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Photo by
amayado_rineco
ある日の電車内(ループ編)
(注:以下に出てくる駅名は、便宜上の仮名です。)
いつも通り寒い日の夜、私は1番駅から電車に乗り込んだ。
「本日もご利用いただきありがとうございます。」と柔らかな声色のアナウンスが流れる。今日は穏やかタイプの車掌さんだなーと思いながら背もたれに深く沈んだ。
車掌さんのアナウンスは個人差があり、漫然と乗りながらも結構聴いている。次の駅名や車内の注意事項などの基本情報のみの方もいれば、プラスアルファで話す方もいる。声も、「車掌」ボイスだったり、真面目な雰囲気だったり、にこやかだったり……。
電車が走りだし、ぼんやりと窓の外を眺めていると、次のアナウンスが聞こえてきた。
『次は、2番駅です……2番駅の次は1番駅に停まります。』
……えっ??
1番駅? 戻る? もしかして反対方向に乗っちゃった??
慌てて顔を窓へ近づけ、目に神経を集中させるが、暗くてよく見えない。
いや、でも1番駅から2番駅に向かっているから、とりあえず大丈夫か。
落ち着きを若干取り戻し、今度は訂正アナウンスがないか耳へ神経を集合させたが、特に追加はなかった。
問題がないことがわかってくると、今度は私の空耳説が浮上。しかし疲労で記憶力も低下しており、思い出そうとするよりも早く朧げになっていく車掌さんの一言。深層は闇の中となったのだった。
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