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よくある怪談
横浜と言えば豪華な客船が停まる港町を想像する方も多いと思うが、実は大半が起伏に富んだ地形の山間を切り拓いて造られた住宅街が大半を占める。そんな地域でタクシーの運転手をしている従兄弟の体験した話。
いつもの様に怪談好きなもので久しぶりに会った歳上のひょろりと背の高い従兄弟に「何か怖い話とかないの?」とねだったところ貴重な体験談を話してくれた。
去年の夏、桜木町から女性を乗せた。オフィスカジュアルと言うのか清潔感があるものの堅苦しくない格好の20代後半から30代前半であろう女性。
行先は碁盤の目のように住宅がきっちりと並ぶ住宅街。メーターを倒して車を走らせて暫くすると告げられた街についた。そこから先は女性の言うままに住宅街を抜けていく。
段々と住宅街から離れて山の中に入っていった。こんな所に家があるのか?と疑問に思った所で後ろから「ここでお願いします」と言われた先には二基のお墓がヘッドライトに照らされている。
振り返ったら、女性はいなかった。こんなことになったらよく聞く怪談話ではないか、そんなのは嫌だし、この先にもしかしたら家があるのかもしれない。そう思って利用料金を告げようと後ろをあの振り返って息を呑んだ。
乗せた時と今、ルームライトに照らされている女性の顔が全く違う。車を走らせている間に化粧直しをしたとか落としたとかというレベルではない。骨格から挿げ替えたと言っていい程に全くの別人の顔になっていた。髪型、服装、持ち物は桜木町で乗せた時のそのままで顔だけが全くの別人になっている。
動揺しつつも利用料金を告げてお金を貰うと女性はヘッドライトが照らす二基のお墓の奥へと消えていった。
お盆の時期のことである。
その後、気になったので近くを流している時に女性の教えた道を思い出して行こうとしてみても道は見つからず、全く分からないと言う。