張替日記#24 明日の生死と当日仕上げ~カリモク「ダイニングチェア」
マガジン「椅子と手のひら~張替日記~」
今日は10月10日。
おかげさまで、実はもう年内の作業スケジュールはいっぱいで、年内のお引渡しの受付は締め切っている。
けれど、昨日来た一本の電話。
直感的に、これは、今年は締め切ったなんて言えないヤツだと思った。
持って行きたいとおっしゃってくださったので、本日お持ち頂いた。
車から降りてこられたのは、やっぱり!おじいちゃんだった。
厳しそうなお顔の方だったけれど、お話しているうちに笑顔になり、
「俺は82歳で一人で暮らしているから、いつ死ぬかわからねぇ」
と言うので、
「え?じゃあ、今日の夕方だったら生きてる??」
(⇧私ってこういうやつですよ)
「おお、その方が助かる!」
ということで、当日仕上げ。
帰り道で死ぬかもしれないと、お代を先払い。
(⇧私じゃなくて、お客さんがおっしゃったのよ)
夕方、
暗くなる前にちゃんと、引き取りに来られて、
「きれいに仕上がったな」
とおっしゃって頂けました。
営業スタイルを色々と考えさせられちゃう、今日の張替仕事。
ダイニングチェア(カリモク)座面のみ張替
クッション材を交換するのだけれど、
この座面は、枠にはまり込んでいるパターンの椅子。
先ずは古い生地とウレタンを剥がして、
座板を枠に置いてみる。
そして、どのくらいのクリアランスがあるかを確認して、
元のウレタンの厚みをみてどんなウレタンを使うか検討。
で、上の写真のようなウレタンになったわけです。
82歳のおじいちゃんが、
「わしが買ったんじゃねぇ、親が買ったんだ。張り替えるより買った方が安いってやつか?」
と電話口でおっしゃっていたのを思い出して、
「たぶん、そういう(年代の)椅子なら、買った方が高いと思いますよ。」
と、年齢も知らずに返答した自分を褒めたい(笑)
本当のところがどうかなんて知らないし、椅子はいくらでも買えるけど、
その手元にある椅子はきっと買えないよ、といつも思う。
同じデザインのものが例えあったとしても、手元にあるのが”あなたの椅子”だから。
きっと40年は下らない椅子だけれど、
とてもしっかりしていて、きれいで、大事に寄り添ってきたんだな(椅子が)、と思った。
今日の仕事は承ることが出来てよかったなと思う。
この年代あるあるの小さなセクハラは笑って許してあげる。
(⇧私のツッコミもなかなかひどいのでwま、二人で爆笑ですけどね。)
いつだってすべての事はタイミングだ。
本気で、どうにもならない日だってあるし(ほとんどがそんな日ばっかりだけど)、、、※基本的には依頼を頂いた順番です。
完成を見せられず亡くなられてしまった方も今までに一人だけいる。
長くお待たせしてしまっている方々には申し訳ない気持ちもあるけれど、
今日は本当に、よかった。
古い椅子を張り替えて展示販売する「座と輪の古椅子展Vol.2」の開催を目指しています!