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父だと泣いちゃう大人の絵本:さいごの木

「いっしょなら〜together」で感銘を受けたルーク・アダム・ホーカーの別の作品、「さいごの木〜The Last Tree」を手に取りました。
そして、また紹介したくなってキーボードを叩いています。

「生きている木」のない世界で、父親と二人で暮らす少女オリーブの物語。
冒頭、オリーブが学校に迎えに来た父親に抱きつく絵で心を持っていかれました。父親の表情が見えるアングルで描かれてるのですが、その表情を見るだけで、ジワっと来てしまいました。
辛い仕事を終えて、笑顔の娘が抱きついてきた時の気持ち。
娘を持つ父親なら解ると思います。

オリーブが迷い込む夢と現実の間の様な世界での冒険を中心にストーリーが展開していくのですが、「一緒なら〜together」同様に圧倒的で繊細なペン画の魅力と、短く洗練された言葉によって、1ページ、1ページを何度も繰り返して観たくなります。
ペン画は白黒ですが、「生きた木」のない都市の様子と、迫力の大自然の対比がとても見事です。
上手い言葉が思いつきませんが「白黒なのにとてもカラフル」です。

自然の素晴らしさや大切さ・・というのがテーマにある作品ではありますが、仲睦まじい父娘の姿を最初に見せられてしまっては、父親の気持ちで物語を読み進める事しかできなくなってしまいます。
自分の娘が一人で体験する冒険をこっそりと、心配しながら覗いている様な感覚でページをめくってる自分に気付かされます。

冒険を終えたオリーブが、迎えに来た父親に抱きつくシーンは、冒頭とは逆、オリーブの表情が見えるアングルで描かれており、そこでまた涙腺が緩んでしまいます。

小さいお子さんがいる方は勿論のこと、思春期だったり、すっかり大人の女性になった娘さんがいる方でもきっと私と同じ気持ちになると思います。

かつて少女だった大人の女性にも読んでもらいたい作品です。
オリーブの目線でこの作品を読んで、違う感想を持たれると思います。
繊細な絵と、シンプルな言葉が多くを語りかけてくれ、読む人によって違う感想を持つであろう素晴らしい作品です。

自然の大切さ親子の愛・・という「かけがいのないもの」を描くのはとても難しい事だと思います。説教くさかったりメッセージ性が強過ぎたりすると
感動出来なくなります。

この作品は、画と言葉の魅力以外に何の仕掛けもなく、シンプルな物語で感動を与えてくれます。
大人の絵本の世界にハマりそうです。


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