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初めてキウイを丸かじりした日
いや、丸かじりというと語弊があるかもしれない。半分にカットしたのを素手で口に運んだ話です。
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メインスーパーで、キウイが安くなっていた。キウイ好きな私は、『明日の朝食に食べよう』とポリ袋に入れ、カゴの中へそっと置いたのである。
ちなみに、私はどちらかというと硬めの食感を好む。それに柔らかいとすぐに食べねばという焦りが生じるので、なるべく硬いものを購入したいところ。
有象無象の中から選ぶ際は、傷みの有無とサイズ感の確認の他に、硬さチェックも大事になってくる。柿だと触らずともわかるが、キウイはよっぽど熟していない限り気付けない。しかし手当り次第に触るのもご法度だ。なので、目視で厳選したものを、影響が出ない程度の絶妙な強さでサッと掴ませてもらっている。
今回は午前中だったのもあり、一発で硬いキウイを引き当てた。それはもう、びくともしないくらいだった。
そう、本当にびくともしなかったのである。
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翌日、意気揚々とキウイを取り出し、半分に切った。ザリザリッという音と包丁への抵抗具合的に『思ったよりも硬いな』とは思った。しかし前日から食べる気満々だったので、持ち越すという選択肢はない。スプーンを手にし、チーズと食パンと共にテーブルへ運んだ。
これが、ほんっとーに、硬かった。
先が丸いスプーンだったのもまずかったのかもしれない。グレープフルーツ用の、先が尖ってギザギザしたタイプならまだ光は見えていたはず。それにしても、こんなにもスプーンが戦力外な状況ってなかなかないぞ。少し格闘してみたが、欠片がポロッと1個落ちただけだった。
諦めて一口サイズにカットし直すことも考えた。しかしそれはすぐにかき消された。だってもう座っちゃったんだもん。周りには誰もいないし、上品さを保つ必要もないじゃない……一人になると、たちまち横着婦人が顔を出す。
その後、ちびちび崩しながら食べようか……と思いながらスプーンをキウイに打ち付けること数十秒、遂にスプーンを小皿に置いた。そして、意を決してそのまま口に運んだ。
ゴリゴリ、とおよそキウイとは思えない音をたてながら、やっと口の中に入ってきたそれは、甘みは少ないながらもキウイの味はする。しかし硬い。切ったときからわかっていたが、硬いのを選びすぎた。
丸かじりする決断をしたものの、さすがに皮は口に入れたくない。なので最初は皮をめくるなり割るなりしながら、実だけを捉えようと悪戦苦闘していた。しかしだんだん、どうでもよくなってきてしまったのである。
そこからブドウ方式に変わるまでは早かった。断面から食べはするが、皮も口に入ることを許したのだ。グリーンキウイながら、思ったよりチクチクしない。これは嬉しい誤算だった。
しかし、この野生に戻った感はなんだろう。背徳感をもってキウイを食べる日が来るとは思わなかった。
明日には、もう少し柔らかくなっているかしら……ダメだったときどうやって食べるかは、そのとき横着婦人が目覚めているかどうかにかかっているだろう。
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