好きなマンガ-9「うちの奴隷が明るすぎる」
下ネタ、しかもエロネタ系のギャグマンガというのははっきり言って超難しいですよね…。特にラッキースケベをギャグと勘違いしているマンガは読んでいて共感性羞恥に襲われてしまう地獄の書物です。
なので、どこが本当に通せる針の孔なのかを見極められるセンスが極めて重要になると思っています。
うまく変化球で交わしたり、恍惚の表情を駆使してエロギャグ風に見せるテクニックが主流になっている2020年代、ドストレートの球をぶち込んできた漫画が今回紹介する作品です。
まず先にいってしまうと、こんなタイトルこんな表紙ですが、作中におっぱいの先は一切出てこないし、エロシーンは皆無。
なぜなら、この漫画の主人公、「黒騎士・ローランド」の性格がそれをさせないからです。
第1話・ローランドの登場シーンです。
ローランドはクソコミュ障なのです。そして、表紙の女の子奴隷のジェシカちゃんはというと…。
めちゃくちゃ陽キャ(うちの奴隷が「明るすぎる」の「明るすぎる」が重要なのです!)。そう、この漫画は、エロギャグと思わせておいて、本編の実態は「ファンタジー世界における陽キャ奴隷と陰キャ騎士の同居物語」であって、エロは正直重要ではないのです。
私がこのマンガを大好きになったこのシーンはこちらです。ジェシカちゃんを助け出した結果、自分が保護者の立場になってしまったローランドの葛藤を描くシーンです。
メス奴隷どうこうどころではなく、単に女の子と触れ合うのが超絶苦手なクソ陰騎士のどうでもいい悩み事にひとつひとつ笑ってしまいます。2話の名シーンをもう一つ。
ということでこのマンガは、「エロキャラ1本押し/主人公無色」のマンガではなく、「陰と陽の対立」という構造を利用したうえ、さらにマンガの中で、左ページ最後に「ローランドは動揺していた…なぜなら」めくって右ページに「女の子としゃべったことがないから!」という緊張と緩和のリズムを見事に使いこなして、エロを建前にしたほのぼのドタバタギャグとして描いています。
もちろんこの2人以外のキャラのつくりも見事で、ハーレム展開になっていくのですが、永久に陰キャなローランドをはたしてどの女性が落城することができるのか、なんて楽しみ方もできます。
下ネタエロギャグマンガと思ってスルーしている人、どうぞ先入観無しで読んで見てください。多少のエロ・シモなんかどうでもいいくらい、キャラ同士の駆け引きが面白い、ポップなエンターテイメントが待っています!
2022年5月時点で5巻まで刊行されています。