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切られなかった理由
何気なく手を見たら、左手の親指だけ、爪が伸びていた。
なんのことはない、切り忘れたのである。
最後に切ったのはいつだったか。他の爪は手のひら側から見てもまだ見えていないので、そこまで前ではないはず。なのに全然覚えていない。一方、左手の親指だけは1回分逃しているので、ネイルも映えるかも、というくらいには伸びている。
実は、これを知ったのは昨日。しかし、そのときは切らなかった。すぐそこに爪切りがあったら切っていたかもしれないが、「あー、切り忘れてたんだなあ」と思っただけで、すぐに目をそらしたのだった。
しかし、左手の親指が爪切りから免れたのは、実は彼(?)に役割が託されたからなのかもしれない。
例えば、何かを開けるときに引っ掛けるためとか、机にぶつけて音を鳴らすためとか、親指モデルをするためとか……どんどん苦しくなってきているけども、そういうできごとがこれからやってくるから、親指の爪だけは残すべし! という指令を無意識下で受け取っていたのだ。
でもなあ、どうせ残すんだったら人差し指とかのほうが利便性が高そうな気がするけども、どうなんでしょう。シール剥がすときに咄嗟に出すのは人差し指だし、頭をかくときも親指よりは人差し指を使うだろう。なのになぜ、親指……。
そうなると、ネイル説が濃厚なのかもしれない。
私の爪の中で、比較的形がきれいなのは親指である。そして面積も大きい。ついでに言うと、パソコン作業などで目に入りやすいのは親指だ……意識しないとキーボードと画面しか見ないから実際には見えてないのだけど(だから気づくのも遅かったのだけど)。
それなら、期待に応えて塗ってみようか。マメにはできないものの、ネイル自体は好きで、マニキュアポーチもある。前に先輩にもらった偏光ラメもいいし、雑誌で「デパコスの〇〇とそっくり!」と書いているのを見てドラッグストアをめぐったという思い出付きの、アーモンドキャラメル色のプチプラマニキュアもこの時期にぴったりかもしれない。
あ、でも、除光液がほぼほぼ無いんだった。だから塗らなくなったのもあったじゃないか。もう、すーぐ忘れちゃうんだから。
……いや、親指だけなら間に合うか? やっぱり、塗りますかね?
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