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「遠き慮りなければ必ず近き憂いあり」



なんなの

と奴の目線に合わせ、膝を抱える。

買ってあげたばかりじゃない。なのにすぐ別のを欲しがるの?
それなら、いっぺんに言ってよ。買いに行くのは私なのよ?

奴は、うんともすんとも言わない。
ただすり減ったマゼンタ色の下で「!」と訴えるのみ……


********


プリンターの話である。


事の発端は、もう数か月以上前になろうか。
黒色のインクが無くなりそうだと合図を出してきた。印刷とインクの関係性は詳しくわからないが、どんなものを印刷するにせよ黒は大活躍した功労者といっても良いだろう。というか切れると一番マズい気がしたので、いそいそと新しいインクを買いに行き、すぐに補充した。


するとどうだろう。補充して初めての印刷で、今度はシアンが無いと主張しだしたのである。


えっ、さっき入れたじゃないすか。いや入れたのは黒なのだが、こちらとしては黒さえ換えれば解決するとばかり思っていたのである。
しかし、普段はモノクロ印刷しかしない。それなら急がなくても耐えてくれるだろう……としばらくそのままにしていた。さらに私はそこまで頻繁にプリンターを使わないため、「まだ何とかなるよね?」とご機嫌を伺いつつ、気づいたら1か月程経過していた。


しかし、頑張ってくれていたシアンもそろそろ限界そうな雰囲気。ゲージに色はほとんどなく、文字だけがその存在をわからせてくれていた。


そして遂に私は新しいシアン色のインクを購入した。
長い間、期待に応えてくれてありがとう、最大限の力を見せてくれてありがとう……と感謝の気持ちを込めていたかは定かではないが、今となってはそんな気持ちにもなるくらい頑張ってくれたシアン色のインクを交換したのである。


********


これでやっとみんなが安心して印刷に専念できる、めでたしめでたし……

マゼンタ:「!」

えっ!



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三谷乃亜
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