黒い本屋さん



見つけるとなんとなく入りたくなるお店の第1位は、本屋さんである。昔は特にそうで、旅行が決まったときは前もって2店舗くらい行く予定を立てることもあった。あれこれ本を買いたい! というよりも、本がたくさんある雰囲気、お店によって若干異なる空気感を味わいたいのかもしれない。



書店によってカラーは異なる。置いている本のバリエーションだったり、レイアウトだったり、内装だったり……。本が完全にオブジェになっている手法は好きではないので除外するが、他ではあまり見ない特徴があると、何年経っても忘れないものだ。



その中で、10年以上前に1度だけ行き、もう行けない、というか存在していないかもしれない(ホラーじゃないよ)本屋さんがある。


それは、どこかに行く途中にあった、確か一戸建てのお店。場所もわからないし、名前もわからない。ほぼ詰んでいる状況だが、私はこの本屋さんが忘れられないのだ。


微々たる手がかり、かつ琴線に触れたポイントは、黒を基調としたスタイリッシュな内装である。

床も壁も黒(確か)。白っぽいライトが天井から注がれていて、ピカピカの床に反射している。私が記憶しているのはそのくらい。敷地面積は大きかった気もするが、なにせ覚えている場所がレジ前付近なもんだから、より信憑性が低いだろう。

しかし、そこで買ってもらったものは覚えている。題名は覚えていない、というか認知したことが無い気すらするが、ワクワクさんの工作本で、ページを切り取ってすぐに作れるタイプのものだ。ちなみに、表紙は実写ではなく、イラストで、青バッグにワクワクさんとゴロリが描かれていた。


親もどこだったかは判然とせず、しかし訪れたという記憶はあるらしい。頭の中にだけ存在する黒い本屋さん……もはやホラーな気さえしてきた。


白を基調としていたり、温もりを感じる内装が多い中、黒を主題とした店内づくりはあれ以降、ほとんど見たことがない。居心地の良さを優先させるときっとそうなるのだろうし、他にも様々な理由で黒はメジャーではないのだろう。

しかし、あの黒い本屋さんにいつかまた出会えたら、と十年以上思い続けている。私の中では魅力的な場所だったから。






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三谷乃亜
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