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冬の時代と言われ始めた中での10.6億円の資金調達。実際にやったこと・やってよかったこと。

すでに公表させていただいているとおり、、日本郵政キャピタル株式会社(JPC)とフェムトパートナーズ株式会社(Femto)をリードインベスターとした、三菱UFJキャピタル株式会社(MUCAP)、三井住友海上キャピタル株式会社(MSIVC)、AGキャピタル株式会社(AGC)からの第三者割当増資により、総額10.6億円の資金調達を実施いたしました。

 今回の資金調達を振り返ってみると、昨年までのSaaS企業を中心としたPSR(株価売上高倍率)マルチプル20~100倍という高めの水準だったところが、5倍ぐらいの水準でみられるようになった点において180度違った環境での資金調達だったなと改めて感じています。
そんな環境の中ではありましたが、今回自分達が望んだ形で着地することができたと思っています。このnoteでは、現在資金調達に動かれている方、またはこれから資金調達に動かれる方に対して、今回の資金調達での学びを共有させていただき、少しでもお役に立てればいいなと考えております。



1.簡単な自己紹介

DROBEでCFOを担っています。前職まで法務を専門に仕事をしていたこともあり、元外銀出身、元監査法人などのゴリゴリのファイナンスバックグラウンドはありません。ですので、今回のnoteはファイナンスバックグラウンドがない方が資金調達する際の励みになるんじゃないかと思っています!
プロフィールの詳細は文末の採用ページからご覧ください。


2.資金調達に動いた背景

 前回の資金調達は約1年半前の2021年5月。調達した資金は1〜1. 5年で事業に投下するのが一般的と言われています。当社も資金繰りとしては1. 5年ぐらいで事業をスケールさせ、調達から3ヶ月前ぐらいから動く想定で新たな資金調達を実施する予定でした。しかし、想定していたよりもコロナによる自粛が長期化したことで、少なからず顧客獲得コスト(CAC)が想定よりも上振れ、計画よりも早めに資金ショートする可能性がでてきました。

 また、もう1つには新規事業たるB2B2C事業の立ち上げ機運が高まったことも要因です。既存事業であるB2C事業は順調にスケールしているものの、もっと加速度的にパーソナルコマースの市場を広げる方法はないのか?B2Cの事業だけで市場を拡大する以外の方法はないのか?について課題を感じていました。そんな中、B2C事業で提携していただいているメーカー各社から、「パーソナライズした商品の提案」に可能性を感じているという話をいただくことがあり、また、過去にDROBEと同じような事業を立ち上げ、クローズした経験をされていました。そこで、パーソナルコマース市場をB2C事業だけでなく、B2B2C事業としてもアプローチすることにより、さらに加速度的に市場が広がる可能性があると判断しました。これにより、当初の事業計画から新規での資金需要が発生することになりました。

さらにさらに、同時期、危機感が募る事象が生じていました。米国におけるインフレに対応する金利上昇です。これにより、これまで好景気が続いていた株式市場の株価が軒並み下落し、未上場企業のValuation形成にも大きく影響を与えていました。(詳しくは、DCM原さんのnoteをご参照ください。)

この世界的な株式市場の冷え込みにより、未上場企業のValuationは昨年までの基準では見てもらえず、厳しい評価がされ始めていました。

このような状況もあり、通常であれば着金の3ヶ月前から動き出すことが多いと言われている資金調達も、長期化することを考えて6ヶ月前の2022年5月から本格的に動き出すことになりました。(シリーズAの資金調達が半年以上の期間を要した(MBO、既存株主の資本構成を大幅変更などがあり調整に時間を要した)ということも少なからず影響しています。)


3.動いてみてどうだったのか

今後の事業規模を考え、物流倉庫の拡充や、オペレーション効率化となるロボットの導入を視野に入れていたため、今回の資金調達では物流系のVC、CVCに投資してもらうことを念頭に検討を進めました。

早速投資家へのアタックリストを作成し、直近で開催が予定されていたB dash camp、IVSも投資家の方への事業説明の場として参加し、連日投資家の方と面談をしました。その際に投資家の方から共通して言われたのは以下でした。

「事業のトラクションが出ていて興味深い」
「但し、DROBEが想定しているValuationは高すぎる」

今回の資金調達の際のAttack Listの一部。150社リストアップし面談したのは約30社

 Valuationについては、事業成長していることもあり前回のValuationよりも当然高く設定して臨んでいました。これに対し、上述の市場全体の落ち込みが影響し、当社設定よりも30~40%ほど低いValuationを提示する投資家が多かったです。

 資金調達に動く前からある程度想定はしていたものの、実際に動いてみると投資家たちは昨年とは比べ物にならないぐらい非常にシビアに選定をしていると感じました。これは、翻って言えばこれまでが若干甘かったところが正常に戻った、とも言えます。正当に評価してもらえているという安心感はありつつも、想定よりも当社の事業の将来性が低く見積もられてしまっていると感じていました。

 投資家によっては、Valuationの議論の前に事業の将来性の部分で簡易的なDue Diligence(投資先の価値やリスクなどを調査すること)まで至らずにお見送りになることもありました。

IVSの合間にホテルの部屋で投資家面談。コスト抑えるため代表と同部屋に宿泊

 複数の投資家との面談でValuationについて続けて言及され、代表の山敷とも資本政策としてどのValuationでどのぐらいの調達金額にするのか、その場合の事業計画としてどのぐらいの成長が見込めるのかについて議論を続けました。最悪のシナリオも想定し、Valuationを下げて調達金額も抑えることも1つのプランとして持ちつつも、とにかくパーソナルコマースの市場性、将来性、チーム力、エグゼキューション力について根気強く投資家の方々に理解してもらう努力を続けました。

