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この寝不足の理由は予想外だった



午前四時頃。

数日ぶりに、うちの猫が私の布団の横側に向かって突進を始めた。最近疲れが抜けない状態だった私は、侵入を阻止して睡眠を優先しようと、布団の端を足全体で押さえた。しかし、突進の威力は予想以上で、すぐに隙間ができそうになる。何度かの攻防を経ること数分、私の足が届かない場所を攻めた猫が勝利を収めたのだった。


突破されてしまっては仕方がない。やろうと思えば、布団から、そして部屋から追い出すこともできた。しかし、寒さのあまり来てしまったのなら、ここで拒否の選択をするのは極寒の地へ投げ出すことを意味する。野良猫がいるくらいだから何とかなるのでは、と今思ったが、当時は渋々猫に寝床を分けたのだった。頼むから、私の足をおもちゃにして引っ搔かないでくれよ……静かに、静かに寝てくれよ……。



午前四時四十五分頃。

若干の緊張感があるからか細切れに目覚めつつも、痛みが生じることなく時間は過ぎていった。猫のいる場所の反対側に足を移動させるという営みはもう慣れたもので、何故こんなに猫に気を遣っているのか、私の布団なのに、と思わなくもないが、何かあったら嫌なので粛々と足を移動させるのである。


ある時、左側にいた猫がスッと右側に移動して再び横になった。はいはい、次はそっちね、と、私は足を空いた左側へ移すべく左足から引っ越しを始めた。

すると、ヒヤッとした感触が足の裏を走った。


そしてそれは足の裏全体へと広がり、「濡れていませんか?」と脳へ激しく伝えてきたのである。えっ、嘘、猫?? そんなことある?? と脳内で軽くパニックになるも、先ほどの感触自体が本当なのか、まだ疑念もあった。寝ぼけて間違えたのかもしれないし……。本当だったらまた足を湿らせることになるので正直嫌だが、確定した時点で既にお風呂場行きは約束されている。気のせいであれ……と願いながら、ゆっくりと足をシーツに滑らせていった。



午前五時十分前。

私はお風呂場で、左足を洗っていた。






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三谷乃亜
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