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パスト ライブス/再会 感想

NOTE初投稿。

無性に日記感覚で思っていることを書きたい衝動に駆られここにたどり着いた。「誰かに見てもらいたい、自分の好きなことに共感してもらいたい」という承認欲求が無い、と言うと嘘になるがFacebookやXなどのSNSだと友人や兄弟、知り合いに当然見られることになるし、色々思われるのも少し気になる。40歳にもなってまだそんなことを気にしている自分が嫌だが、兎にも角にも何も気にせず考えず書き綴りたいのだから匿名性の担保が必要だった。

単身赴任の土日はとにかく自由である。なんとなく映画を見たくて色々ネット検索していたところセリーヌ・ソン監督の『パスト ライブス/再会』に目が止まった。評価の高さもそうだが、あらすじから何か「絶対にこれは自分に刺さりそうだ!」とピンとくるものがあった。自分ももう既婚且つ娘二人がいるのでまあ恋愛なんてやりようもないし気力もないのだが、たまに昔の女の子をいまだに夢見たり(夢の中に出てくると特に最初の1週間くらい無性に好きになってしまうがあれはなんなんだろうか)、もし今会ったら、あの時ああしていたら、みたいなことを考えてしまったりもするのである。
ただ男は本当にロマンチストでバカだなと思うし、女性の現実主義っぷりもよく分かっているつもりなので、いつも妄想だけで終わっている。

さて、と言う訳で昨晩レイトショーで鑑賞してきた。
ネタバレを含むかもしれませんので、まだの方はここから先はお控えください。

結論から言うと、やはり「当たり!」だった。
そんなに映画に詳しい訳ではないが、もちろん演技、撮影、脚本、音楽等も素晴らしかったのだが、何より感情移入が出来たことが余計に素晴らしい映画体験に繋がった。 ヘソン(男性)側の気持ちももちろん分かるし、どうにか好きな女の子ともう一度会って、「あわよくば!」みたいなことを考えてしまうのも本当によく分かる、分かるぞヘソン!(自分は行動には移せないが)

ただそれよりもノラ(女性)側にすごく感情移入したのが意外だった。彼女の最後のシーンは色々な受け取り方があるのだろうが、万一奇跡が起きて自分も同じような状況になったとしても、やはり自分もそうしたろうなと思った。
なぜなら自分には人前で愛を誓って結婚した妻と、決して裏切れない娘二人がいるからである。つまり「責任」という名のタガがこれでもかとギューッと自分を締め付けている。
思うにノラもヘソンもあの静寂なラストの場面で、もう爆発しそうなくらい抱き合い唇を求め合う、みたいな感情を持っていたとしてもおかしくないし、きっと心の内はそうだったんだろうと私は思っている。でもそれをグッと、それはもう本当にグーッと静かに静かに押し殺しているのが分かるからこそ辛い、辛すぎる。
そこにはきっと二人の中の「責任」が強くあったんだろう。それはもちろんアーサー(ノラの夫)とのことである。

でもその先には二人が未来へ進んでいくような暗示のあるカットで終わる。人生何もかもが自分の欲望のままに進んだら、本当にままならないものになってしまう。全てを抱えて明るい未来には進めないのである。あそこで惜別を受け入れたからこそ、次の未来が来るのだろう。

様々な演出にも唸らされた。
12歳の二人が別れるシーン、明るい階段を上に登っていくノラと、やや暗く平坦な帰り道を歩くヘソン。

水溜りに映る街の景色が影の濃い色から明るい色へ変遷していくカット。

アーサーがアーティスト向けの宿舎?に初めて来た際、フワッと窓から入る風と揺れるカーテン。

ノラとヘソンが電車の中で手すり棒を持って見つめ合うシーン。ここで普通なら背の高いヘソンが棒の上を握りそうなものだが、ノラが上を握っている。ここでも二人の精神性の高さの順序みたいなものが表現されている気がした。

随所に映画ならではの演出が光っていた。

「パスト ライブス」は前世という意味らしく、この映画では「イニョン」、日本語で言うと「縁」が近いニュアンスとのことだが、そのワードがキーフレーズとなっていた。
自分はあまり信仰心が無い人間なので、「縁」と言うものをあまり信じない?深く考えたことがなかったのだが、確かにそういったものがあるのかもしれない、と自分の信仰心まで少し変えてしまった映画でした。

ロマンス系ではリチャード・リンクレイターの「ビフォア三部作」が大好きなのだが、今回それを更新したかもしれない。
これをロマンス系と括るのは少し違うかもしれないが。

※一つ残念だったのは、映画館で左隣に座った若い男性が、ずっとポップコーンをカリカリ音を立てていたこと。。。カリカリッとしていたからきっとキャラメル掛けだね。 映画館で売っているものだから仕方ないけど、もう少しタイミングを考えて欲しいですね。 これがなければもっと良い映画体験ができただけに残念でした。


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