効果があるの反対は...効果がない?ーえ?違う?
新型コロナウイルスの影響で医学にちょっと興味を持った人は多いと勝手に推測していますが、あの薬が効いた効かなかったという話題をする中1番の注目はアビガン(ファビピラビル)です。しかし、中間発表の段階で「アビガンに効果があるとは言えなかった。」と発表されました。これを一部のところでは効果がないとしていたので解説します。
基本的に治療が効いたどうかはすべて医学論文に書かれて発表されます。医学論文を読んでてよく出てくるワードp値というものがあります。これは統計学の用語ですので今回はp値について解説します。それがわかればなぜこのような曖昧な言い回しをしているのかが理解できると思います。
統計学で重要な概念としてまず帰無仮説と対立仮説を紹介します。帰無仮説とは文字通り無に帰る仮説、対立仮説とは帰無仮説が無に帰った時に採用する仮説です。意味が分からないと思ったら次の例を見てください。
「白鳥はすべて黒い」という仮説を立てました(帰無仮説:間違ってて欲しい仮説)、ここで動物園に行って実際の白鳥を見てみると白かった(これがいわゆる治験や実験にあたる部分)すると「白鳥はすべて黒い」という帰無仮説が棄却され「白鳥は白いのもいる」(対立仮説)が採用されるというものです。ここで重要なのは別に白鳥が黒い可能性を否定しているわけではないところです。この帰無仮説と対立仮説は研究の前段階で作っておくものです。そうしないで研究してしまうと何を調べたいかがぐちゃぐちゃになってしまいます。また決して帰無仮説で「白鳥は白い」という仮説を立ててはいけません。(間違ってて欲しい仮説ですから)また帰無仮説が棄却されなかった場合は対立仮説が正しかったのか帰無仮説が正しかったのかが分からないというなんとも間抜けな結果に終わります。(いわゆる〜とはいえなかった)
次に説明する概念がp値と有意水準の話です。p値とは実験してその結果が偶然起こる確率です。そしてその確率は小さければ小さいほど偶然とは言いにくい=有効性があるわけです。p=0.1よりもp=0.01の方が確率的に小さい=統計学的有意に差が出てくるという意味です。しかし医学は科学な訳ですからそれぞれの基準で有効かどうかを判断されたら困るわけです。そこでもうけられる基準が有意水準です。これはよく5%が使われますが、p値が0.05より小さかったら有効ということにしようという意味です。(これだと20回に1回はそういう結果になってしまうのではないかと思うかもしれませんが、論文は一個ではすみません、すなわちその論文があっているか検証する論文が出てきて、本当にたまたま1個目の論文で出てきた結果も2個目以降に訂正されていくわけです。)
翻ってアビガンについて注目していきましょう。基本的に帰無仮説は「アビガンに治療効果がない」対立仮説は「治療効果がある」なわけですが、今回ニュースなどを見ているとデータ数が足りなくて帰無仮説をひっくり返すだけの結果にならなかった。すなわち効果があるとはいえなかった、という形になるわけです。