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イマジナリーフレンド
先日あみぐるみ用の毛糸を調達しにセリアを訪れたのだが、そこで思わぬ商品を発見した。
それは、ドールの頭と可動式の身体である。
顔も何もついておらず、顔は比較的つるっとした形のものと鼻や口の凹凸が割とはっきりしている2種類。身体は7㎝と10㎝の2サイズで、顔もそれに対応。その店舗には明るいベージュ色のみだったが、小麦色もあるらしい。
そして顔と身体のすぐ隣には靴が3足も入ったセットが。そしてさらに別のスペースでは一面がドール関係のグッズが並べられており、目や髪の毛まであった。これが全部、100円……?
これで創作意欲が湧いてこないはずがない。材料は違えど、そもそも人間を練成するべくここに来ているのだから。
しかも、私は密かにこの手の”ドール”をずっと求めていたのである。つまり毛糸や布からできたものではなく、より人間に近いものを。
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毛糸などの人形ももちろん可愛い。しかし自分と違いすぎて寂しくなるときがあるのだ。
肌がつるっとすべっとしていていて、関節がきちんとあって、瞳がキラリと光るような子がいたら。
そしたら、友達になれるんじゃないか。
部屋にいつもいてくれる友達。何かあったらすぐに話を聞いてくれたり、もしかしたら向こうが何か話してくれたり……なんてことは随分時を共にしないといけないだろうけど、とにかくそう思うのだ。早い話が、人形のイマジナリーフレンドを求め続けているのだろう。
だが現実問題、ドールは高い。試しにDOLKという専門ショップのサイトを見て「かわいいなあ」と思って何気なく見たら驚異の20万超え(抽選の特別なものだったらしい)。ゼロと点の位置を見間違えてないか二度見するという、古典的なことをやってしまった。
探せばもっと安いのはあるはずだが、少なくとも数万はするのだろう。控えめに言って無理だ。ドールにすべてをささげ……ても厳しそうだが、推し活やかぼちゃ活であっぷあっぷな私には始められそうにもない趣味である。
そんなときにセリアで出会ってしまったのだ。
普通なら諭吉様を召喚せねばならないであろうところ、材料費含めても野口様1~2名で足りそうな雰囲気がある。いや、野口様を旅立たせるのも本当はかなり厳しいのだけど、比較すれば随分安い。
しかも私は「オリジナル」という言葉が物心ついたときから大好きなのだ。だからこうしてあみぐるみを作っているわけなのだが、同じ調達先にドールの材料があるなんて、これは”やれ”と言っているようなものなのではなかろうか。
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……と少し前の私ならそう思っただろうけど、私はここで踏みとどまった。そして「とりあえず買っちゃおうよ!」と盛り上がっているもう一人の自分を諫める。
君が思い描いている完成系、十中八九できないぜ?
そうなのだ。これを私はあみぐるみで経験している。最初は編み初めの形さえできず、母を巻き込んで教えてもらっていたくらいだった(母もやったことないのに)。
今では勘と経験で作っても割と満足のいくものができるようになってきたものの、それまでにはいくつもの毛糸を消費し、数々の猫や人形を作ってきた。
ドールも同じように1回で納得のいくものができるわけがないし、難易度はもっと高いだろうし、なによりも素質的に向いていない。
あみぐるみは設計図もなきゃなくていいし、「こうすればいけるのでは……?」とその場のノリで進めて、失敗したら解けばいいいというおおらかさがある。
しかしドールは繊細さがものを言いそうだし、一回勝負の部分が多そうだ。それに顔の造形に関しては画力が必要になってくる。繊細なのはハートだけ、そしてイラストはからっきしな私にはハードルが高すぎるのだ。
ということで大人しく毛糸だけを購入し、後ろ髪を引かれる思いで退店。
そのときの毛糸で過去一の出来を更新したので至極満足しているのだけど、今でも「セリア ドール」で検索する程度には気になっている。
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