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金城茂之という男を小説風に描いてみた
金城茂之──レジェンドが教えてくれること
彼と初めて会った瞬間、私は「レジェンド」という言葉の意味を初めて知った気がした。
琉球ゴールデンキングスでの永久欠番となった背番号「6」。数字や記録だけを見れば、金城茂之はまさしく「伝説」と呼ぶにふさわしい。だが、実際に会ってみると、それ以上の何かを感じずにはいられなかった。
彼の声は驚くほど穏やかで、その言葉にはどこか哀愁があった。
「僕も、たくさん失敗してきましたよ。」
その一言には、ただの慰めではない、何か重たい真実が宿っているようだった。試合で何度も敗北し、目指した場所にたどり着けなかった瞬間。それでも、彼は立ち止まらなかった。
「大事なのは、どんなに負けても前に進むこと。それを続ければ、必ず景色は変わります。」
その言葉はまるで、自分自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
ある新入社員が金城の話を聞いたあと、ぽつりとこう言った。
「僕も…仕事でダメなことばかりです。でも、少しだけ、もう一度やってみようと思えました。」
金城はにっこりと笑った。
「それでいいんです。最初は一歩だけでいい。誰だって、何度でもやり直せるんだから。」
その瞬間、私は気づいた。金城茂之が「レジェンド」と呼ばれる理由は、彼がコートで輝き続けたからだけではない。彼の存在そのものが、誰かを前に進ませる力を持っているからだ。
金城茂之という人間に出会うと、人生の見方が少しだけ変わる。たとえ失敗しても、それがすべて終わりではない。彼の言葉を聞くたび、私たちは立ち上がる勇気をもらえる。
「僕なんて、まだまだですよ。」
そう笑いながら、彼はまた誰かの背中を押し続ける。その姿こそ、私たちにとっての真の「レジェンド」なのだ。
彼の歩くその先に、どれだけの人が救われているかは、きっと本人も知らないだろう。