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イギリスの暮らしを覗く
地元にある小さな書店へ久々に足を運んだ。最近は大きめのところばかりだったので、ひょっとしたら1、2年ぶりかもしれない。
懐かしさに浸りながら棚を眺める。するとすぐにビビッとくるものに出会ってしまった。こぢんまりしているからこそ巡り会えるというのもあるし、ここの品揃えやレイアウトも素敵なんだろうな。
今回一目惚れしたのは『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし365日』(江國まゆ)である。
1日1頁、写真とエッセイで日めくりカレンダーのように楽しめる英国の暮らし。紅茶の習慣から地下鉄のユーモアまでエピソード満載。
紹介文にあるように、上半分が写真・下半分が文章という絵日記(写真日記)のようなレイアウトになっており、1ページで1トピック完結なので非常に読みやすい。集中力が枯渇しているときでも手に取れるハードルの低さが魅力的だ。
日記風なのはレイアウトだけではなく、日にちが進んでいくに従って季節も動いていく。しかし内容はただの個人的な日記とは異なり、習慣や文化、さらには現在の政治にも触れていて「今のイギリス」の姿を垣間見ることができる。
そこに英国住みである筆者の視点や思いが混じっているのもリアルがあっていい。紀行文も好きだけど、そこで仕事をしながら暮らしているからこそ見えること・言えることもあるわけで。生活の場としてのイギリスが見れるのがいいなと思う。
ただブレイディみかこさんの『ワイルドサイドをほっつき歩け --ハマータウンのおっさんたち』ほどは生々しくない。言いかたが合っているかはわからないが、「いい感じに夢を見れる」塩梅なのだ。扱っている話題が全く違うから当たり前ではあるのだけど。
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最も文章が頭に入ってくる話題は「食」なのだが、イギリス食が発展を遂げているという証言を得られて嬉しくなった。
偶然にも先日友人から「メシマズ国」と煽られて応戦しそうになったが、やはり〈美味しくない〉というイメージをもたれがち。昔から美味しいところはきちんと美味しい(と聞いている)のだが、近年は食への関心が全体的に高まってきたと同時にレベルも底上げ傾向らしい。
移民政策の緩和による多彩な食文化の流入、日本のNHKでも放送されている『ブリティッシュ ベイクオフ』などの料理番組ブーム、そして幼少期から他ジャンルを食べてきた世代が大人になったことなどにより、美味しいお店が増えたのだそう。
本書では特に「Fortitude Bakehouse」というパン屋さんが気になった。オムレツを挟んだグリルバーガーは文字だけでも食欲をそそるし、写真のモーニング・バンのビジュは反則。ピピーッ。半分に割られた生地の中にはブルーベリーと黄色いカスタードがキラキラ輝いている。こんなの美味しいに決まってるじゃん。
このパン屋さんを検索してみたら、ケバブ風ミートパテを挟んだバーガーなんてのもあってものすごく美味しそうだった。ジューシーで玉ねぎの旨味も強くてスパイスも軽く香るんですって。食べたいね。
上記のサイトが詳しいのだが、実はこちら、本書の筆者が編集長を務めていらっしゃっているのだ。
食情報や編集長コラム、イギリス住みの漫画家さんやダンサーさんの連載など様々なコンテンツがあり、イギリス好き必見のサイトである。
食情報「フード&ドリンク」の1つ「イギリスお菓子百科」を見て『あっ』と思った。これ、随分前に見たことある。
途中まで気づかなかったくらい久々の訪問だったけど、今でも続いていることに安堵と尊敬の念を抱いた。6月1日更新分で201話目。お菓子というテーマでこんなに続くのがすごい。
まずは「あそぶる〜とロンドン」をチェックしていただいて、気に入ったかたはぜひ本書を手にとって見て欲しい。カバーも本文の紙も心地良い質感なので、思わずお持ち帰りしたくなるはずだ。
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