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takatsuki_illust
いつかのホワイトデーイブ
当時の上司が、ふいに
「今日って14?」
と聞いてきた。最初「重要」と聞こえて何が? となったのだが、どうやら日付を聞いているらしい。
「13です」
と答えると、彼は「あ、やべ、間違えた」と言って、数秒前に紙に書いたらしい「13」を消しているようだった。
数十分後。
壁側にある机の上に、クッキーが10枚ほど入ったプチギフトがいくつか置いてあるのを発見した。誰が持ってきたのか、何用なのかも不明である。お土産……? 誰かへのお餞別……? しかし、私が聞くほどの事ではない。近いうちに、持ってきた人がしかるべき人に渡すのだろう。
私は発見したことも無かったことにして、業務に戻った。
数時間後。
私が業務に勤しんでいると、上司が近づいてきた。何か頼まれるのかしらと思っていたら
「これ、ホワイトデー」
と先ほど目撃したプチギフトをサッと置いて通り過ぎて行った。
予想外の出来事に、お礼よりも驚きの「えっ」の方が大きく出たくらいだった。今までのホワイトデーで一番サプライズかもしれない。だって、バレンタインデーにあげていないんだもの。
驚き冷めやらぬうちに、少し向こうの方から「はい、ホワイトデー」「あらぁ、すいません」という声が聞こえてきた。あの小さな包みたちは、どうやら職場の人に配るためのものだったらしい。意外と律儀な面もあるのね……(めっちゃ失礼)。
彼がそのまま流れるようにその場を去った後、先ほど受け取っていた女性の嬉しさと困惑が混じった声が聞こえてきた。
「あげてないのに……」
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