中学生のとき友達と海に行き、浜辺で花火に向かって叫びました。しかし、大学の友達に聞いたら、そういった体験をしたことがないそうです。なら、今こそ花火に向かって叫ぶという青春を体験してみてはいかがでしょうか?」

そして僕は壇上を降り、宣言する。

「今から指名するので、その人は花火に向かって叫んでください」

会場がざわつく。「もしかしたら自分が指されるかもしれない……」と緊張が走る。

しかし、誰を指名するかは僕は決めていた。プレゼンの前に同級生2人に根回ししていたのだ。そのうちのAくんは同じ研究室の子で簡単にOKしてくれた。一方、Bくんは話したことがなかった。そんな彼を選んだ理由は、1日目で「モナリザのお○ぱいを揺らす」という衝撃的な作品を発表し、学年中に知れ渡っていたからだ。叫ばせるなら彼しかいないと思った僕は彼に話しかけ「今日のプレゼンで指名するから叫んで欲しい!」と頼んだ。彼は嫌がっていたが「初日であんなことできる君ならできる!」と説得をし、なんとかお願いを飲み込んでもらった。

僕は壇上に降りてからアドリブの振りをして彼らをそれぞれ指名する。

Aくん「単位が欲しいです!」
Bくん「(1日目のプレゼンを)わりと後悔してまーす!」

会場に笑いが起こる。そのあとは観客として見にきていた同じ研究室の2年生の先輩を発見し、「優しい先輩だしやってくれそう」という理由でかれを指名する。(※その大学は1年生から研究室所属する)

先輩「彼女がほしいでーす!」

会場に来ていた2年生を中心に爆笑が起こる。歯止めが効かなくなった僕は、ついに授業担当の先生を指名した。

「青春って若者のものだけではないと思います!ぜひ先生にも叫んでいただきましょう!」

先生「誰の単位も落としたくないです!」

先生の言葉に会場に拍手が起こる。

こうして僕の初めてのプレゼンは大盛況と混沌を生み出し終了した。

このブログで言いたいこと

「どれだけ技術力が低い作品でも魅せ方によっては盛り上げることができる」

これが僕がブログで一番言いたいことだ。それは今の活動にも通じている。最初の動画でまとめた作品たちは、僕が大学一年生で学んだ内容でほとんど作れる。つまり、技術力が低い。しかし、作品を妄想的なストーリーやコンテキストと結びつけることで、魅力的な作品(もしくはプレゼン)にしている。

たしかに僕が作った花火はさまざまな色の円を動かしているだけだ。それを何も味付けせず見せても「技術力がしょぼい」と思われただけだろう。でも、僕は中学生時代のエピソードと結びつけることで、しょぼい作品に"意味"を持たせた。

プログラミングを学んでいると忘れがちだが、世の人たちは製品やアプリを技術力で評価していないそれが自分の生活、感情、人生をどう豊かにしてくれるかで評価している。これを忘れて「俺の技術力すごいだろ!ドヤ!」でプレゼンして、スベッている人たちを何度も見てきた。技術力は大事だが、それを目的にしてはいけない。技術力と作品の魅力は別なのだから。

今、周りのプログラミング力の高さに劣等感を抱き「入った大学間違えたかな……」と悩んでいる学生たち。今からたくさん勉強しても、彼らに追いつくことは難しいかもしれない。でも、彼らは技術力に逃げがちだ。それに比べて君たちは「作品」に向き合わざるを得ない。

「この作品の価値はなんだ?」
「自分の武器はなんだ?」
「この価値を伝えるにはどんなストーリーを語ればいいんだ?」

これに向き合ったこと、それで得た経験、能力はのちに変え難いものになる。最後に一言。

間違えた進路を、ぜひ楽しんで。

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