4.結果どうだったのか

結果は、冒頭でお伝えしたとおり、今回10.6億円の資金調達が実現しました。また、当初設定していたValuationでの出資で着地することができました。

 この結果をもたらした要因は、ひとえにパーソナルコマースの市場性、将来性、チーム力、エグゼキューション力を評価してもらえたことに尽きます。これまでDROBEに携わるユーザー、メンバー、アパレルメーカーその他のステークホルダーのみんなで作り上げたDROBEを評価していただいた結果だと考えています。

ピッチ資料より一部抜粋。DROBEの強みであるエグゼキューション力
ピッチ資料より一部抜粋。AIによる商品開発

 加えて、シリーズAで投資していただいたFemtoさんの存在も成功要因の1つでした。前回の資金調達後から継続してコミュニケーションさせていただき、今回の資金調達においてはすぐに投資の意思決定をしていただきました。投資が決定している状態と1件も投資が決まっていない状態では、前者の方がこちら側の心理的な安心感があるのはもちろんのこと、投資家側としても「Femtoとしては評価している事業とチームだ」というお墨付きがある状態に近いので投資確度は確実に上がるものと考えています。前回の資金調達の時もそうでしたが、Femtoさんは漢気あるVCで本当に頼もしい存在です。

また、割と重要だと思う要因をあげるとするならば、「あきらめない」ことだと思います。

これは、前職の同僚で現KIckflow CEOのシゲさんに教えてもらったポール・グレアムの「死なないために」(青木靖 訳)に書かれている内容で、(雑に言うと)スタートアップが死なないためには「あきらめない」ことが大事ということが書かれています。

 スタートアップにいる方なら誰しも経験していると思いますが、辛いこと、悲しい出来事は日々発生しますし、挫けそうになることもたくさんあります。私は比較的ハートが折れやすい方なので何度も挫けそうになります。その度にこのエッセイをみて「あきらめるな、まだ大丈夫」と自分に言い続けてきました。
 
 今回の資金調達において、投資家との面談の進捗や銀行残高をメンバーには包み隠さず伝えていました。(DROBEではValueにOpenを掲げているので労務情報以外は開示する文化があります。)
メンバーの中には、「本当に大丈夫なんだろうか?」「資金調達がうまくいかなかったらどうなるんだろう?」という不安を抱えている可能性もあったため、社内Slackでポール・グレアムのエッセイの一文を引用してシェアしました。

社内Slackで伝えた内容

 この内容にどれだけの方が共感してもらえたかは計測できないですが、少なくとも私が前向きにあきらめずにいる、ということは伝わったんじゃないかと思います。

 このSlackを共有した2日後、尊敬しているN-stockの宮田さんがブログでポール・グレアムの「死なないために」を引用して起業家に向けてエールを送るブログを書かれていて、勝手に共鳴してるんじゃないかと喜んだことを覚えています。

5.やってよかったこと

上述したような要因以外に、具体的にやってよかったこともお伝えできればと思います。

①スタートアップカンファレンスへの参加
 B dash campやIVS、ICCなどのスタートアップカンファレンスは、起業家の方に加え、VC、CVC、事業会社の投資担当者が多数参加されています。事前に参加される方のリストが共有されるので、リストから面談を希望するVC等にTwitterからDMしたり、Facebookから事前に連絡して面談の時間をもらうように動きました。
自社と相性のいい投資家の方を見つけるためにも多くの投資家と会った方がいいと思いますので、こういったカンファレンスを有効に活用するのがおすすめです。

B dash campでDROBEの売り込みをする代表

②投資担当者をつなげてもらう
 投資家の方に直接HP経由で連絡する、という方法も否定はしません。ですが、どの方と話をするのかで投資確度に多少なりとも影響があるのも確かだと感じています。ですので、既に投資を受けている場合は、既存投資家の方に相談して投資家を繋げていただくのが効率的です。

③想定Valuationは柔軟に
 これは賛否あると思いますが、投資家によっては最初からHigh Valuationと判断された場合、事業のポテンシャルやチームの強さを知る前に検討を終えてしまう可能性があります。ですので、最初から想定Valuationに固執せず、柔軟に考えられる姿勢は見せてもいいかと思います。但し、ある程度確度高く投資が集まりそうであればValuationがブレると調整が煩雑になってしまい、柔軟であることがマイナスになってしまう場面もありますのでご留意いただければと思います。

6.最後に

 このnoteを書いている現在も資金調達に動かれている方、これから資金調達に動こうと準備を始めている方はいると思います。昨年のような楽観的な市場はしばらく戻らないと言われていますし、その前提で資本政策を考えて動くのが現時点では正しいと思います。現在の月次のバーンも考慮しつつ早めに動き、投資家の方の動向をキャッチするのが結果的に最善の資金調達になるのではないかと思います。
 また、投資家の方によっては、事業への興味が薄かったり、中々事業の魅力が伝わらなかったりする場合もあると思います。ですが、絶対に「あきらめない」でください。必ず興味を持ってくれる投資家、魅力がズバッと伝わる投資家の方はいます。

偉そうに語ってしまいましたが、まだまだこれから事業を伸ばしていくフェーズではありますので、採用も急募しております。
このnoteを見ていただいたということはDROBEに少し興味が出ている証拠ですので、下記のページをクリックだけしていただき当社の雰囲気を感じていただければと思います!

DROBE採用情報

また、私でよければ資金調達の壁打ちもしますので、お気軽にTwitterでDMいただければと思います!


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